皆様、はじめまして。ただいまご紹介いただきましたNPO法人キッズドアの理事長をしております渡辺です。
 政治のことは全くわからないんですけれども、子どもたちと毎日現場を行っています。そんな中で今の子どもたちも非常に心配ですし、この先すごく大変だなあと思っております。なので、きょうこのお声をかけていただいて、少し皆様に子どもたちの現場をおわかりいただければと思って参りました。

 私どもNPO法人キッズドアは、2007年以来、日本の子どもの貧困という課題に取り組んでおります。ご存じのように、今、日本では子どもの貧困率が非常に高く、また非常に格差が固定しやすい中で、貧困の連鎖が起きています。ただ、なかなか見えづらいのが日本の子どもの貧困の状況です。貧困率は16.3%、7人に1人が貧困と言っているけれども、「一体どこにそういうお子さんがいるんだ」と言われます。でも、います。本当に私たち、現場で毎日出会っています。

 少しその例を持ってきたのですが、私たちの学習会に来た中学生・小学生が言った言葉です。 「今日のお昼代 予算100円!」
 きょうもやっているかと思いますが、日曜日に無料の学習会をやっています。大学生や社会人のボランティアの方が、一生懸命勉強を教えてくれるんですが、週に1回しかできないので、朝から晩までやるんです。そのときに、お母さん忙しくて、なかなかお弁当を持ってこれる子は少ない。たいていの子はそうは言っても300円、500円持ってきてコンビニで何か買うんですけれども、この子はきょうの予算は100円だったんですよ。「きょうの予算、100円だよ」って。それを聞いて、私たち「あ、そうなの」と思ったけれど、100円で今何が買えますか。どうするんだろうって。おにぎり1個買えないですよね、消費税がついて。

 どうするかというと、その子はコンビニに行って10円、20円の駄菓子を買えるだけ買って、お昼はそれで終わりなんですよ。当然午後おなかがすいちゃってもう勉強どころじゃない。あ、こんなに大変なんだということで、おやつを出したり、ちょっと食事の提供を考えたりとかしているんです。そういう状況です。

「大学生って本当にいるんだ」
 これも中学3年生の男の子が言った言葉です。学習会に初めて来たときに、「きょう勉強を教えてくれる大学生だよ」と言ったら、「あ、大学生って本当にいるんだ」って、その子は言いました。日本の貧困、非常に見えないです。孤立していますし、その子の周りには今まで生きてきた中で、大学に行っている人とか大学に行ったことがある人がいなかったんですね。自分の中では大学生が非常に遠かったので、初めて見たときにポロッと出てしまった。でも実際大学生と会ってみると、あ、あまり自分と変わらないから、もしかしたら自分も勉強すれば大学に行けるのかな、と思ったり、そんなふうなことです。

「偏差値って何?」
 これも中3の受験生が言った言葉です。模擬試験を受けるには3,000円、4,000円、5,000円かかるので、低所得世帯の子たちは受けられません。結果どうなるかというと、模擬試験受けたことがないから偏差値もわからずに、全然自分とはレベルの違う高校を受験して落ちてしまう。私立も行けないので、定時制の夜間に行って中退しちゃうとか、そのまま高校に行かないとか、そういうふうな現実があります。

「これって現実かなぁ。」
 これはちょっと小さい、小学2年生の女の子が言った言葉ですけれども、母子生活支援施設という福祉施設のお子さんたちです。私たち、そこでも少し学習支援をさせていただいていて、12月だったのでクリスマスパーティーをやろうと。ただ、非常に小さい施設ですので、人数も6~7人だから、町で売っている普通のホールのケーキを買って、それでクリスマスの歌を歌ったりお菓子食べたり、本当にこぢんまりとしたバーティーなんですけれども、そこにいた女の子がトコトコって席を立って壁際に向かっていって、何を言うんだろうと気になったスタッフが寄ってみたら、壁に向かって「これって現実かなぁ」とつぶやいていたと言うんです。後で聞いてみたら、そのお子さんはDV被害を受けて逃げていて、ようやくそこの施設にたどり着いたと。そういう中で、普通に育っていれば何回もやったことがある自分のお誕生日会とか、クリスマス会とか、そういうことを一切経験せずに来ている。

