民進党税制改革の基本構想
-ふつうの人から豊かになるための税制改革―
日本型ベーシックインカム(基礎的所得保障)導入に向けて


民進党税制調査会


Ⅰ はじめに

  • 日本は少子高齢化、人口減少、巨額の財政赤字に直面し、供給面でも需要面でも大きな制約を抱えている。
  • また、平均年収の低下(*1)、非正規雇用比率の上昇(*2)等、中間層の落ち込みが明らかであり、それが消費低迷の一因となっている。
  • アベノミクスは一時的なカンフル剤としては意味があったかもしれないが、日本が抱える構造的な制約に何ら対応するものではなかった。その証拠として、日本経済の潜在成長率は低下を続け、0%台(*3)まで落ち込んでいる。
  • 日本は多くの国民、とりわけ子どもや若者が将来に確かな希望を持つことができない状況にある。
  • こうした状況に対応し、諸制度を大胆に変革していかなければならないが、安倍政権は目先の数字ばかりに固執し、改革を先送りし続けている。
  • 税制は社会保障制度などと同様に社会を創る手段である。民進党は、構造的制約を解消し、明るい日本社会を創るため、政権を担った際の大胆な税制改革の基本構想をここに示すものである。

(*1)平均年収:平成7年457万円(平均年齢42.3歳)⇒平成27年420万円(平均年齢45.6歳)(国税庁「民間給与実態統計調査」)

(*2)非正規雇用比率:1994年22.8%⇒2003年34.6%⇒2014年40.5%(厚生労働省「就業形態の多様化に関する総合実態調査」)

(*3)潜在成長率:1985年4.5%⇒1995年1.4%⇒2015年0.3%(内閣府資料)


Ⅱ 税制改革の方向性

1.所得税

(1)基本的方向性―日本型ベーシックインカム(基礎的所得保障)構想

  • 民進党は、所得再分配機能回復、ライフスタイルに中立で公平な税制の構築、労働力人口増加を促す成長戦略などの観点などから、人的控除の整理を含め、まずは「所得控除から税額控除へ」転換し、さらには「税額控除から給付付き税額控除へ」と税体系を大きく変えていく。私たちはこれを日本型ベーシックインカム(基礎的所得保障)構想と呼ぶ。
  • 所得税については、累次の改正により、税率の引き下げ・その適用範囲の拡大が行われるとともに、各種控除の累次にわたる拡充によって課税最低限の引き上げが行われ、所得再分配機能が低下してきた。
  • 将来を担う若者の多くが頑張りようもない、頑張っても報われないと感じる社会には、安定も活力も望めない。中間層の復活に向け、中低所得者の底上げを行う必要がある。
  • また、共働き世帯、ひとり親家庭の増加など世帯の態様の変化を踏まえ、片働き世帯を前提とした税体系を見直す必要がある。

(2)具体的な改革指針

1)給付付き税額控除

  • 税額控除を基本として、控除額が所得税額を上回る場合には、控除しきれない額を給付する「給付付き税額控除」について、まずは消費税額控除型と就労税額控除型の導入を進める。
  • 「給付付き税額控除」は、マイナンバーを利用して所得に応じて控除の厚みを変え、中低所得者を重視した制度設計とする。
  • 給付部分については、社会保険料の支払いとして相殺することを検討する。

ⅰ)消費税額控除

  • 民進党が作成した給付付き税額控除導入法案(資料1)に基づき、生活必需品にかかる消費税の一部を、中低所得者に払い戻す給付付き税額控除を実施する。
資料1 逆進性対策についての民進党案と政府案の比較

資料1 逆進性対策についての民進党案と政府案の比較

ⅱ)就労税額控除

  • 働く中低所得者層の底支えを行うため、就労税額控除を導入し、負担軽減を行う。
  • 就労のインセンティブを促進するため、所得の増加に合わせて税額控除が逓増する部分を設ける。
  • 就労税額控除導入の際には、給与所得控除を必要経費の概算控除と就労税額控除に再編成する。

