大串博志政務調査会長記者会見(要旨)

2017年1月31日(火)11時18分~11時40分
編集・発行/民進党政務調査会

★会見の模様を以下のURLで配信しています。
https://www.youtube.com/watch?v=T2K7aRHgZHc


■冒頭発言 ■質疑

■冒頭発言

○第3次補正予算案の問題点について

【政調会長】
 国会の議論は、補正予算案の審議が今行われ、(政府・与党は)採決してしまおうかとしているところであります。
 補正予算案に関して私達は、アベノミクスの失敗を表すものだということで、かつ不要不急の歳出も含まれているということで、反対の立場で臨みます。仮にこれが採決されたとしても、またそれ以降の予算委員会の審議の中でいろいろな論点を議論していきたいと思います。
 この補正予算案に関して私達は反対していますが、その反対の理由は、今申し上げましたように、まずアベノミクスがそもそも失敗しているということを露呈している内容であって、そもそも論としてそれを是認するわけにはいかないということが一つ。
 それと、歳出面を見てみると、本当に補正予算で手当てしなければならないのか、不要不急のものが入っているのではないか。特に国際機関への分担金・拠出金、このあたりについては、本当に3月31日までに補正予算で手当てしなければならないものか、義務性のあるものか、期限性のあるものかということに関して、政府からは極めて緩い説明しか出てきていません。予備費というものもあります。こういったものを見直すことによって国債の発行額を減らせるのではないかという点が、(民進党提出の)組み替え動議にも書いた大きな点です。
 もちろん、災害対策、あるいは防衛費にもきちんとした目を当てていかなければならないと思いますが、それらを減らせと言っているのではありません。

○予算委員会審議・天下り問題について

【政調会長】
 それから全体的な議論ですが、天下りに関して、今日13時から内閣部門とムダ遣い解消PTとの合同で、13省庁の調査の状況等々をヒアリングさせてもらいます。
 どのくらいのことが言われるかわかりませんが、昨日の山本国家公務員制度担当大臣の話を聞いていても、私自身も国家人事局からヒアリングしている内容を聞いていても、ほとんど指示らしい指示は各省庁におりていないと思います。やっと、昨日の夕刻になって、30人程度のチームだとか、こういう観点でやるとか出てきましたが、ほとんど物事は決まっていないと思います。
 というのは、昨日の観点の中で、退職後90日以内に再就職した人あたりを中心にチェックしていきますと、こういうふうに言われていました。この90日以内に再就職した人のリストがどれだけかと要求したのは私達なのです。私達民進党のほうから要求して、先週の文科とムダ遣い解消チームの合同会議の時に分厚い資料が出てきました。
 今、退職後2年以内に再就職した人は全部公表することになっているので、その資料は国家内閣人事局が出しているのですが、新しい制度になって、2年以内に再就職した人が今のところ1万人くらいいらっしゃいます。私達の求めにおいて、じゃあ退職後90日以内に再就職した人はどのくらいいるかということを政府に確認したところ、1万人のうち7000人なんです。つまり圧倒的多数は、退職直後に再就職しているのです。
 これは私達が資料を求めて出てきたもの。これを内閣人事局も追従してみようとしているだけの話なので、私は内閣人事局の調査に対して、いかにも調査しているという形、ふりをして引き延ばしをしているのではないかなという気がしますので、厳しく追及していきたいと思っています。
 あわせて、この事案の解明が進むに当たって、制度の問題もやはり議論していかなければならない。昨日、蓮舫代表も言っていましたが、まず当面の問題としてOBによるあっせん、この穴を塞ぐということ。それから、今回のあっせん(を禁じた国家公務員法)違反に対して、懲戒だけでいいのか、刑事罰は不要なのかと、こういった論点はきちんと部門のほうでも議論していきたいと思います。当面の策として。
 より根本的な問題として、そもそも今回の問題が生じた理由は、第1次安倍内閣の天下り規制の緩和。国家公務員法を改正して、天下り規制を緩和した。それまでは退職後2年間は関連企業に再就職してはだめよとなっていたものを、退職直後から再就職してよいと、緩和した。ただし、あっせんはしてはだめよという形になって、かつ再就職等監視委員会がチェックするとなっているのですが、基本的に退職直後から関連企業にも再就職できるようになってしまった。この規制緩和がやはり大きな問題であったと思いますので、その大枠のところは今後とも議論していきたいと思っています。

