参院で29日午後、小川敏夫参院議員会長が民進党・新緑風会を代表して安倍総理の所信表明に対する本会議での代表質問に立ち、(1)賃金低下(2)消費低迷(3)物価下落(4)憲法改正に関する消極的な説明(5)米大統領選の一方当事者との面談(6)大分県警の無断撮影事件(7)高江ヘリパッド強行(8)稲田防衛相の適格性――などについて安倍総理の見解をただした。

 冒頭、安倍総理が本年7月の参院選挙で「気をつけよう甘い言葉と民進党」と繰り返し発言した問題について「大変に不真面目な発言であり、また具体性が何もない誹謗の類いの話であって、わが国を代表する一国の総理大臣の発言として誠に恥ずかしい限りの低俗なもの」と痛烈に批判し、総理の資質に疑問を呈した。

 そのうえで、安倍総理が約束した賃金上昇、年2%の物価上昇、年8兆円の貿易黒字などの目標のいずれもが達成されていないと指摘し、「国民をだましているのは総理ではないか」と追及した。

【賃金低下】

 勤労者の賃金の動向について厚生労働省の毎月勤労統計を取り上げた小川会長は、民主党政権時代の2010年を100とすると、実質賃金は2013年は98.3、2014年は95.5、2015年は94.6と「賃金は上がるどころか大幅に下がっている」と問題視した。

 総務省家計調査によっても、2人以上の所帯のうち勤労者所帯の所帯主の収入は、2015年8月以降本年7月までの12カ月間、本年4月を除いて前年より減少。勤労者所帯全体でも2015年10~12月期以降同16年4~6月期まで3四半期続けて減少し、直近の本年4~6月期は前年比で2.5%も減少していると指摘した。

 こうした調査結果に基づいて小川会長は、「アベノミクス以降、なぜ勤労者の賃金が下がっているのか、その原因がどこにあるのか」と安倍総理の見解をただした。総理は「調査での収入は勤労者世帯の1世帯あたりの状況を明らかにするものであり、全ての雇用者1人あたりの賃金の状況を表すものではない」と述べ、質問に対し正面から答弁しなかった。

 これに対して小川会長は、勤労者の賃金が下落している主因を「派遣労働の制限緩和などによる雇用の非正規化」だと指摘。「勤労者の賃金を回復するために派遣労働の制限を以前のように強化して雇用の正規化を推進することが必要だ」と雇用政策の転換を求めた。

【消費低迷】

 日本経済が停滞している一番の原因について、小川会長は「消費が伸びないから」だと指摘し、総務省の家計調査をもとに根拠を示した。2000年から2015年までの15年で、2人以上の所帯の消費支出は、31万7328円から28万7373円に減少。勤労者所帯の消費支出は、34万1896円から31万5379円に減少。その間の勤労者所帯の実収入は、56万2754円から52万5669円に減少――などの家計収入減少の実情を説明した。

 このように勤労者の収入が減少し、その結果消費が低迷するという悪循環に対して小川会長は、消費を伸ばすことで景気の活力を取り戻すことが重要だと指摘。そのために「勤労者の賃金が低下する政策を止めて、雇用と賃金が安定するために雇用の正規化を進める必要があり、これが景気回復を実現する真の景気対策だ」と安倍総理に提案した。

【物価下落】

 安倍総理が強調してきた「2%の率の安定的な物価上昇を2年程度で実現する」という公約について小川会長は、「消費税引き上げの影響を除き、全く実現できていない。実現するめども立っていない。それどころか、本年4月から7月の間は、消費者物価は対前年比で下落している。これでは、総理が約束した2%の率の安定的物価上昇政策は失敗し破綻したと言うしかない」と断じた。

 さらに今般、日本銀行が2%の率の安定的物価上昇対策を維持すると言いながら、その時期を明示せずに長期目標にすり替えるという一時しのぎの手段を講じたり、「異次元緩和」と言って大がかりな金融緩和政策を講じても実現できなかった明確な失敗について説明せずにごまかそうとしたりするのは、「かつて敗北の結果撤退したことを、国民に対して敗北の事実を隠蔽し転進と説明した旧日本軍大本営と同じやり方ではないか」と強く批判した。

 そのうえで、安倍総理に対して「2%の率の安定的物価上昇がなぜ約束した2年程度の間に実現できなかったのか」「原油の下落以外にどのような要因が妨げたのか」「この政策が誤りではなかったのか」「失敗を認めずに今後もこの政策を続けるのか。そうであるなら、具体的にどういう方策でいつまでに実現するのか」などについて説明を求めた。

 これに対して総理は、直近の物価について「ご指摘の通り、本年4月から7月の間、前年比マイナスとなっている」と認めた。ところが「アベノミクス3本の矢によって20年間続いたデフレからの脱却にチャレンジし、もはやデフレではない状況をつくり出すことができ、デフレ脱却まであと一息のところまで来ている」などと経済の実情を踏まえない強弁に終始した。

PDF「参院本会議小川敏夫議員質問全文」参院本会議小川敏夫議員質問全文

安倍総理の認識をただす小川参院会長

安倍総理の認識をただす小川参院会長