22日の衆院本会議で民進党提出及び自民党・公明党提出の「衆議院選挙区画定審議会設置法及び公職選挙法の一部を改正する法律案」が議題になり、民進党提出案について会派を代表して今井雅人衆院議員が提案理由を説明した。

 今井議員はまず、衆院議長の下に設置された「衆議院選挙制度に関する調査会」の答申で「格差是正は喫緊の最重要課題である」とされたことについて、これは「5年余りの間に3度も出された最高裁判所の『違憲状態』判決を深刻に受け止め、先送りすることなく、『違憲状態』の解消を早急に行わなければならないことを意味する」と力を込めた。

 衆院議員の定数削減について答申が「多くの政党の選挙公約であり、主権者たる国民との約束である」と指摘した点に関連して今井議員は、2012年11月14日の党首討論で当時の民主党の野田佳彦総理と、自民党の安倍晋三総裁との間で交わされた「遅くとも2013年の通常国会で定数削減を行う」との約束について「テレビ中継がなされ、国民注視の下で交わされたこの『約束』の政治的な重さは、計り知れないものがある」との考えを示した。

 そのうえで、「この約束に照らせば、答申で示された定数の『10人削減』は、われわれ民進党としては満足のいくものではないが、調査会設置の際に『各会派は、調査会の答申を尊重するものとする。』と議決したことを踏まえ、今後のさらなる定数削減を視野に入れた『一歩前進』と評価するとともに、喫緊の最重要課題である格差是正を行うため、この法律案を提出した」と説明した。

今井議員

 続いて衆議院議員選挙区画定審議会設置法の一部改正について「衆院小選挙区選出議員の選挙区間の人口格差を是正するため、都道府県別定数配分の方式として、『アダムズ方式』を導入するとともに、同方式による都道府県別定数配分は、制度の安定性を勘案し、10年に1度の大規模国勢調査でのみ行うこと」「また、大規模国勢調査の中間年に実施される簡易国勢調査に基づく改定案の作成に当たっては、各都道府県の選挙区の数は変更せず、選挙区間の格差が2倍以上となったときに境界の変更で対応すること」と説明した。

 なお、「アダムズ方式」導入の時期については「調査会答申をできる限り忠実に法案化するという観点から、2010年の大規模国勢調査から実施すること」「具体的には、2010年の国勢調査の結果に基づいて、『アダムズ方式』により都道府県別定数の配分を行った上で、2015年の国勢調査の結果に基づいて、都道府県内の小選挙区の改定案の作成及び勧告を行うもの」と説明した。

 続いて、公職選挙法の一部改正について説明した。「衆議院議員の定数を465人とし、小選挙区選出議員を6人、比例代表選出議員を4人、合計して10人削減すること」「削減後の小選挙区の区割りは、別に法律で定めること」と述べた。「比例ブロックの定数配分について、『アダムズ方式』により行うことを明記しており、小選挙区と同様、2010年の国勢調査の結果に基づいて『アダムズ方式』によりブロック別の定数を配分する」と説明した。

 さらに見直し条項について「本法の施行後においても、全国民を代表する国会議員を選出するための望ましい選挙制度の在り方については、不断の見直しが行われるものとし、この見直しにおいては、特に人口が急激に減少している地域の民意を適切に反映させることに留意するとともに、さらなる国会議員の定数削減を図るよう努めるもの」と述べた。

笠議員が質問

 この民進党提出の「衆議院選挙区画定審議会設置法及び公職選挙法の一部を改正する法律案」に加えて、自民党・公明党提出の「衆議院選挙区画定審議会設置法及び公職選挙法の一部を改正する法律案」の2案に対して、民進党・無所属クラブを代表し笠浩史衆院議員が質問に立った。