2)基礎控除

  • 所得再分配機能回復の観点から、増額した上で税額控除化する。

3)配偶者控除

  • 配偶者控除は廃止し、縮小・税額控除化して扶養控除と統合した世帯控除を新設する。

4)扶養控除

  • 扶養控除は廃止し、縮小・税額控除化して配偶者控除と統合した世帯控除を新設する。

5)給与所得控除

  • サラリーマンの確定申告の機会を拡大し、公平性を担保していく観点などから、特定支出控除の拡大を進める。
  • 就労税額控除の導入にあわせ再編成を行う。

6)公的年金等控除

  • 年金カット法など自公政権が強行に年金削減を進めていることも踏まえ、存置する。

7)金融所得課税

  • 申告納税者の所得税負担率を見ると、1億円超から急激に負担率が下がっている(資料2)。これは分離課税となっている金融所得に軽課していること等による。
  • 平成26年1月から、株式譲渡益課税・配当課税が10%から20%に引き上げられたが、なお1億円超から所得税負担率が急激に下がる状況にある。そこで、所得再分配機能回復の観点から、5%引き上げる。
  • 同時に、多様な金融商品に投資しやすい環境を整備し、個人投資家を金融市場に呼び込む観点等から、損益通算の対象範囲の拡大を進める。
  • 貯蓄から投資への流れを後押しするとともに、公的年金制度を補完し、老後の安心を築くため、中長期運用と60歳以降の払い出しを前提としてNISAを恒久化した「じぶん年金(日本版IRA)」の導入を図る。
資料2 申告納税者の所得税負担率

資料2 申告納税者の所得税負担率

8)寄附金税制

  • 新しい公共の担い手を支える税制をさらに拡充する。NPO等に対する支援税制(市民公益税制)について改善を図り、大学等に対する寄附金税制を充実させる。
  • ふるさと投資プラットフォームに対する投資について、一定額の投資税額控除を設ける。

2.法人所得課税

  • 法人実効税率については、適切な代替財源を確保できるのであれば中長期的には引き下げるのが好ましいが、実需の乏しい経済状況を背景に、この間の税率引き下げによる雇用・賃上げや設備投資への効果が見えない現段階でさらに引き下げることは適当とは言えない。
  • 研究開発や設備投資の増進、賃上げにつながる適切な税財制上の措置を講ずる。
  • ただし、雇用の維持・拡大、中小企業の育成・発展に悪影響を与える「外形標準課税の拡大」や「中小法人15%軽減税率見直し」などを代替財源とすることは、成長戦略に反し本末転倒である。

3.消費税

  • 平成31年10月に消費税を引き上げる前提は、事前に経済環境の整備を行うこと、社会保障の充実・安定化を約束通り実施すること、議員定数を含む身を切る改革を実施することである。
  • 引き上げの際には、単一税率を維持し、格差是正の観点から逆進性対策は給付付き税額控除で行う。
  • 軽減税率は、社会保障の充実・安定化の財源を大きく失わせ、改革の意義を後退させる。また、高額のものが購入できる高所得者ほど軽減額が大きくなるものであり、格差是正効果は薄い。
  • 医療機関・介護施設等のいわゆる損税問題(控除対象外消費税問題)について、措置を講じ解決を図る。

4.相続税・贈与税

  • 相続税については、平成27年1月1日より、基礎控除引き下げ、最高税率引き上げなど、負担増を行った。その影響を見極める必要があるが、格差是正の観点から、中長期的には最高税率を含む税率構造の見直しを行う。また、富裕税を含め議論も行う。

5.自動車関連諸税

  • 不条理で過重な税制を解消し、ユーザーの負担を確実に軽減するため、自動車取得税廃止・自動車重量税の当分の間税率の廃止、自動車税・軽自動車税の税率引き下げを含む車体課税の抜本見直しを行うべきである。
  • 取得税廃止の代替財源として、新たな環境性能課税を導入することは、税制を一層複雑にするばかりか、自動車取得税廃止を無意味にするものであり、そうした措置は行わない。
  • 軽自動車税(四輪及び二輪)などの自動車関連税制を増税することは、生活に欠く事のできない移動手段である自動車や二輪に、容赦なく税の網を新たにかけるものであり、そうした措置は行わない。

6.酒税

  • 酒税については、基本的にアルコール度数に応じた度数課税が原則との考え方に立った上で、現行の類似する酒類間の税負担の公平性の観点から見直しを行う必要がある。特に諸外国に比べても税率の高いビールについては、税率を大幅に引き下げた上で、ビール類の税率について一元化する。

7.住宅対策

  • 住宅産業はすそ野が広い産業であり、駆け込み需要と反動減が経済及び雇用に大きな影響を与えている。税制、歳出両面から、住宅購入者支援、特に中古住宅市場の活性化を念頭に、低迷が続く住宅市場へのテコ入れを図る。
  • 具体的には住宅取得にかかる消費税の一定額を還付する制度(すまい給付金の延長・拡充を含む)を検討する。