○予算委員会審議・「共謀罪」について

【政調会長】
 さらに「共謀罪」の論点等々も、昨日かなり出てきました。これは部門会議をまた始めていきますので、そもそも論のところからしっかり議論していきたいと思っています。

○予算委員会審議・トランプ大統領就任後の日米関係について

【政調会長】
 トランプ氏の大統領令及び言動には大変高い関心を持って私達は注目しています。
 特に、人権とか、自由、平等、こういった安倍総理がよく言うような普遍的価値とは離れた大統領令ではないか、あるいは言動ではないかと思われますので、私達の観点からすると、安倍総理は2月10日に会われますが、この中東等の7ヵ国に対する入国制限に関しては、問題だときちんと言っていくべきではないかと思います。
 その点、安倍総理は昨日の答弁では非常に不透明でした。世界のリーダー達が、この問題に関して「おかしい」と声を上げている中で、日本だけが何となくトランプさんに遠慮しているのではないかという感じがするのは、非常におかしい感じがしますし、そういう態度であるとすると、2月10日におそらく先方から言ってくるのではないかと思われる2国間協定、これも相手の土俵にずるずると引きずり込まれてしまうのではないか。
 むしろ私達は、相手が(貿易の)2国間協定という土俵を示してくるのであれば、まず土俵の設定から、そもそも論から議論すべきであって、2国間以外の、より多国間の枠組みも含めて議論すべきではないかと。具体的な形はないにしても、少なくとも相手の土俵にずるっと、その場で合意して入るみたいなことはあってはならないと思いますし、ましていわんや、個別的に言うと自動車の対日輸出に関して不当な要求を受け付けるようなことになってはならないし、あるいは2国間協定に為替条項を入れるといった話もありましたが、こういった国際的な常識を無視した要求にも、きちっとはねつける行為が必要ではないかと思いますので、この辺はしっかり注目していきたいと思っています。


■質疑

○米国のTPP離脱・2国間協定論について

【産経新聞・山本記者】
 「日曜討論」でも、今もおっしゃっていたが、2国間にはずるずる引き込まれないようにという話だが、では、ほかに、「より多国間の」というのは、それはTPPではないということか。

【政調会長】
 TPPが昨日、アメリカ時間の今日ですか、ニュージーランド、いわゆる寄託国に、アメリカはこれを離脱しますということを通知された。TPPは決定的に発効しなくなったと思うのです。
 この発効しなくなったTPPに、安倍総理は読み違えて、いつまでもTPP、TPPと言っているところが一つの問題であって、TPPはもう成らないという前提であれば、そのほかの、例えば大きな枠組みを考えませんかというような議論を提起していくことが必要ではないかということです。
 少なくとも、トランプ氏が前から言っている、トランプ氏の土俵である2国間に、何も言わないまま、ずるずると引きずり込まれることはよくないのではないかと。そういうことです。

【産経新聞・山本記者】
 2国間にずるずる引き込まれる懸念があるのはわかるが、ただ、安倍政権はTPPにあくまでこだわっているわけで、それについてはどうお考えか。

【政調会長】
 TPPにこだわるのは愚策だと思います。TPPが発効しないという以上、トランプ氏があれだけ拒否しているTPPをもう一回持ち出して、TPPをやろうよと言うのは、ほとんど意味のあることではない。そうではなくて、もっと現実味があるかもしれないそのほかの枠組みはどういうものがあり得ますでしょうかということを、トランプ氏と虚心坦懐に話し合うことが大切ではないかと思います。

