民進党は25日、待機児童緊急対策本部の第10回目の会合を開き、党がまとめた「待機児童の解消に向けた緊急提言」について厚生労働省や内閣府、保護者らと意見を交わした。

 山尾志桜里政務調査会長は冒頭、「保育士の給与を平均して1人当たり月額5万円引き上げることを中心とするこの提言を、政権・与党の皆さんにも賛成していただきたい。政府の緊急対策のうち一時保育を待機児童向けに使うことや、人員配置基準で手厚くやっている自治体を国基準に引き下げなど質を落として子どもを入れようという部分については撤回していただき、私たちの対策を一緒に前に進めていただきたい。待機児童の問題は、選挙の争点にしなくても与野党が一緒に解決していくことができると思っている。できる限り質を維持することと量の拡大は両立せざるを得ない要望であることを厚労省、内閣府の皆さんにも共有していただきたい」とあいさつした。

 民進党が取りまとめた緊急提言に対し厚生労働省の担当者は、(1)隠された待機児童を含めた実態を把握し、市町村ごとに情報公開することについては、「自治体とも相談しながら検討を進めていきたい」(2)保育士等の処遇改善については、「具体的なことについては1億総活躍プランの取りまとめに向けて検討を進めていきたい」(3)長時間労働の抑制で子どもが親と過ごす時間を確保することについては、「私どもも重要だと考えている。長時間労働の是正を含めてしっかり推進していきたい」(4)安易な人員配置、免責基準の緩和はせず、子どもの安全、保育の質を確保することについては、「運用最低基準を維持しながらサービスを増やしていきたい」「自治体が上乗せしている部分については、国の基準まで一律に下げることを求めるものではない」(5)縦割り行政をなくし、子どものための保育所開設の促進、運営者の負担軽減を図ることのうち、子どもの安全、保育の質の確保に影響のない要件の緩和については「関係部署と連携しながら対策が効果的に実施できるよう環境整備に努めたい」、保育所に活用できる土地・建物の掘り起こしや保育所に対して近隣住民を含めた社会の理解を前進させるための施策については「保育所の開設者や自治体が住民と早い段階から情報開示をして丁寧に相談していく環境整備に努めたい」――などとそれぞれ見解を述べた。

蓮舫代表代行

参加者に言葉をかける蓮舫代表代行

 子どもを持つ母親らは、「妊娠中から『保活』を続けていたが週4日の勤務であるためフルタイムとはみなされずにポイントは低く、保育所に入れられず、保育所が見つからないために7年間続けてきた仕事を辞めざるを得なくなった。母親になることも大事だが、仕事を持つこと、ワークライフバランスを保つことは大事だ」「少子化は日本の最重要課題であるにもかかわらず、覚悟を決めないと母親になれないという状況だ。日本の将来を憂えるのであれば人、子育て・教育にお金を回すべきではないか。2015年には399件の保育事故が起き、14人が亡くなっている。あってはいけない事故、防げた事故であり、保育士が定着せずに5年間で半分が離職しているというなか、解決策は保育士の給与アップしかない」「現状では育児休業を取っていると保育園に入れなくなる。『入れたいのなら0歳から入れなさい』と言われ、競うように子どもを早く手放すという状況だ。積極的に育休の取得を推進してほしい」「待機児童の基準を明確にし、実態が見えるようにしてほしい。お母さんだけに任せず社会全体で安心して子育てをできる環境をつくってほしい。お母さんたちのグチではなく社会問題として扱ってほしい」などと訴えた。

司会の山井国対委員長代理

司会の山井国対委員長代理

 一方で、長年こうした状況が放置されてきた理由として、「20代から40代が選挙に行き投票してこなかったツケが回ってきた」という指摘、現状に対し声を上げるだけでなく、解決に向けて自治体と協調していくこと、子育て世代の意識を変える必要があるという意見もあった。

 母親らの悲痛な叫びに、厚労省の担当者は「働くことと子育ての両立ができない状況だというのは忸怩(じくじ)たる思いだ。保育所に入れないというのは申し訳なく、質の確保をしながらサービスの量を増やすことが課題だ。子育てしたいと思える環境を整えられるよう努力していきたい」「子育て支援の投資が必要なのは指摘の通り。社会保障のなかでも子どもの分野に優先的にお金に配分されるようにと変化はしてきているが実感に至ってないのが現状だ。力不足であり努力したい」「育休は、1歳児になった時に入れるという保証がないから早く切り上げてしまうわけで、そこのサービスをしっかり増やしていくことが必要だと考えている」「保育士の処遇改善とともに人の配置も増やしていくことが必要であり、そのために必要な財源確保に向けてできるかぎりやっていきたい」とコメント。

 蓮舫代表代行は、育休を取得することでなぜ点数が低くなるのかを厚労省として回答を出すように要請。山尾政調会長は、「少子化が叫ばれるなかで日本が母親になるのが難しい国ではいけない。保育士の給与5万円引き上げは、与党と野党が協力すれば夏か秋には実現できる。声を上げてくださったお母さんたちにそういう姿をしっかり見せることが政治の役割だと思う。早く解決するように一緒に頑張りたい」と力を込めた。