 笠議員はまず、選挙制度で投票価値の平等を確保することの意義について「議会制民主主義の下で、国家の意思形成の正当性を基礎づける中心的な要素をなすもの」と指摘。その投票価値の平等に対して、最高裁判所が過去3回の衆院選挙について「違憲状態」と厳しい判決を下したことを受け、与野党の要請を踏まえ衆院議長が衆院選挙制度に関する調査会に諮問したという経緯への配慮を強調した。

 そのうえで、1票の格差是正のために調査会答申が現行の1人別枠方式の廃止とアダムズ方式の導入を大きな柱としていることを取り上げた。「民進党案では、2010年国勢調査で『アダムズ方式』を導入するとしているが、『6年前の調査では古すぎるので、2015年簡易国勢調査をもとにアダムズ方式を導入すべきではないか』との指摘もある」と述べ、民進党提案者に説明を求めた。関連して「民進党案では、都道府県の定数は『7増13減』となる。これに対し、『影響を受ける選挙区が多すぎるので、激変緩和措置が必要ではないか』との声も聞こえてくる」と指摘し、この点についてもただした。

落合議員が答弁

 提案者を代表して民進党の落合貴之議員は「もし自民党・公明党案のように先送りをせず、速やかに『アダムズ方式』導入に賛同いただけるならば、2015年簡易国政調査による『アダムズ方式』導入への修正も検討したい」との意欲を示した。激変緩和措置については「2012年11月14日の党首討論で、遅くとも2013年の通常国会で定数削減を行うと約束してからすでに3年半が経過。民進党案に基づいて制度改正しても区割りが確定し実施できるまでにはさらに1年以上必要となる。『アダムズ方式』導入は喫緊の課題であることは明らかであり、民進党案による改正を行っても拙速とは言えず、国民・有権者の理解は得られる」と答弁した。

 続いて笠議員は、自民党の谷垣幹事長が与党案の小選挙区「0増6減」について「アダムズ方式そのものではない」と述べたことを問題視し「そうだとすれば、1人別枠方式は撤廃されないこととなる」と批判。「最高裁からは既に衆院選挙が3回連続して違憲状態と指摘され、1人別枠方式自体の撤廃を求められている」と指摘し、1人別枠方式を維持したまま、議席数をわずかに上下させるという与党案による選挙実施は、「選挙の正当性、ひいては国会の正当性を揺るがすことになりかねない」との強い懸念を示し、自民党・公明党提案者の見解をただした。これに対し自民党の細田博之議員は、選挙制度の是正は国会に広範な裁量があると最高裁判決で示されたことを引き合いに出し、2020年まで「アダムズ方式」を導入しないことを正当化した。

 笠議員は、議員定数の削減についても質問した。「今回の改正案では、両案ともに小選挙区6人、比例区4人の計10人の定数削減となっている。民進党を結成した旧民主党や旧維新の党は、そもそももっと大幅な定数削減を掲げていたのではないか。今回の答申に基づく法改正は、当時の主張に反するものとなってしまうのではないか」と述べ、民進党提案者に説明を求めた。それに対して落合議員は、格差是正が最高裁も厳しく指摘する喫緊の課題であることから、調査会答申を忠実に法案化し提出するに至ったが、法案の付則第4条に第2項で本法成立後にさらなる国会議員の定数削減に向けた議論に取り組みたい旨を示していると答弁した。

逢坂議員も答弁

 民進党提出の法案に対してではなく、民主党政権時代の選挙制度改革の取り組みなどについて他党から質問を受け、逢坂誠二議員が答弁に立った。「民主党政権時代に各党に呼びかけて、定数削減を含む選挙制度改革に取り組んだが、合意に至らなかった。この事態を打開するために2012年11月14日の党首討論で、当時の野田総理が自民党の安倍総裁が大幅な定数削減を行うとの約束を交わした。総理と野党第1党の党首との約束をほごにするようなことがあれば、国民の政治に対する不信は決定的なものとなる。そうした意味で今般のようなことになった」と答弁した。

PDF「笠浩史議員公選法等改正案質問全文」笠浩史議員公選法等改正案質問全文