鷲尾英一郎議員は16日午後の衆院本会議で、「所得税法等の一部を改正する等の法案」について質疑を行った。

 同法案は国税の2017年度税制改正を内容とするもので、個人所得課税では配偶者控除・同特別控除の見直しを、法人課税では研究開発税制や所得拡大促進税制の見直しを、消費課税ではビール系飲料や醸造酒類の税率をそれぞれ段階的に一本化していくことなどを盛り込んでいる。

 鷲尾議員は、「2016年度の税収見通しは当初想定より下振れした。税収減となりデフレ脱却が遠のいている現実に鑑(かんが)みれば、アベノミクスと言う言葉自体が空洞化していると言わざるを得ない」「政府は2020年度にプライマリーバランスを黒字化するとしているが、達成への意思が感じられない」と述べ、財政健全化目標を達成化できるのかと質問した。安倍総理は、「大切なのは実体経済であり、特に雇用は改善している。全ての都道府県で有効求人倍率ははじめて1倍を超えた」など、これまでも発言してきた従来の答弁を繰りかえした。

 消費税の引き上げについて、「安倍総理は、『新しい判断』として消費増税を2度も先送りした。これは消費が伸び悩むというアベノミクスが解決できていない問題により、消費増税が可能な経済状況を作れなかったという結果だ」「消費増税が出来なかったことで、社会保障の充実は滞り、かえって消費抑制、生活防衛となっている」と指摘し、実質賃金を上げ、消費を拡大させ、消費税を上げるための方法の回答を求めた。安倍総理は、「社会保障制度を次世代に引き渡す責任を果たすため、経済財政運営に万全を期し、19年10月には引き上げを実施する」と答えた。

 「アベノミクスを境に、所得分布は上下に2極化している。社会の中で分断が起こり始めている」と懸念を表明した鷲尾議員は、「全ての人を包摂する社会を実現していきたい。それが『日本型ベーシックインカム構想』だ」と、民進党が考える税制の基本構想について説明した。「日本型ベーシックインカム構想」は、「税制における所得再分配機能を強化し、実質的に全ての人に基礎的な所得を保障することにつながる所得税改革、無年金者、生活保護世帯を減らし、社会保障制度再編の起爆剤にしていくもので、基礎控除を税額控除に変え、配偶者控除、扶養控除は廃止・縮小・統合し、新たに世帯控除を創設する。次に、所得税減税と給付を組み合わせた『給付付き税額控除』を導入する。具体的には、就労により得た所得に応じ減税額を増やすことで就労を促進する『就労税額控除』を、給与所得控除を再編成して導入する」というもの。鷲尾議員から民進党案についての見解を求められた安倍総理は、「所得再配分機能を回復する観点から、ご指摘の税額控除方式も含め幅広く検討していく。就労税額控除については、低所得者対策全体の議論の中で、同様の政策目的を持つ制度との関係を整理することが必要など、多岐にわたる課題がある。慎重な検討が必要だ」と、答えるに留まった。

 自動車関連課税については、「本来であれば、消費税率の10%への引き上げと同時に、自動車取得税の廃止をはじめとする抜本的見直しが行われるはずだった。しかし、見直しが行われないどころか、エコカー減税、グリーン税制が縮小される方向性が打ち出された。負担を増やすということは、景気や消費の足を引っ張ることになるのではないか」と、麻生財務大臣に所見を求めた。麻生大臣は、「エコカー減税については、対象範囲の見直しは段階的にするなど工夫を盛り込んだ。日本経済における自動車産業の重要性や消費への影響と言う観点から配慮したもの」と述べた。

 鷲尾議員は、「民進党は、政府与党に不都合な真実を突き付けるだけでなく、建設的に税制改革案を提示し、国民の皆さんの共感を得て、結果として社会の分断化を食い止め、日本の成長と、全ての人を包摂する社会の実現を両立させる」と述べ質問を終えた。

PDF「鷲尾英一郎議員 本会議代表質問原稿」鷲尾英一郎議員 本会議代表質問原稿