8.事業承継税制

  • 経営者の高齢化が進んでいるものの、円滑な事業承継が進まず、高度な技術や競争力を有しながらも、廃業や海外企業への株式売却を検討する中小企業も少なくない。
  • 雇用を支え、地域経済の中核となっている中小企業の事業承継の円滑化を推進するため、取引相場のない株式の評価方法の見直し・適正化、分散した株式の集中化を阻害する税制措置の見直しを図る。

9.租税回避への対応

  • 租税回避行為は、年々、複雑化・巧妙化してきており、その多くが合法で現行法では取り締まれないことが、納税者間の不公平感を高めている。
  • 公平・透明・納得の税制の実現に向け、法人税・所得税・相続税の租税回避行為を厳しく制限していく必要がある。
  • 法人税については、BEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクトに基づき対応していく。
  • 所得税・相続税については、国内の法定調書制度の拡大を検討するとともに、マイナンバーを活用し、当局が自国の居住者が国外に保有する資産の情報を円滑に取得し名寄せできるようにする取り組みを進めていく。
  • 将来的には日本国籍を有する者について、海外に移住してもその国と日本の所得税に差がある場合には、その差額について徴収できる非居住者への国籍課税制度の導入を検討する。

10.地方税財政

  • 税制抜本改革による地方消費税の充実とあわせて、地方法人課税のあり方を見直すことにより、税源の偏在性を是正する方策を講ずる。その際、法人が地方団体の行政サービスの提供を受けていること、地方法人課税が地方団体にとって企業誘致等による税源涵養のインセンティブになっていることを踏まえ、今後の地方法人課税のあるべき全体像を見据えて検討する。

11.国際連帯税

  • 世界的な格差拡大を是正する措置として国際連帯税の導入を検討する。

Ⅲ 平成29年度税制改正について

 与党が平成29年度税制改正について検討を進めているが、政府においては、下記を踏まえた税制改正を行うべきである。


(1)災害に関する税制上の措置

  • 甚大な被害が発生した場合、税制においても迅速な対応を可能とするため、恒久法として「災害税制に関する基本法」を制定すべきである。

(2)個人所得課税

  • 配偶者控除の年収要件の引き上げは、ライフスタイルに中立な税制を築く観点からの改革と真逆であり、問題外である。

(3)法人税

  • サービス産業の生産性向上に向け、ITなどを活用したサービス開発も研究開発税制の対象にすべきである。

(4)自動車関連諸税

  • 不条理で過重な税制を解消し、ユーザーの負担を確実に軽減するため、自動車取得税廃止・自動車重量税の当分の間税率の廃止、自動車税・軽自動車税の税率引き下げを含む車体課税の抜本見直しを行うべきである。
  • エコカー減税やグリーン化特例については延長・充実を行うべきである。

(5)ビールの酒税の引き下げ

  • 諸外国に比べても税率の高いビールについては、税率を引き下げるべきであり、発泡酒の税率を大幅に引き上げるべきではない。

(6)事業承継税制

  • 雇用を支え、地域経済の中核となっている中小企業の事業承継の円滑化を推進するため、取引相場のない株式の評価方法の見直し・適正化、分散した株式の集中化を阻害する税制措置の見直しを図るべきである。

(7)租税回避への対応

  • 法人税については、BEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクトに基づき、速やかな対応を行うべきである。
  • 相続税については、非居住無制限納税義務者の範囲を拡大していくべきである。

(8)その他

  • 郵便貯金銀行、郵便保険会社、日本郵便株式会社については、民営化の進展も踏まえつつ、ユニバーサルサービスの提供義務に応じた税制等の措置を検討の上、所要の措置を講じるべきである。
  • 租税特別措置等については、「租特透明化法」による国会報告に基づき、効果が不明なもの、役割を終えたものなどは廃止し、真に必要なものは恒久措置へ切り替えるべきである。
  • ふるさと納税の返礼品の在り方について、地方財政への影響も踏まえ、見直しを行うべきである。
  • なお、民進党の各部門が重点として要望する租特等(別紙参照)については、いずれも重要性の高いものであり、適切に検討を行い、所要の措置を講じるべきである。