 そういう子がたくさんいるんです。珍しい4人じゃないんです。本当にたくさんいるんです。
 じゃあこの子たち、自己責任ですか。この親、自己責任ですかというと、そういうことではありません。低所得世帯のお子さんたち、非常に学力も低い。オール1だったり、偏差値が30なかったり、アルファベットを書けない中学生もいます。じゃあ何が悪いか。例えばお金が本当にないので、住居が大変狭いです。勉強部屋もないし、そもそも勉強机もない。家で勉強しようと思ったら、寝床でお盆を敷いてそこでやるとか、ひざの上でやるとか。それで受験勉強どうするんだという話ですよね。

 また、その子たち、本当に家では一人きりです。なぜかというと、日本の低所得の方たちというのは、働かないから低所得ではないんです。皆さん働いているんだけれども、非常に低賃金・長時間労働の仕事をダブルワーク、トリプルワークでやっているので、なかなか生活がうまくいかない。子どもにとってみては、必然的にネグレクトなんですよね。お電話をしても、夜の9時に家にいらっしゃる親ごさんというのがいないです。連絡がつくのは11時過ぎとか12時過ぎとか、そういうお家がたくさんあります。

 また、中には本当にその親ごさんが教育の必要性を感じていない。「高校いつだってやめていいんだよ」「受験勉強よりも家のことをやりなさい」、そういう親ごさんもいる中で、子どもたちをどう支えていくかというところで毎日苦労しています。

 最後に、本当に家計が厳しいです。私たちのやっているところでお母さんたちに聞くと、母子家庭で親子3人で年収150万ぐらいでやっているお家がいっぱいあります。貧困ラインというのがあって、例えば3人だったら211万円と言いますけれども、あれは平均で211万円ではないです。未満ですので、貧困層の中ではそこがトップです。皆さんそれ以下で暮らしているんです。本当にもうどうやっているんだろうと。年収110万とか120万とかでお子さんを育てるつらさというのは本当にあると思います。

 そんな中で私たちは、学生のボランティアを集めて学習支援、無料の学習会をやったり、居場所をやったりしています。
 先日、蓮舫代表にもお越しいただいて見ていただきましたけれども、学生も奨学金とか借りて本当に大変なんですが、一生懸命勉強を教えてくれています。ただ、それだけでは全然足りない。本当の解決には進まないです。もう少し子どもや若者に大胆な投資をしていただきたいなと切実に思っています。例えば現在公的支援がほとんどない15歳以上。なぜか義務教育が中学生までなので、高校に行ったら「もう自分でやんなね」と言われますけれど、家庭環境が不安定な15歳が社会に出て何ができるかというと、何もできないです。

 私たちが一生懸命高校に送り出しても、貧困率の高い地域だと3分の1ぐらいの割合で中退したり、留年の危機に遭ったり。どうしたらいいんだろうと思っています。

 でも、留年とか中退とか、ニートとかひきこもりとか、これ社会のお荷物と言われるんですが、そんなことはないというか、この人たちの責任じゃないと思うんですよね。15歳が何ができるかといったら、やっぱりそこは世界各国と同じように、まだまだ社会が支えていくべきところだと思っています。例えば児童手当、なぜか15歳までしかない。高校に行くほどお金がかかる。通学定期が買えなくて高校をやめちゃう子がいるんです。児童手当の拡充とか給付型奨学金もようやくできましたけれども、まだまだ足りないです。

 今教育無償化の話も出ていますけれども、そんなこともぜひやっていただければと思いますし、生活保護世帯の子が大学に行きたいというと、今非常に苦労しています。こんなことでいいのかなと。大学に行きたい子がいるのに行けない。今の日本ってそういう国なのかと愕然とします。親ごさんの雇用も非常に厳しいので、ここもぜひどうにかしていただきたいと思っています。子どもや若者や子育てへの投資をもうちょっと大胆にしていただく。そういうふうな国になっていただければといいなと思っております。

 私たちの子どもの現場のお話に終始しましたけれども、ぜひこういうことを民進党の皆様に考えていただければと思います。
 ますますのご発展をお祈りして、私のご挨拶を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。