衆院本会議で18日午後、政府提出の消費税引き上げ延期関連の地方税・地方交付税法改正案(社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための地方税法及び地方交付税法の一部を改正する法律等の一部を改正する法律案)の趣旨説明と質疑が行われ、民進党・無所属クラブの黄川田徹議員が質問に立った。

 黄川田議員は冒頭、消費税の引き上げ再延期の原因について質問。2年前、消費税の再延期はないと安倍総理は断言したにも関わらず、再延期を決めたことについて、「世界経済のリスクを理由とした『新しい判断』と居直っているが、再延期の原因は、アベノミクスが行き詰まり、実質賃金の低下、消費の低迷、格差の拡大など、国民生活が厳しさを増したことにあることは明らか」と指摘し、石原経済財政担当大臣の認識を質問した。石原大臣は「中国などの新興国経済の減速など、世界経済がさまざまなリスクに直面しているというG7共同認識のもと、あらゆる政策を総動員し、経済再生・デフレ脱却に向けた取り組みに全力を期すべきであることから2年半延期した」などと、従来から語る言い訳とも言える答弁を繰り返した。

 消費税率の引き上げ時の低所得者対策についても黄川田議員は取り上げ、「本法案により導入が延期されるとはいえ、政府が導入を進める軽減税率制度は約1兆円の財源を必要とし、社会保障の安定と充実のための地方財源の確保が大きな課題となることは明らか。政府は『安定的で恒久的な財源を確保する』と改正税制大綱に明記し、国税収入は1年かけて財源を探すとしているが、住民サービスに直結する地方財政には、特に安定財源確保の要請が強く働く」と指摘し、麻生財務大臣に財源の明示を迫った。麻生大臣は「今般の法案において軽減税率制度を導入する前年度の平成30年度末を期限として検討を進めることとしている。与党とも相談し、歳入歳出の両面にわたって検討することになるが、国・地方あわせて必要な安定財源をしっかり確保していきたいと考えている」などと述べるにとどまり、財源は明示できなかった。

 地方自治と地域活性化についても質問。安倍政権で「地方創生」の名の下、「まち・ひと・しごと総合戦略」を策定し、東京一極集中を是正し、活力ある日本社会の維持を目指すとしている地方創生総合戦略だが、「国が定めた総合戦略を勘案して、地方創生総合戦略を地方に作らせる国主導のやり方は、国の目標を基に当てはめる中央集権的な手法となっている。このような手法では、地方発の自主的な取り組みが発揮されない。中央省庁が握っている権限と財源を大胆に移すという地方分権とは、似て非なる取り組みだ」と断じた。現在も東京一極集中の流れは止まらず、政府が一極集中是正策として鳴り物入りで打ち出した中央省庁の地方移転も42道府県が69機関を誘致したにも関わらず、文化庁・総務省・消費者庁で移転が具体化する方向になっただけである点にもふれ、「安倍政権の地方創生は、アベノミクス同様に掛け声倒れに終わると言わざるを得ない」との見方を示した。

 法案については(1)消費税・地方消費税率引き上げ再延期により失われる財源(2)税源の偏在是正措置(3)車体課税の見直しに係る措置――等について質問した。

 第一の「消費税・地方消費税率引き上げ再延期により失われる財源」ついては、引き上げによる増収分は、子ども・子育て支援や医療・介護の充実に向けた施策の実施等の社会保障の拡充や安定化などに充てるとされていたが、引き上げ再延期により、これらの施策は財源を失うことになるとの見方を示し、政府が税率の引き上げを再延期しても、保育の受け皿50万人分の確保など、可能な限りの社会保障の充実を実施するとしているが、その費用については、国の責任において安定財源の確保を行うよう高市大臣に求めた。

 消費税・地方消費税率の引き上げ分は、地方交付税原資分も含めると、その約3割が地方の社会保障財源である点も踏まえて黄川田議員は、「地方が必要な住民サービスを十分かつ安定的に提供し、地方財政の運営に支障をきたさないよう、地方交付税原資分も含め必要な財政措置を確実に講ずるべき」との認識を示し、仮にも財源が不足し、地方に負担を転嫁するような制度改正を行うことがあってはならないと高市総務大臣に注文をつけた。

 黄川田議員は結びに、東日本大震災の発災から5年と7カ月余りが経過したが、被災地は復旧・復興に困難を伴うなか、岩手にあっては、8月末の台風10号の豪雨被害が追撃した現状を語るとともに、「集中復興期間の5年間では完遂せず、道半ばの自治体はまだまだある。特に福島は次の5年間が正念場」だと語った。一方、地震発生から半年余りとなる熊本県でも容易でない実態があると述べるとともに、「復興期間の長さが、被災者の人生を大きく変えていく姿を、私は目の前で見てきた」と黄川田議員は語り、「『復興の時間の流れ』に翻弄される被災者をつくらないためにも、災害の風化を止めなければならない」と問題提起した。

 また、政府は10月11日に地球温暖化対策の新たな国際枠組みである「パリ協定」の批准案を閣議決定し国会に提出したが、国際社会の動きからは大きく出遅れた現状を問題視。「気候変動による大災害の発生は、明らかになっている。政治は、仮想の現実から目を覚ます必要がある」と語った。

 「人口減少。それに伴う税と社会保障の一体改革、財政再建、そして、大規模災害対策、地球温暖化対策などには、正面からしっかりと向き合わなければならない」と安倍内閣に強く求め、民進党は蓮舫新代表のもと、野党第1党として、今後とも地方の目線で安倍政権を厳しくチェックするとともに、建設的な提案を重ね、自民党に代わり政権を担い得る政党を目指す旨を宣言し、質問を締めくくった。

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