別紙 租税特別措置等について

番号 重点要望項目 重点要望概要
1 被災者支援関係
  • 復興特区において復興居住区域を定めた場合の被災者向け優良賃貸住宅の特例措置(特別償却又は税額控除)を延長すること。
  • 特定激甚災害地域における被災者向け優良賃貸住宅の特例措置(割増償却)を延長すること。
  • 被災者の雑損控除のおける繰り越し控除期間を5年間とする特例措置を延長すること。
2 被災代替自動車関係
  • 被災自動車の所有者が代替自動車を取得した場合における自動車取得税の非課税措置を延長すること。
3 福島関係
  • 避難解除区域等に係る特例措置の帰還困難区域内に設定される復興拠点へ拡大すること。
    ・被災事業者又は新規事業者が機械等を取得した場合の特別償却等の特例措置
    ・被災事業者又は新規事業者が避難対象雇用者等を雇用した場合の特例措置
    ・被災事業者が将来の事業再開のために資金を積み立てた場合の特例措置
    ・復興拠点の整備のために土地を譲渡した場合の譲渡所得の特別控除等(5000万円)
4 みなし譲渡所得税非課税特例措置の適用要件の見直し
  • 公益法人、認定特定非営利活動法人に対する生前贈与や遺贈におけるみなし譲渡所得非課税措置の適用にあたっては、相続税非課税措置制度と同様、国税庁長官の承認は不要とすること。
  • 国税庁長官の承認を残置するとしても、以下のような措置をとること。
    ・一般市民にもより身近な制度となるよう事前相談制度を周知し、過去の事例などにより承認手続きや審査基準を明らかにするなど、情報公開を進めること。
    ・通達において、社会的存在として認識される程度の規模を有するものの例として挙げられている10の事業に限らず、公益法人、認定特定非営利活動法人が行う公益目的事業に直接供されている限り、柔軟に認めること。また、当該資産について当初の公益目的事業とは異なる種類の公益目的事業に使用する場合及び財産種類の変動があった場合でも、当該要件を満たしているものとみなすこと。
  • 公益社団・財団法人及び認定特定非営利活動法人に資産に係る贈与、遺贈を行った場合は、みなし譲渡所得から3000万円を上限に特別控除できる特例を設けること。
5 相続税非課税措置の適用要件の見直し
  • 相続税非課税措置の適用要件に関し、当該資産について当初の公益目的事業とは異なる種類の公益目的事業に使用する場合でも、当該要件を満たしているものとみなすこと。
  • 相続税非課税措置の適用要件が後発的事由により充当できなくなった場合は、課税対象は受贈者たる公益法人等とすること。
6 公益信託制度の抜本的見直しに伴う税制の見直しと特定寄附信託の拡充
  • 現在、検討が進められている新しい公益信託制度においても、公益法人制度と平仄を併せた所要の措置を講じ、拠出時の寄附金控除、寄附金の損金算入、運用収益の非課税措置等、その特徴を活かした制度設計・優遇税制付与を行い、資産寄付促進に資するようにすること。
  • 認定NPO法人・公益法人等への不動産や有価証券の寄附でネックとなっている、金銭に限るとされている特定寄附信託(日本版プランド・ギビング信託)の信託財産について、有価証券や不動産等の現物資産も認めるとともに、みなし譲渡所得税を非課税とすること。
7 個人の寄付金控除制度の拡充と「ふるさと納税(ふるさと寄附金)」との官民格差是正
  • 控除上限額の2倍引き上げ(現在は所得控除:所得金額の40%が上限、税額控除:所得税額の25%が上限)、適用下限額(現在、年間2000円)撤廃、年末調整での適用、5年間の「繰り越し控除」を導入など個人寄付の寄付金控除制度を一層拡充すること。
  • 「ふるさと納税(ふるさと寄附金)」で認められている一定程度の返礼品等について、寄付者への企業・商店等から提供された粗品・割引券配布等も認めるなど、官民格差を是正すること。
8 個人住民税の寄付金控除制度における個別指定の手続き簡素化
  • 地方での地域に密着した資金循環を進めるため、都道府県・市区町村における「個人住民税寄付金税額控除条例(通称:3号・4号指定条例制度)」の制定を促進するとともに、所轄庁からの要望も多い「個別指定の手続き簡素化(条例での個別指定ではなく公示等での認定に準じた仕組みへ)」を進めること。
9 認定NPO法人等に対する優遇税制における「法人の寄附金特別損金算入」の拡充
  • 「法人の寄附金特別損金算入」について、米国並みの所得金額の10%まで拡充し、フードバンクへの食品寄附など現物寄附は全額損金算入を認め、「繰り越し控除」を導入するなど拡充すること。
10 法人税における「収益事業」の定義の明確化等の改善
