参院本会議で19日、パリ協定の承認案が審議入りした。

 同協定は、京都議定書に代わる2020年以降の地球温暖化対策の新たな国際枠組みとなるもので、産業革命前からの世界の平均気温の上昇を2度未満に抑え、1.5度未満に向かって努力するとともに、今世紀後半に温室ガスの排出を実質ゼロにする目標等を明記している。

 民進党・新緑風会を代表して質問に立った福山哲郎議員は、(1)新潟県知事選挙の結果への受け止め(2)パリ協定の批准をCOP22の締約国会議に間に合わせるつもりはなかったのか、国会提出が遅くなった理由(3)9月の米中同時承認について、アメリカから事前に連絡があったのか、インドやEUの動向を見誤った理由(4)いわゆる2度目標、1.5度努力目標を国際社会と共有し、その達成に向けてあらゆる政策を総動員する決意(5)長期戦略の策定、環境省・経済産業省それぞれで進めている検討の今後の取りまとめのプロセスとプロセスへの市民参加(6)COP政府代表団への市民代表の参加(7)2030年度中期目標の引き上げと目標の継続的上積みの法制整備(8)石炭火力比率の低減(9)2030年度中期目標での再生可能エネルギーの電源構成のなかで、風力と太陽光の導入目標量が業界団体が示している量を大幅に下回っている理由(10)再生可能エネルギーの導入目標の見直し、具体的な推進策、CO2回収・貯留(CCS)実用化の見通し(11)2度目標、脱炭素社会への変化をめぐるビジネス等の世界の潮流についての受け止め――の11項目について政府の見解をただした。

 福山議員は「まさに今日、10月19日がCOP22で開催される第1回のパリ協定締約国会合に批准国として参加できる期限だ」と切り出すと、日本では閣議決定、国会提出が遅れたため当然間に合わず、少なくとも協定上、6項目に及ぶ手続やルールを定めることになっている同会合ではオブザーバーでの参加になることが確実であることから、「このなかには、わが国が長年主張してきた2国間クレジットを含む市場メカニズムに関するものも含まれており、今後のルールメイクの主導権をわが国は得られない」と問題視。「日本政府はCOP22の第1回会合に間に合わせるつもりはなかったのか。安倍政権は4月にパリ協定の署名をしてから、これまでいったい何をしていたのか」と迫った。

政府をただす福山議員

 また、オバマ政権がパリ協定承認をレガシーと位置づけていたこと、2014年、15年と続けて米中は首脳会談で気候変動にコミットしたこと、本年9月G20サミットでそろってパリ協定承認を発表したことなど、米国や中国の動きを察知していなかったのかと質問。インドやEUも10月初めに批准し、11月4日にパリ協定が発効することとなり、日本は完全に出遅れたとして、インドやEUの動向を見誤った理由をあわせて尋ねた。

 これに対し岸田外務大臣は、「本年中の発効との目標を念頭に置き臨時国会での提出を目指してきた」と主張。各国の動向と発効の見通しに関しては、「本年9月の米中によるパリ協定の締結について、政府としてはそれに先立ち米中による気候変動に対する積極的な姿勢が示されてきたことを含め不断に情報を収集してきたところだが、外交上の具体的なやりとりについてはお答えを差し控える」「インド、EU等各国の動向についても注視をしてきたが、当初全加盟国が一括して締結をすることにより来年以降の締結を目指していたEUが、一部加盟国のみ先行して締結した等により当初の見通しよりも早期の発効に至ったことは事実」などと答え、政府が国際的な批准過程を見誤ったことが浮き彫りになった。

 福山議員は、安倍総理が、12カ国中いまだに承認ゼロ、米国大統領選挙の2人の候補者はいずれも反対のTPP協定の承認を今国会で強く求め、所信表明でも言及する一方、18日の時点で81カ国、世界の排出量合計の59%超の批准の上で発効に至るパリ協定は所信でも触れず、不誠実かつ消極的な対応に終始しているとして、「まさにアベコベであり、外交失政と言わざるを得ない。政府の責任を棚に上げ、今頃国会に提出して、審議もそこそこに承認を、などと都合のいいことを言い、野党が抵抗しているかのような報道まで出ていることは誠に遺憾であり、政府に猛省を求める」と政府の対応を批判した。

 福山議員は、民主党政権発足直後の2009年の国連気候変動サミットで、当時の鳩山総理が行った演説が世界の首脳からスタンディングオベーションで迎えられたことを振り返り、「当時、米国は京都議定書から離脱、中国もインドも削減目標を持たなかった状況のなか、すべての主要国への参加のメッセージはその年のコペンハーゲンでのCOP15での徹夜の交渉、翌年のカンクーン合意につながった。そして、その枠組みが現在のパリ協定に結実していった」と強調。「この国連演説草稿の作成にかかわり、COP15では政府代表として交渉に加わった者の一人として、現在の政府の対応には深い失望を持たざるをえない」と断じた。

 最後に、「民進党は、2030年に1990年比温室効果ガス30%削減、2030年再生可能エネルギー30%以上導入、そして2030年代原発再稼働ゼロを目指している。日本を世界一の環境技術立国として地球環境問題の先頭に立つ国にしたいと考えている。2050年の将来に新たなライフスタイルを構築した社会になっているか、気候変動による異常気象にさらされる世界になっているか、今のわれわれの世代に政治にかかっている」と表明。「IPCC(気候変動に関する政府間パネル)を始めとする科学は温暖化に対してほぼ結論を出した、あとは政治の決断だけだ」という国際会議の度に言われるという言葉を紹介し、気候変動問題に対する与野党議員の尽力を呼びかけ質問を終えた。