野田佳彦幹事長は23日、衆院本会議で安倍総理の施政方針演説など政府4演説に対する代表質問に立った。野田幹事長は、人類が培ってきた3つの英知「『今』だけでなく『未来』をおもんぱかる能力」「地球を俯瞰(ふかん)する視点」「紛争ルールに基づき理性的に処理する作法」の観点から安倍総理の見解をただした。

 野田幹事長はまず、「目の前の今」「自分」だけでなく将来世代をおもんぱかり、民進党結党の理念でもある「未来への責任」を持ち、持続可能な未来を構想しなければならないと強調。安倍政権は甘い経済見通しに基づく財政健全化計画の策定や2度にわたる消費税引き上げの先送りなど、今だけ良ければいいという姿勢が目立つと指摘し、2020年の国・地方の基礎的財政収支は8兆円程度の赤字との報道があるなか、2020年の基礎的財政収支の黒字化達成は達成不可能との見方を示した。

 2016年度第3次補正予算をめぐっては、当初の見込みを大幅に下回った税収の不足分を補うために約1.7兆円の赤字国債が追加で発行されたことを問題視。「アベノミクスが行き詰まり、カジノミクスに走らざるを得なくなったことを証明している」と断じた。17年度予算には発効見込みのなくなったTPP関連予算も含まれていることから、撤回すべきだと主張。未来を見据えた「人への投資」に重点的に予算を付け直すことを提案した。

 17年度予算での総合的TPP関連政策大綱を実現するための予算について安倍総理は、「海外展開を行おうとする中小企業等への支援などに必要な取り組みであり、TPP協定発効を前提とするものではない」と開き直った。

安倍総理をただす野田幹事長

 野田幹事長はまた、「地球を俯瞰する視点」から「パリ協定」の安倍政権の怠慢による批准の遅れを「地球儀をポカンと眺める」だけで、真に「地球を俯瞰していなかったのではないか」と批判。安倍総理就任以来延べ110カ国を訪問、経済支援の表明総額が官民合わせて約54兆円と言われるなか、外交による経済協力についてどのような成果が上がっているのか、安倍総理の地球儀を俯瞰する外交の自己検証についてもただしたが、安倍総理は「国際社会で協力し世界全体の発展に貢献することはわが国自身が裨益(ひえき)することにもつながる」「ODAは日本外交の柱であり、日本だけがテロ、難民、貧困、感染症など世界的課題に目を背けるようなことはあってはならない」などと強弁した。

 野田幹事長は、人類が獲得した第3の英知「お互いの間の紛争をルールに基づき理性的に処理する作法」として世界の平和と安定、繁栄の基礎となる「法の支配」の重要性を説いたうえで、日米、日ロ、日中、日韓それぞれの関係や自衛隊の南スーダンの国連平和維持活動(PKO)について質問。安倍総理は20日の就任演説でも「アメリカ・ファースト(米国第一主義)」を掲げたトランプ米国新大統領との向き合い方について、「できるだけ早期に会談し、トランプ大統領との信頼関係のもとに揺るぎない日米同盟の絆をさらに強化していきたい」「日米経済関係をどのように発展、進化させていくか、さまざまなレベルで議論していきたい。日本経済の米国経済への貢献等に関する説明を含め主張すべきは主張し理解を深めていきたい。TPPが持つ戦略的、経済的意義についても腰を据えて理解を求めていきたい」などと答えるにとどまった。

 皇位継承を含む皇室のあり方をめぐり野田幹事長は、民進党の取りまとめでは退位については「天皇の退位を認めるべき」、法案の形態については「皇室典範の改正によるべき」であること、皇室典範改正の基礎的論点として「皇嗣が成年」「天皇の意思」「皇室会議の議決」の3点による退位規定の新設を提唱していると表明。「決して政争の具にされるようなことがあってはならない」と前置きした上で、「『政争の具にしない』ということは『議論しない』ということと同義ではない。私どもも議論に積極的に参加し、立法府として主体的な議論を行った上で、民意を反映した責任ある結論を得たいと考える」と力を込めた。

PDF「衆院本会議野田佳彦幹事長代表質問(予定稿)」衆院本会議野田佳彦幹事長代表質問(予定稿)