  • NPO法人の収益事業は曖昧で分かりづらい上にNPO法人側に対し厳しく規定されており、「チャリティバザー」や「チャリティコンサート」、「ハガキの収集・換金」に課税されているのが現状であることから、税法上の収益事業の定義を厳密にした上で、明確化する、寄付された不用品のチャリティバザーなど、実質的に寄付とみなせるものは、回数・日数に関わらず収益事業に該当しないものとする、 小規模NPO法人に対する法人税の免税点制度・簡易申告制度を創設するなど改善すること。
11 消費税制における特定収入と寄附金・会費等の取り扱いの見直し、消費税率引き上げ時のNPOへの配慮
  • 認定NPO法人等の課税仕入れに係る消費税額の計算上、不課税仕入れ額(寄附物品を購入する場合などを含む)に相当する特定収入については、調整計算の対象から除外すること。
  • 消費税制の特例において、特定収入に該当しない寄附金等には、使途に関連する適正と認められる管理費を除いた金額分を対象とするように改めること。
  • 消費税率10%への税率引き上げ(軽減税率の導入等)にあたっては、「免税点(現在、課税売上1000万以下)」を維持するとともに、フリースクール等の授業料も非課税取引に含めるなど、NPO法人にも十分に配慮すること。
12 大規模災害発生時における指定寄附金の制度化
  • 大規模災害発生時に救援・支援・復旧復興支援活動を行う認定NPO法人や公益法人等への指定寄附金制度について、被災者支援活動に対する助成事業に必要となる費用に充てるための寄附金を含め、被災者支援活動の必要費用に充てるもの全般を対象とするよう指定要件を改めるとともに、緊急時に速やかに発令できるよう予め制度化すること。
13 社会的投資減税の導入
  • ソーシャルインパクトボンドへの出資に対する減税や、ソーシャルビジネスを行う企業への投資減税、経産省で検討中である公益事業と収益事業を両立させる地域法人「ローカルマネージメント法人」への投資減税といった、社会的投資減税導入を検討すること。
14 マイナンバー・法人番号制度におけるNPO法人への事務負担軽減策の導入
  • 料金・報酬の支払調書の対象(年間5万円超/年)を、地代家賃等と同様の年間15万超に引き上げる等、事務負担軽減策を検討すること。
15 保育園等に活用するための土地に対する固定資産税と相続税の減免措置
  • 認可外保育園等新設のための土地確保が困難なため、地主等が売却に対してインセンティブを持てるよう税の減免措置を行うこと。
16 保育園等に活用される土地等の課税標準額の減額
  • 保育園等に活用される土地等の課税標準額の減額を含め、税負担を軽減する措置について検討すること。
17 固定資産税の安定的確保
  • 固定資産税は市町村財政を支える安定した基幹税であることから、引き続き、その安定的確保を図ること。また、平成28年度税制改正で創設された償却資産に対する固定資産税の時限的特例措置は今回限りとし、期間延長や対象範囲拡大は行わないこと。
18 県費負担教職員制度の権限移譲に伴う税源移譲
  • 県費負担教職員の給与負担事務の移譲とあわせて、個人住民税所得割2%の税源移譲を行うこと。また、税源移譲が平年度化するまでの間、移譲されるべき税源に不足が生じないよう、地方税制上の措置を講ずること。
19 関連銀行及び関連保険会社が日本郵便(株)へ支払う窓口業務委託手数料に係る消費税の仕入税額控除の特例措置の創設
  • ゆうちょ銀行・かんぽ生命の関連銀行等は、窓口業務と一体となっている一般銀行では発生しない委託手数料について消費税分が負担増となっており、追加的負担の解消と金融ユニバーサルサービスの安定的確保を図る面から、消費税仕入税額控除の特例措置を創設すること。特に、過疎地域局の負担軽減については、先行して早急に対策を講ずること。
20 研究開発促進税制の延長・拡充
  • 研究開発促進税制について、AIやビッグデータ等を活用した高付加価値サービスを試験研究の定義に追加すること。本体(恒久措置)のうち、「オープンイノベーション型」の運用改善を図ること。上乗せ措置のうち、「(試験研究費)高水準型」については延長すること。
21 NISAの拡充、恒久化
  • 民主党政権下で創設を決めたNISAについて、制度の恒久化及び非課税期間の恒久化を行うこと。
22 特別法人税の撤廃
  • 退職年金等積立金に対する特別法人税を撤廃すること。
23 個人向け金銭債権への貸倒基準の適用
  • 貸金業者の貸し付けによる担保保全の無い個人向け金銭債権に対して、法人税法基本通達9-6-3「一定期間取引停止後弁済がない場合等の貸倒」と同等の期間基準を設けること。
24 生命保険料控除制度の拡充
  • 国民の自助努力を税制面から支援する生命保険料控除制度を拡充すること。
25 死亡保険金・共済金の非課税限度額の拡充等
  • 遺族の生活資金確保のため、死亡保険金・共済金の相続税非課税措置について、現行限度額の拡充を図ること。
26 国際課税ルール見直しに際しての留意
  • 実体のあるビジネスを行う外国子会社が現地で稼得する所得が「一定の金融所得」として合算課税されることがないよう留意すること。