【産経新聞・山本記者】
 ほかのものというのは、何か具体的にイメージされているものはあるのか。FTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)とか、そういうわけではなくてですか。

【政調会長】
 イメージしているものはありません。少なくとも向こうが提示している枠組み、土俵たる2国間を、「はい、わかりました」と言って受け止めるというのはよくないのではないかと私は思います。

【産経新聞・山本記者】
 具体的にどういうものがあるかはわからないということだが、トランプさんと会談した時に、2国間はだめだと、TPPもあれだと。では具体的にどういう形の、どういう中身のある交渉をすればいいと大串さんはお考えか。

【政調会長】
 少なくともトランプさんとの間では、2国間ではない、ほかの国も含めた大きな、保護主義に陥らない枠組みをつくってはどうかですか、と提案するべきだと思います。つくりましょう、と。

○平成29年度予算案審議における重要テーマについて

【NHK・関口記者】
 明日から実質的に新年度予算の審議が始まる見通しだが、具体的にどういったところに重点を置いて議論を深めていかれるおつもりか。

【政調会長】
 明日から始まるかどうかはこれからの国会の交渉次第だと思いますが、来年度予算の議論が進んでいく上においては、まず第1にはやはりアベノミクスなるもので本当に国民生活に好影響が出ているのかという、大きな論戦はやはり外せないと思います。消費者物価指数(価格変動の大きい生鮮食品を除く総合指数)が、昨年マイナス0.3%。やはりデフレではないかと。この面でも効果を出していないし、実質賃金もまだ上がっていない。これらを背景に、もし「年金カット」ルールが施行されていれば発動されてしまうような、来年度の状況になっている等々の問題もあります。
 そういう中で、財政の健全化に関しても、補正予算の1.7兆円減収、あるいは中長期財政試算において、去年の夏から今年の1月までのたった半年の間に2.8兆円も、2020年度のプライマリーバランス見込みが悪化したこととか、相当大きな論点を抱えています。
 こういった論点は議論の大きな対象になると思いますし、これと同時に、やはりトランプ氏とどう向き合っていくのか。多様性のある社会をつくっていく、そして保護主義に陥らないというような、世界をリードしていくためにどういうふうにトランプ氏と向き合っていくのかという点は、やはり大きな論点だろうと思います。
 さらに加えて、「働き方改革」。これは安倍総理は積極的な言葉は吐いていますが、具体的な法案作成の形に関しては全く目に見えない。やはり口先だけではないかという論点は出していかなければならないし、これに加えて天下りの問題、「共謀罪」の問題、こういった論点は議論していかなければならないと思います。
 一方で皇位の問題に関しては、これももちろん議論をしないということではないので、予算委員会等々でも議論になってくると思います。もちろん、静かな環境下で、「国民の総意に基く」象徴たる天皇の地位の議論にふさわしい議論はしていかなければならないと思いますが、やはり議論をしてはいけないということではないと思いますので、国会の中でも一定の議論はあると思います。

○原発・エネルギー政策のアップグレードについて

【読売新聞・工藤記者】
 先日、蓮舫代表が、党大会で原発政策についてさらに踏み込んだものを発表するという話があったが、現在の「2030年代原発ゼロ」という方針に比べて、どういった方向のものを目指していくことになるのか伺いたい。

