政府は11月30日、「農林水産業・地域の活力創造プラン」を改定した。これは全農や農協等の協同組合の経営に過剰に介入し、弱体化を狙うものである。こうした安倍政権の農協改革に対して、民進党が考える農業・農協改革について小山展弘農政改革研究会座長に聞いた。

政府プランは協同組合経営への過剰介入

 政府が当該プランを改定したほか、規制改革推進会議は「農協改革に関する意見」、自民党は「農業競争力強化プログラム」を作成した。これらはいずれも、全農・農協の組織体制や人事のあり方にまで口を出し、数値目標や計画の策定を半ば強制的に求めるなど、国際的に認知されている協同組合原則を軽視し、100%民間出資の組織である協同組合の経営に過剰に介入するものであり、到底容認できない。

 今回の議論の経過を見ていると、政府・与党は、規制改革推進会議に第三者組織の意見として「高めのボール」を投げさせる一方で、自民党農林系議員は反対する姿勢を見せつつ調整役を演じたが、これらはお決まりの「茶番劇」のようにも見受けられる。政府は、JAグループの策定した計画・数値目標について今後も「フォローアップを行う」としているが、これを口実に、さらなる経営への介入が懸念される。政府との議論から明らかになったのが、組合員勘定や信用事業もフォローアップの対象になること、本来取り組むべき農家の所得向上がおざなりにされていることだ。

 2015年の農協法制度の変更、自民党農林部会や規制改革推進会議等で検討されてきた一連の「農業・農協改革」の延長線上にあるのは、相互扶助と共助の仕組みである協同組合の弱体化である。政府・与党は、協同組合を産業政策の道具、職能組合としてのみ位置づけ、地域インフラとして果たしている農協の役割を全く理解していない。農協から信用事業や共済事業を分離し、員外利用規制や准組合員規制を強化して、地域住民の利用を制限する方向へと議論しているのだ。

 政府与党が押し進める改革は、農協の問題としてだけではなく、「協同組合への介入」という問題も包含している。このような介入を容認したら、今後、生協や労金、全労済なども株式会社化等を迫られかねない。政権交代によって、この流れを根本から変えなければ、日本の農業と地方はさらに衰退し、協同組合はいずれ存在できなくなる。

「地域のための農協」へ農協法改正を目指す

 人口減少が懸念される地域、とりわけ中山間地域などにおいては、協同組合の職能化・専門化ではなく、地域性・総合性の維持と各協同組合間の協同・連携こそ求められている。各協同組合が個別に事業を営んでは解決できない問題も、協同組合が協同・連携すれば解決できる可能性もある。10月29日に開催された「賀川豊彦シンポジウム」では連合の逢見直人事務局長と全中の比嘉政浩専務、日本生協連の新井ちとせ副会長が、協同組合間協同・連携について議論する等その萌芽は見えている。私は日本社会の中で協同組合を位置づける協同組合基本法を制定すべきだと考える。

 民進党は、自主・自立の協同組合であるJAグループによる、農家の所得向上を目的とした「自己改革」を後押しすることを確認している。また「地域社会への関与」を含む国際協同組合同盟(ICA)の協同組合原則を尊重し、農協を農家の所得向上と経営安定を図る機能のみならず、医療、介護、福祉、金融等地域の生活を支える組織として位置付け、「地域のための農協」を法律に明記すること等の農協法改正案の成立を目指している。

(民進プレス改題18号 2016年12月16日号より)

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