27 たばこ税引き上げについての慎重な検討
  • たばこ税については、非喫煙者の受動喫煙の問題等からも、禁煙、節煙を促進することは時代の要請であり、欧米の価格も参考にしつつ、中長期的には引き上げの姿を示す必要がある。ただし、平成22年に前例のない引き上げを行った経緯をふまえ、性急なさらなる引き上げについては、葉たばこ農家や小売、雇用への影響等も考慮し、慎重に検討を行うこと。また、消費税の軽減税率導入に伴う税収減の穴埋め財源としての増税は問題である。
28 学校法人に対する寄附促進のための措置の拡充【所得税等】
  • 所得税の税額控除対象事業の拡大、寄付金税額控除の対象法人となるための認定要件の撤廃、寄付金所得控除限度額の拡大、若手・女性研究者奨励のための寄附税制の創設を行うこと。
29 ・試験研究を行った場合の法人税額等の特別控除の拡充
・私立大学が行う受託研究の受託研究収入の非課税措置の拡充【法人税等】
  • 企業が国立大学等の共同研究・委託研究を実施した費用に応じ、企業の法人税から税額控除を受けられる特別試験研究税額控除制度(オープンイノベーション型)を拡充すること。
  • 私立大学の受託研究に対する法人税について、国立大学と同等に非課税にすること。
30 公益社団・財団法人が所有・取得する重要無形文化財の公演のための施設に係る固定資産税等の特例措置の拡充【固定資産税等】
  • 公益社団・財団法人が所有・取得する能楽堂等重要文化財である伝統芸能の公演のための施設に係る固定資産税、不動産取得税、都市計画税の軽減措置について現在、2年ごとの時限措置を恒久措置とすること。
31 医療・介護に係る消費税への対応
  • 医療機関・介護施設等のいわゆる損税問題(控除対象外消費税問題)について、制度設計を行うこと。
32 社会保険診療報酬の所得計算の特例(四段階税制)の存続
  • 医業又は歯科医業を営む個人及び医療法人が、年間の社会保険診療報酬が5000万円以下であるときは、その実際経費にかかわらず、所定の計算に従い算出した額を社会保険診療に係る経費とすることができる特例措置を存続すること。ただし、会計検査院の指摘を踏まえて、特例措置の在り方を見直すこと。
33 社会保険診療に係る事業税の非課税措置の存続
  • 社会保険診療報酬に係る事業税非課税措置を存続する。
34 社会福祉法人への非課税措置の維持
  • 社会福祉法人への非課税措置を維持すること。
35 医療法人の事業税の軽減税率の存続
  • 医療法人の社会保険診療以外の部分に係る事業税の軽減措置を存続すること。
36 年金課税等の見直し
  • 年金生活者の生活保障を大前提に、社会化された扶養であるという年金所得の社会的性格、及び応能負担を踏まえた一貫性ある税制とすること。
37 特定支出控除の適用範囲の拡大
  • 少子化対策としてベビーシッター経費を特定支出に含めるなど特定支出控除の適用範囲を拡大するとともに、勤務必要経費の上限額を引き上げること。
38 保育所増の推進のための保育所用地の相続税及び固定資産税の免除もしくは軽減措置 
  • 保育所用地を相続する場合の相続税の免除もしくは軽減措置をすること。
  • 保育所のための有料借地の固定資産税の免除もしくは軽減措置をすること。
39 農業経営基盤強化準備金制度の拡充および適用期限延長
  • 農業経営基盤強化準備金制度について、現場の実情を踏まえ、適用対象に大型農機等の運搬車両や中古農機などを加える等の制度拡充の上、適用期限を2年延長すること。
40 農林漁業用A重油及び軽油に対する石油石炭税の免税・還付措置の延長
  • 農林漁業用A重油に対する石油石炭税(地球温暖化対策対策のための課税の特例による上乗せ分を含む)の免税・還付措置、ならびに農林漁業用軽油に対する石油石炭税(地球温暖化対策対策のための課税の特例による上乗せ分)の還付措置について、3年延長すること。
41 肉用牛の売却による農業所得の税の特例措置の延長
  • 肉用牛の売却による農業所得の税の特例措置を3年延長すること。
42 受取配当等の益金不算入制度の見直し等
  • 平成27年度税制改正において一律に持ち株比率によって判定する形で益金不算入割合の見直しが行われたが、協同組合における上部団体への出資は、資産運用を目的とするものでないことに配慮し、益金不算割合を引き上げる等の必要な措置を講じること。
43 新たな都市農業振興制度の構築に伴う税制上の所要の措置
  • 都市農業の安定継続と都市農地の保全・有効活用のため、固定資産税等の減免につながる制度の創設、現行の20年の相続税納税猶予制度を前提とした貸借の容認や営農困難時貸付制度の実態に応じた改善、生産緑地制度の指定要件の緩和等、必要な措置を講じること。
44 森林吸収源対策の財源確保に係る森林環境税(仮称)の創設
  • 森林整備等の森林吸収源対策の推進のため、「森林環境税(仮称)」を創設することにより、安定的な財源を確保すること。