【政調会長】
 ご案内のように、去年の蓮舫新体制が始まった後から、各部門に政策のアップグレードの検討を求めてきました。選挙が近くあり得べしという前提でやってきたわけですが、各部門からは中間報告を去年のうちに受け取って、大体のことができ上がりつつあります。かつ、政策アップグレードチームにおいて、民進党の経済政策ということで、教育の無償化を中心とした「人への投資」、これを抜本的に強めていくものができ上がってきます。
 一方で、エネルギー環境調査会における議論に関しては、もう少し時間がかかるという報告でした。それはそれで許容し、さはさりながら、次、3月12日・党大会という一定の節目がありますので、この辺を見据えて、どの辺のところまで一定の取りまとめができるかということを玄葉光一郎調査会長に求めているところであります。
 どのような取りまとめになるかということは、調査会の中での議論を待ちたいと思いますが、いずれにしても私達は今の自公政権とは本質的に違うと思っています。例えば環境問題、省エネ・再エネに関しても、パリ協定に関する流れを見誤ったことからもわかるように、今の安倍政権は環境問題に関しては非常に冷淡です。そういった点、省エネ・再エネにさらに力を注いでいくという点は(安倍政権と)違うと思いますし、原発政策に関しても、(安倍政権は)今はいわゆる40年廃炉制のなし崩し的な見直しを含めた再稼働になっている。要するに原発政策を続けようというような流れに対して、私達は2030年代に原発をゼロにするということをもう言ってきているわけです。これは大きな違いであって、こういった違いをきちんと示していけるような形をつくっていくことが大切だと思っています。
 これは野党4党での政策がどうあるかといった論調での報道がありましたが、そういった観点からやっているのではなくて、あくまでも民進党の政策のアップグレードとしてどこまで議論ができるかという観点からやっているものでありますので、そこはお間違えのないようご理解いただけたらと思います。

【TBS・牧野記者】
 「原発ゼロ基本法案」の検討状況というか、提出できそうなのか。そこら辺を伺いたい。

【政調会長】
 これは私、予断しないようにしていきたいと思います。先ほど申し上げたように、3月12日までに一定のアップグレードの結果を出していただくように玄葉調査会長にお願いしているので、どこまで到達するかに関しては、調査会の議論を待ちたいと思います。

【TBS・牧野記者】
 政調会長としては、法案を出すべきだとお考えか。

【政調会長】
 調査会で精力的に議論してもらっているところなので、私が予断を持って言うことは今のところは差し控えたいと思います。

【TBS・牧野記者】
 「原発ゼロ」の定義だが、「(原発)稼働ゼロ」と「(原発)ゼロ」は一緒なのか、違うのか、そこら辺を伺いたい。

【政調会長】
 牧野さんの質問は、「原発稼働ゼロ」というのは、原発が物理的に存在しているけれども動いていないという状態ですね。「原発ゼロ」とおっしゃる趣旨は、原発が世の中に存在しないという趣旨ですね。
 実態問題として、私達がエネルギー・環境戦略の中で書いたのは、原発が稼働していない状況、それが2030年代に訪れるようにと、こういうことです。
 どこまでどう到達するかは、調査会に議論をしっかりやっていただきたいと思いますが、あくまでも、やはり私達は自民党政権と違って、なし崩し的に原発が続くということではなくて、原発の稼働がゼロという状況がある時点で来るということが私達の政策なので、ここはもう大きな違いなので、この大きな違いがよくわかるような結論になるのではないかなという感じがします。

【共同通信・野見山記者】
 玄葉会長は先日、原発の再稼働に関して、安全確認が認められたもののみに限って容認するという現行方針に関して、「議論の対象になる」と言われた。これについてもエネルギー環境調査会の議論の推移を見守るのか、こういう基本原則はこれまでどおり堅持していくのか、そこを伺いたい。

【政調会長】
 これまでもエネルギー・環境戦略に書いた内容について、その時その時でいろいろな議論はしてきました。例えば、民主党政権時代ですが、エネルギー・環境戦略の中に書いたものに関して、再稼働に関しては非常に高いレベルの安全基準を満たした炉でないと再稼働しませんということを書いたわけです。それに関して、またその後、避難計画の問題も非常に大きな問題として上がってきた。これを踏まえて、国が責任を持った避難計画がしっかりあることというような条件もつけ加えたりしてきています。
 これはある意味当然のこととして、そういった状況、状況での考え方を示してきているわけなので、いろいろな議論はまずはエネルギー環境調査会の中でやってほしいと思います。