川合孝典議員は15日、参院TPP特別委員会の集中審議で質問に立ち、(1)金融・サービス(2)ISDS条項(3)医療分野(4)労働分野――などについて、安倍総理をはじめ関係閣僚の認識をただした。

 川合議員は冒頭、今後の国会運営にも大きな影響を及ぼす可能性があるとして、安倍総理に衆院での強行採決をめぐる認識をただした。安倍総理は「どのような議論、採決を行うかは国会が決めること。衆院TPP特委での採決は野党にも出席いただいて採決されたもの」と答えるにとどまった。川合議員は、「議場がこれだけ混乱したことは強行採決と一般の皆さんはそう理解すると思う」と指摘した。

 川合議員は、自らのスタンスを、「民主党政権時代に、グローバル化が進む中で日本もどう生き残りを図るかについて議論せざるを得ない状況におかれていると認識していた。TPPがこういう形であったにしろ、前に進もうとすること自体に頭ごなしに反対ありきで議論するつもりはない」との考えを示した上で、「残念なのは、TPP問題について民主党政権が対応しようとしていた時に、自民党がTPPに断固反対と主張し、TPPへの対策を講じる上での時間的ロスをしてしまったことだ」と述べ、今後はこのことを真摯(しんし)に受けとめた上で議論に臨むよう求めた。

 川合議員は金融・サービスについて、「かんぽ生命や共済も金融・サービスに含まれると理解するのが自然だ。米国から民間保険会社と同様の扱いを求められてくることが懸念されている。今後かんぽ生命や共済はどうなるのか」と質問。石原経済担当大臣は、「かんぽ生命は保険業法の規制監督下にある。かんぽ生命が米国からクレームを付けられることのない金融庁の監督下に入っている。共済は、他の締約国の金融機関等に差別的な措置は行っておらず、他国からとやかく言われるものではない」と答えた。川合議員は、「米国はTPPで得をする分野に金融・サービスを挙げている。日本の800兆円以上のストックを流動化させる議論が米国主導でなされることを想定しておかなければならない。これまで議論されてこなかったことに違和感がある」と指摘した。

参院TPP特別委員会で質疑に立つ川合議員

 ISDS条項を取り上げた川合議員は、「安倍総理は、日本が海外の企業から訴えられることは想定していないと答弁している。何を持っての発言か」と質問した。安倍総理は、「外国企業だから排除するという制度は設けていないので、訴えられてもわが国が敗訴することは想定されていない」と答弁した。川合議員は、「ISDS条項がダメだとは言っていない。公平かつ公平な待遇に対する義務を負わなければならないと書いてあるが、問題は、何が義務違反かの定義が無いことだ。恣意的な認定がされないようにする蓋ができていない。今回のTPPは実質は日米FTAだ。この枠組みで米国を100%抑えられる状況にない」と述べ、もっと危機感を持つべきだと主張した。

 国民皆保険制度は維持できるのか、混合診療の解禁はどうなるかとの質問には、安倍総理から、「わが国の制度は合理的で、国民の健康を守るために出来ていることから、TPPで変更が求められるものではない」と、根拠の薄い答弁がされた。

 川合議員は、「協定では、当面守られるということに異論はないが、日米2国間の交換文書(サイドレター)では、薬価の決定にあたり、海外の利害関係者が政府の審議会に出席することや意見書を出すことができると定められている。さらにサイドレターには、関連する将来の保険制度について、協議する用意があることを確認したと書かれている」と追及し、今後交渉の余地があることについて確認を求めた。塩崎厚労大臣は、「薬価決定についてはTPPに書いていない。サイドレターでは協議をする旨を確認しているが、米国政府の意見をそのまま受け入れるものではない。わが国の制度を変更する必要はなく、将来米国からの圧力で薬価が高騰したり制度変更するとの懸念にはあたらない」と答えた。

 川合議員は、「米国は、保険・医療分野は、米国のGDPを押し上げる領域と掲げている。米国にとって魅力的なマーケットは日本だ。今回の枠組みの内容だけで守られるかは心もとない。今のうちに手を打っていかなければ、皆保険制度も含め日本の医療インフラが崩壊してしまうこともあり得る」と指摘した。

 労働者の権利について質問した川合議員は、「TPPにはILO加盟国としての義務を負うとしてあるが、ILO条約105号(強制労働に関する規定)、同111号(雇用及び職業に関する差別の撤廃規定)を日本は批准していない。早急に批准すべきだ」と訴えた。塩崎厚労大臣は、「国内法制との整合性という観点から、なお検討すべき点があると考える」と答えるにとどまった。川合議員は、「想像した通りの答えだ。ILO加盟187カ国中173カ国が批准しているが、米国も批准していない。安倍総理は日頃から、日本がリーダーシップを発揮すると言っているが、この問題についても前向きに議論するべきだ」と、問題提起した。