枝野幸男幹事長は8日、大分市内を訪れ、参院選の党公認候補予定者である足立信也参院議員の街頭演説会に参加した。

足立信也参院議員

足立信也参院議員

 足立議員は、「今回の参院選挙を日本の分かれ道ととらえている」と語り、その理由を次の通り説明した。「一つは、憲法問題。私たちは権力を法によって抑制し、束縛し、縛る立憲主義というものを長年かかって築いて確立した。もう一つ大事なのは人間一人ひとりが持っている基本的人権。長年のたたかいによって勝ち得た権利だ。そのことが今、もしこの夏の参院選で与党勢力が3分の2になることを許してしまえば、立憲主義そのものを否定する国家主義に代わるかもしれない。自民党の憲法草案は現行憲法97条に『基本的人権が永久の権利である』と書かれているのを削除しようとしている。われわれが勝ちえた権利を覆すのか守るのかの分かれ道になっている」と自公などの改憲勢力が3分の2の議席を参院で占めることを阻止することがいかに大事かを強く訴えた。

 「もう一つは、経済。この3年半アベノミクスという幻想に振り回された。大企業がもうかればいずれは中小企業も潤うという幻想を抱かされた3年半だったと思う。世界は今、日本に言っている。『格差の拡大が経済成長を妨げている、機会の不平等が格差を広げている』『抑えられた税収をどうするか日本が考えなければ、世界経済が緩やかに回復するなかで日本だけが取り残されてしまう』――それがOECDの勧告だ。いままでとは違う方向性で考え直すのか、それが分かれ道だ」。足立議員は具体的に、大企業や高額所得者に有利な税制を是正して、税の不公平をなくせば税収が上がること、そうすることによって、例えば子どもの学費のために親が消費を削って貯金しなければならないようなことをなくしていこうと訴えた。最後に足立議員は、「安倍政権の一人勝ちは危ない。いまは論点を隠しているが、自民党は海外で武力を行使できるようにすることを目指している」と安倍政権の暴走を憂いながら、「暴走を止める夏にしなければいけない」と力強く決意を語り演説を締めくくった。

 枝野幹事長は、アベノミクスが株を持っている人など一部の人にだけ恩恵を与えていることを批判し、地域経済の立て直しや子育て支援の重要性を訴えた。そして、旧民主党政権時代の話を例に挙げ「足立さんが中心になって救急医療体制をそろえた。10年前は救急車がたらいまわしで患者が亡くなることが相次いでいた。医療の底上げを図るという足立さんが現場の声をふまえてがんばって、患者がたらいまわしにされて亡くなるというケースは相当なくなってきた。やればやるほどニュースではなくなる、そういうことをやってきた」とひとつひとつは目立たないが物事を前に進めていくことの大事さを訴えた。そして、「安倍政権の憲法改悪への白紙委任を渡さないために3分の1以上の議席を確保しなければいけない」「安倍総理は社会の大事なものを壊していく、決して保守ではない」などと強く訴え演説を締めくくった。

■枝野幹事長街頭演説後記者会見

 枝野幹事長は街頭演説終了後に記者団の質問に答えた。

 問 公示2週間前に大分県を選んだ理由は?
 答 やはりここは、取らなければならない選挙区。十分取れる。ただ、大変な激戦区。応援している皆さんにも、さらに力をいただきたいとお願いに来た。

 問 街頭演説の前に連合を訪問したが、連合にはどういうお願いをしたのか。
 答 すでに大変な力添えをいただいているが、大変な激戦だし、勝たなければいけないので力添えをお願いした。さらに頑張ると力強い話をいただいた。

 問 ここの選挙区はなぜ大事か。
 答 現職であるから。現職であるということはそれなりの足場がある。応援してもらうための構造がある、さらに候補の質もいい。全国の1人区が勝負所だが、その中でも勝てる構造のあるところだと思っている。

 問 過去2回(足立議員は)当選しているが、最近は自民党の支持率が高い。その辺の危機感は感じられるか。
 答 危機感がなければ来ない。勝たなければいけない選挙区だが、決して楽観できない、大変厳しい戦い。1カ月で相手を追い越していかなければならない。

 問 安倍総理が「安保法制の廃止は日米同盟を断ち切る」と言ったが、この受け止めを。
 答 安保法制のない中で日米同盟は70年間続いてきた。われわれは日米同盟を深化させる方針を明確にしている。そうしたなかで日米地位協定もそうだが、日本はアメリカに自己主張するのは許されないという属国意識があまりにも強すぎる。私も官房長官や経済産業大臣としてアメリカと交渉したが、欧米の皆さんにはわれわれの主張を明確にする、それから信頼関係が生まれてくる。そんなことで壊れていく日米同盟ではないと思っている。

 問 この参院選の議席獲得目標は
 答 全員当選を目指すということ以外を言ったら無責任だと思っている。

 問 獲得議席3分の1は最低のラインか?
 答 とにかくこの選挙のひとつの争点が自公プラスその補完勢力が憲法改正の白紙委任状をもつのかどうか。それがひとつのポイントであるのでその客観状況の説明として申し上げた。

記者の質問に答える枝野幹事長

記者の質問に答える枝野幹事長