45 中小企業支援税制の拡充
  • (事業承継税制) 事業承継の円滑化に向け、 (1)納税猶予の対象となる発行済議決権株式の総数等の「2/3要件」を撤廃、(2)相続税の納税猶予割合の100%への引き上げ、(3)兄弟等複数人での承継を納税猶予の対象に加えることを可能にする。また、取引相場のない株式の評価方法の見直し、分散した株式の集中化を阻害する税制措置の見直し、(4)雇用維持要件の緩和を行うこと。
  • (中小企業投資促進税制)サービス産業の生産性向上に資する、器具備品、建物、建物附属設備などの対象設備の拡充を行うこと。また、中小企業の工場や仕事の現場において安全対策の充実を促進するため、働く者の安全に資するための設備投資に対して、特別償却または税額控除による減税措置を行うこと。
  • (固定資産税の減免)中小企業等経営強化法に基づき、固定資産税の減免措置の対象設備の拡充を行うこと。
46 欠損金繰越期間の延長・充実
  • 新規事業や革新的なプロジェクトは黒字化までに年月を要することがあり、欠損金の繰越期間を十分に認める必要がある。成長及び革新的分野への長期投資を促進し、投資能力を高めるため、欠損金繰越期間を諸外国並み(アメリカ・カナダは20年、イギリス・ドイツ・シンガポールなどは無期限)に延長するとともに、利用制限は極力避けること。
47 資源開発促進税制の充実
  • 我が国へのエネルギー・鉱物資源の安定供給を確保するため、資源の探鉱、開発に対する税制(減耗控除制度、海外投資等損失準備金制度)の充実・恒久化を含めた検討を行うこと。
48 地球温暖化対策税等の使途拡大反対
  • 地球温暖化対策として、我が国の温室ガスの約9割を占めるエネルギー起源CO2の排出抑制対策の抜本的強化が重要である。地球温暖化対策税については、その税収を省エネルギー、再生エネルギーの普及などに確実に充てていくことが必要であり、地球温暖化対策税をはじめとする石油諸税の使途を拡大しないこと。
49 印紙税の廃止
  • カード決済や電子マネー等による商取引が急速に拡大し、決済手段も多様化する中、文書による取引については依然として印紙税が課せられている。領収書等への課税については、同一商品であっても支払方法によって課税の有無が異なり、不公正が生じているため、印紙税の在り方については廃止を含め見直すこと。
50 その他 要望・検討事項
  • 石油関連諸税の見直し、タックス・オン・タックスの解消に向けた検討を行うこと。
  • 電気・ガス事業の法人事業税について、「その他の事業」と同一の取り扱いにすることの検討を行うこと。
  • 償却資産課税のあり方(とくに固定資産税について)の見直しを行うこと。
51 船舶・港湾・倉庫の充実・強化等
  • 船舶特別償却制度を延長すること。
  • 圧縮記帳(特定事業用資産の買換特例)を延長すること。
  • トン数標準税制を拡充すること。
  • 地球温暖化対策税の還付制度を延長すること。
  • 中小企業投資促進税制を延長すること。
  • 国際戦略港湾及び国際拠点港湾の荷さばき施設等に係る課税標準の特例措置を延長すること。
  • 海上輸送ネットワークの拠点となる埠頭の荷さばき施設等に係る課税標準の特例措置を延長すること。
52 観光振興
  • 消費税の外税表示を恒久化すること。
  • 訪日外国人旅行者に酒類製造場で販売した酒類に係る酒税の免税制度を創設すること。
  • 日本到着時に免税品購入を可能とする免税措置を創設すること。
  • 法人事業税の外形標準課税の負担軽減を行うこと。
  • 事業所税を廃止すること。
  • 交際費について非課税措置とすること。
  • 固定資産税の減額措置を延長すること。
53 住宅関係諸税の創設・延長・見直し、住宅ストックの充実等
  • 事業用資産の買換特例を延長すること。
  • 都市再生促進税制を延長すること。
  • 土地の売買等の登録免許税の特例を延長すること。
  • 優良宅地等のために土地を譲渡した場合の譲渡所得の軽減措置を延長すること。
  • 住宅ローン控除等の要件緩和を行うこと。
  • 優良住宅地造成のために土地等を讓渡した場合の長期讓渡所得の軽減税率を延長すること。
  • サービス付き高齢者向け住宅供給促進税制を延長すること。
  • リフォーム係る税制特例措置を拡充すること。
  • 住宅用家屋に係る登録免許税の軽減措置を延長すること。
  • 投資法人、特定目的会社及び特例事業者等が不動産を取得等する場合の登録免許税・不動産取得税の軽減措置を延長すること。
  • 中古住宅の買取再販に係る不動産取得税の特例措置を延長すること。
  • 既存建築物の耐震改修投資促進を目的とする固定資産税の特例措置を延長すること。
  • 浸水防止用設備に係る固定資産税の特例措置を延長すること。
54 公共交通の充実・強化等

