佐々木隆博議員は18日午前、衆院TPP特別委員会の集中審議で質疑に立ち、北海道の台風被害、SBS米問題、国益の考え方――などについて質問した。

 北海道の台風被害については、「農地の被害状況が深刻で、農地に泥がたまり、表土が根こそぎ持っていかれたところもある。面積も広いことから、復旧には10年ぐらいかかるところもあると言われている。今年は共済で救われるが、来年以降の収入はなくなる。どう対策していくのか」と質問した。山本農水大臣は、「北海道は日本有数の農地で食料供給基地だ。国家的立場から被害に対処しなければならない。復旧事業の優先的雇用や低額融資、ハウスや農業機械再建への助成や種子購入経費助成など、出来るだけ早い営農再開につなげたい」と、支援策を上げながら答弁した。

 佐々木議員は、「いろいろと事業を行うことに感謝を申し上げるが、復旧事業に従事するだけでは生活費を全部は賄えない。融資はあくまで融資であり、1年ぐらいで回復すればいいが、それ以外は離農しなければならなくなる。農地の回復について検討して欲しい」と要請した。

 SBS米については、「SBS米導入理由には、外国から主食米を導入した時の市場動向調査もあった。SBS米は常に市場動向を見ることになっている。今SBS米価格偽装が問題になっているが、SBS米の市場動向が分からない方がおかしい話だ。そうでなければマークアップは設定できない。価格に影響がないというが、ほとんどは中食や外食に流通している。そしてそちらは量だけ公表して価格は公表しない。そんな調査は不誠実だ。生産者も消費者も誰も納得しない」と問いただした。山本大臣は、「卸業者からの販売先は多岐にわたるので把握は困難。SBS米も国産米同様に卸業者から先の取引価格の把握は困難。したがって調査のやり直しはできない。SBS米の価格水準が国産米の需給価格に影響を与えている事実は確認できていない」など、従来の答弁に終始した。

 佐々木議員は、「米トレサビリティーという仕組みなどを活用することも考えるべきだ。再調査の結果が出ないと審議が深まらない」と指摘した。

 「何を持って国益というのか」との質問に安倍総理は、「TPPによって、普遍的価値を共有する国々と新たなルールを作り上げる。力強い経済成長の実現。自由貿易を守る意思を示す。TPP協定は文化を壊すものではない」などと答えた。

 佐々木議員は、「TPPの何が問題かと言うと、(交渉の中身が)どんどんルール分野に入ってきていることだ。これはお互いの国の文化に入っていくことで、だから(締結することが)困難になってきている。TPPもある種のブロック化であり、そうした意味からも世界の経済貿易は危険な状態に入りつつある。本来経済連携は2国間でやるべきだ。それを(多国間で)一定のルールの中でやっていく仕組みを無理に通そうとするところにTPPの無理がある。今後も議論していく」と強く指摘した。

 さらに佐々木議員は、「現在格差が広がっている。日米など先進国は外需依存度が低い。世界経済を取り込むことに走っていって、内側の経済は置き去りになるのではないか。TPPが地域の活力になるというのであれば、所得が低いところにこそ注目し、付加価値を上げることにTPPが結びつかなければ意味がない」と指摘した。安倍総理は、「地方にTPPの恩恵が結びつくように全力を上げていきたい」と答えるにとどまった。

 最後に佐々木議員は、「食料・農業・農村基本法の元はドイツの農業法で、家族農業、環境を大切にするというものだ。今のTPPの一連の進め方はそれと真逆の、農業を大きくしていけばいいというものだ。その発想では農村から人がいなくなることを意味する。家族農業、地域をもっと大切にして欲しい」と述べて質問を終えた。

PDF「衆院TPP特別委員会佐々木隆博議員配布資料」衆院TPP特別委員会佐々木隆博議員配布資料

「家族農業、地域をもっと大切にして欲しい」と訴える佐々木議員

「家族農業、地域をもっと大切にして欲しい」と訴える佐々木議員