水野賢一議員は2日、2015年12月に採択されたパリ協定を踏まえ提出された「地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案」について参院本会議で民進党・新緑風会を代表して菅官房長官、丸川環境大臣に質問した。

 同法案は、地球温暖化対策に関する普及啓発の強化、国際協力を通じた地球温暖化対策の推進、地域における地球温暖化対策の推進のために必要な措置を講じることなどを定めるもの。水野議員は、パリ協定が条約であることから憲法73条やいわゆる大平3原則によって国会承認が必要であると指摘し、「温暖化防止のための京都議定書の場合は、政府が国会承認を求めたのは京都での採択から5年後のことであったが、パリ協定に関して政府はいつ国会承認を求めるのか」と官房長官に答弁を求めた。官房長官は「パリ協定の締結に向けては国会の承認を求める可能性も含めて現在政府内で検討している」としか答弁しなかった。

 「2030年に温室効果ガスを26%削減」と政府が方針を示していることに関して水野議員は、かつて京都議定書で1990年比で6%の削減義務に対して政府が「8.7%削減した」と宣伝したが、実際には森林吸収源などを含めたもので、本当の削減量が削減ではなく1.4%の増加だったことを引き合いに出し、「今回26%削減と言った時に、本当の排出削減分はどれだけを想定しているのか」と環境大臣にただした。環境大臣は「森林吸収源対策などの吸収源活動により2.6%、国内の排出削減により23.4%の削減を目標としている」との見解を示した。

 また、「産業分野からの二酸化炭素排出は増えていないが、民生部門からの排出が急増しているから、その分野への対策が急務だ」と政府がよく主張することについて、「民生部門には一般家庭だけではなくオフィスビルなど企業を含んでいる。企業8割、家庭2割という排出比率は昔から変わっていないのではないか。いまなお排出量では圧倒的に多いのが大企業である」と指摘し、民生部門での排出削減に向けた決意を環境大臣に求めた。環境大臣は、「企業公共部門関連で8割、家計関連で2割という比率は近年変わっていない」と認めたが、企業に対して抜本的な排出削減を求める施策を示すことはなかった。

 今回の改正案がこれまで事実上取り組んできたことを明文化したものが中心であり、実質的な内容に乏しいと指摘し、「法改正だけでは本当に26%削減につながるのかも不透明だ。先に述べたパリ協定を批准する際には、新たな国内担保法が必要になるのか」と政府に見解を求めた。環境大臣は「必要となる措置について政府部内で検討する」としか答弁しなかった。

 パリ協定では二酸化炭素に比べて数十倍から1万倍も強力な温室効果ガスであるフロンガスも規制対象になっていると述べ、「温暖化問題がこれだけ叫ばれ、多くの人に排出削減を呼び掛けている中で、極めて強力な温室効果ガスをわざわざ作って、売って、儲けるということが果たして倫理的にも許されるのか」とフロンの規制のあり方について環境大臣の見解をただした。環境大臣は「フロン類の使用製品について、代替冷媒に転換するための規制など、その製造、使用、回収、破壊のライフサイクル全般にわたる取り組みを進めている」と答弁、規制強化への道筋を示すことはなかった。

 最後に水野議員は、地球温暖化問題について「病気と同じで、早め早めの対応こそ肝心であり、対策をこまねいていればいるほど手遅れになり、対策費用もかさむことになる。それだけに政府にも将来を見据えたしっかりとした取り組みを強く求める」と表明し質問を終えた。