【航空関係】

  • 航空機燃料税の軽滅措置を延長(沖縄路線、特定離島路線を含む)すること。
  • 地球温暖化対策税の免税・還付措置を恒久化すること。
  • 航空機の部分品等に関する関税免税措置を延長すること。
  • 【鉄道関係】

  • 北海道旅客鉄道株式会社及び四国旅客鉄道株式会社が所有又は借り受けている固定資産に係る固定資産税等の特例措置を延長すること。
  • 北海道旅客鉄道株式会社、四国旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社が所有する日本国有鉄道から承継した固定資産に係る固定資産税等の特例措置を延長すること。
  • 新規製造車両に係る固定資産税の特例措置を延長すること。
  • 首都直下地震・南海トラフ地震に備えた耐震補強工事により取得した鉄道施設に係る特例措置の期限を延長すること。
  • 鉄道事業に利用される軽油に係る重課分についての免税・還付措置の期限を延長すること。

【バス・タクシー関係】

  • 軽油引取税の旧暫定税率を廃止すること。
  • エコカー減税・グリーン化特例の適用期限の延長及び特例措置を拡充すること。
  • 都道府県の条例に定める路線を運行する乗合バス車両の取得に係る非課税措置を延長すること。
  • 軽井沢スキーバス事故対策として安全性の高い車両への代替促進税制を創設すること。
55 沖縄振興
  • 観光地形成促進地域制度の延長及び拡充を行うこと。
  • 情報通信産業振興地域及び特別地区制度を延長すること。
  • 産業高度化・事業革新促進地域制度の延長及び拡充を行うこと。
  • 国際物流拠点産業集積地域制度を延長すること。
  • 経済金融活性化特別地区制度を延長すること。
  • 沖縄型特定免税店制度を延長すること。
  • 空機燃料税の軽減措置を延長すること。
  • 離島の旅館業に係る特例措置を延長すること。
  • 沖縄県産酒類に係る酒税の軽減措置を延長すること。
56 ナショナルトラストに関する税制措置の創設
  • ナショナルトラスト活動を目的として土地を譲渡する際の譲渡所得税の非課税措置の創設、取得の際の不動産取得税・固定資産税の非課税措置の創設、企業がナショナルトラスト活動に対して行う寄附に対して「指定寄附」として全額損金算入できる制度の創設。


以上

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