参院本会議で18日、政府提出の「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(再エネ特措法)改正案」が審議入りした。同法案は、再生可能エネルギーの最大限導入と国民負担の抑制の両立を図るため、新認定制度の創設や買い取り価格の決定方法の見直しといった固定価格買い取り制度の見直し等を行うもの。

 質問に立った柳澤光美議員は、(1)民主党政権下での方針に対する見解(2)太陽光発電(3)あらゆる再生可能エネルギーの導入(4)地域優先・小規模優先の考えに基づいた買い取り価格の設定(5)2030年までの再生可能エネルギー比率の見直し――等について政府の見解をただした。

 柳澤議員は、2011年3月に起きた東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から半年後に発足した民主党・野田政権時代に経済産業大臣政務官、副大臣と福島原子力災害現地対策本部長を兼務し、1年1カ月復興の先頭に立つなかで、「今まで信じてきた価値観、社会のあり方自体を問い直さなければいけない。需要に応じて大規模発電所から送電システムに慣れた、不自然な生活を止めなければいかない」「特に、核分裂により大きなエネルギーを得る一方で、自然界にはない放射性物質を作り出す原発は最も不自然なこと。国のエネルギー政策は抜本的に見直さなければならない」と実感したと振り返り、そうした経過のなかで打ち出された「2030年代に原発稼働ゼロを可能とするようあらゆる政策資源を投入する」という民主党政権下での方針に対する見解をあらためて尋ねた。

再エネ特措法改正案の質問を行う柳澤光美議員

再エネ特措法改正案の質問を行う柳澤光美議員

 そのうえで、固定価格買い取り制度を導入したことで太陽光発電設備は4.5倍に拡大する一方、認定を受けながら発電事業を開始しない未稼働問題や地域住民に迷惑をかけ、トラブルを起こしている案件が多いと指摘。加えて、最大の問題は再生可能エネルギーの導入が太陽光発電に偏り、太陽光以外の電源の導入がほとんど進んでいないことだとして、地熱発電や水力発電、木質バイオマス発電、中小水力発電、風力発電の導入拡大に向けた支援が必要だと主張。

 また、自身の地元長野県では「1村1エネルギー」の方針を打ち出していることに言及し、「私は、再生可能エネルギーは持続可能な地域を構築するための取り組みだと考える。そのためには、地域の資源を活用し、地域が主導して行い、その利益を地域に還元することが重要だ。地域優先・小規模優先の考えを大切にし、それに基づいた買取価格を設定すべきだ」と述べた。

 林経済産業大臣は、「原発依存度は可能な限り低減させていく」とする一方、「安定供給の確保、電力コストの引き下げ、CO2排出抑制の3点を実現させようとすると原発依存度をゼロにすることはできない」と述べ、「2030年代に原発稼働ゼロ」に対しては否定的な考えをあらためて表明。固定価格買い取り制度の課題である未稼働問題や地域でのトラブルに対しては、「事業の実施可能性を確認したうえで認定を行う新たな認定制度を創設するとともに、既存の認定案件についてもあらためて新制度での認定取得を求める」「トラブル防止のため太陽光発電の安全性の確保等に関する必要な情報の収集や調査に努める」などと答弁。再生可能エネルギーのバランスの取れた導入の拡大に向けても取り組んでいく考えを示した。

 柳澤議員は「今回の改正は、問題点ばかりが強調され、コスト効率や効率的な取引など効率優先の姿勢ばかりが目立つ。直すべきところは直し、その上で、再生可能エネルギーのさらなる導入を図ることが大切」と強調。2030年度の再生可能エネルギー比率22~24%という日本の目標が欧州各国に比べてあまりにも低すぎると指摘した。

 これに対し林経産大臣は「自然条件や送配電ネットワークの状況など、わが国の実情に合わせた検討が必要であり、一概に諸外国と比較するのは適当ではない」「きわめて野心的なものであり決して低い水準ではない」と強弁した。