衆院本会議で31日、「防衛省設置法等の一部を改正する法律案」に関する質疑が行われ、青柳陽一郎議員が質問に立った。

 同法案は、サイバー防衛隊や航空自衛隊の宇宙状況監視システム分野の定数増、陸上総隊の新編、教育訓練研究本部の新設、自衛隊による豪州及び英国に対する物品又は役務の提供に関する規定の整備等を定める内容。

 青柳議員は「2006年防衛庁省昇格関連法が臨時国会で成立し、翌年1月9日に防衛省が発足してから10年。防衛省は今、危機的状況にある」との認識を示し、「問われていることは、稲田大臣のシビリアンコントロールを機能させる能力の欠如であり、防衛省の組織の在り方そのものだ」と語り、重要な法改正である防衛省設置法及び自衛隊法の審議よりも防衛大臣のシビリアンコントロールや、防衛省・自衛隊のガバナンスの回復が先ではないかと指摘した。

 南スーダンPKOについては、3月10日に安倍総理が南スーダンPKOからの自衛隊部隊の撤収を発表したことに関して、政府に先んじて民進党は2月21日に自衛隊施設部隊を撤収させるべきとの見解を表明していたことにふれ、(1)派遣決定当初のマンデートが変更され、本来想定された任務では対応が困難なこと(2)現地の厳しい治安情勢が流動化していると考えられること(3)シビリアンコントロールが十分に機能していない状態での任務継続には重大なリスクがあること――などを考慮し、政治の責任として民進党は自衛隊員の命を守るために部隊の撤収を提案してきたと語った。「その意味で、今回の政府の撤収の判断自体は評価する。しかし、総理が説明した『施設整備に一定の区切り』『国内の安定に向けた政治プロセスの進展』などという理由は、正直な説明とは思えない。PKO5原則とは別に新たに閣議で定められた、いわば6原則目の『安全を確保しつつ有意義な活動を実施することが困難と認められる場合』に該当しているから撤収を決めたと考える」と語った。

 日報問題に関しては「日報は現地部隊の貴重な生の情報」であると指摘し、次々に明らかになった問題の経緯を取り上げた。(1)日報に対する情報公開請求に対し、防衛省内に日報が保存されていたにも関わらず、存在しないとして不開示決定を行った、政権の隠ぺい体質の表れと言わざるを得ない対応(2)不開示決定後、指摘を受けて再調査を命じた後、日報があったことが判明しながら1カ月にわたり大臣に報告すら上がらなかった、シビリアンコントロールが機能していない状況(3)「私に報告がなかった」などと稲田大臣は答弁したが、大臣の組織統率力、危機管理能力に大きな疑問符がつく状況(4)問題はこれにとどまらず、統合幕僚監部だけでなく、陸上自衛隊内にも日報が存在していたことが明らかになった際、陸自が日報保管について公表するため資料を準備していたにも関わらず、統幕の意向でこれを間もなく廃棄した、いわゆる背広組の意向を受けた廃棄作業が行われたこと――などを説明。「義憤に駆られた関係者からこうした情報が外に出て報道されていくという、状況そのものが実に深刻。リークや責任のなすり合いのオンパレードで、組織そのものがシビリアンコントロールも大臣の統制も機能していない状況に陥っている」と述べ、真面目に職務にあたっている隊員や職員のためにも、防衛省、自衛隊の抜本的な組織改革、意識改革が先決だと稲田大臣に指摘した。

 そのうえで防衛省設置法等改正案について、(1)法案と、参院で議論が続いている日豪、日英ACSAがそれぞれ定められることで英軍・豪軍にも弾薬の提供は可能となるのか(2)もしこの弾薬提供が可能ならば、先方から具体的にそうしたニーズが示されたか(3)英軍や豪軍と自衛隊が訓練を行う際、物品役務の提供が想定されていると思うが、豪英両軍と自衛隊の訓練とは具体的にどんなケースを想定しているか――等の確認を稲田大臣に求めた。

 稲田大臣は「豪州国防軍及び英国軍に対して提供可能となり、日豪・日英ACSAの適用対象となる物品には弾薬も含まれる。豪州及び英国との議論においては、弾薬も含めて幅広い内容での後方支援が想定されることを説明し、ACSAの適用対象となることを確認している」「豪州国防軍及び英国軍との間で戦術技量を高めることなどを目的とした共同訓練を推進していくことは大変重要であると考えている」などと答弁した。

 青柳議員は、「わが国周辺の安全保障環境が厳しさを増していることは論をまたない。外交政策とは別に幅広い視野から国民の生命・財産、領土・領海・領空をしっかり守っていくためにどのような政策を取っていくのか、骨太な議論をすべき時」だとの認識を述べ、それにもかかわらず「稲田大臣に国は守れるのか、統率力はあるのか、防衛大臣は危機管理が仕事なのに、国会の場で自らが危機をつくっている」「大臣と防衛省幹部との関係もうまくいっているのか疑問がある」といった厳しい文言が新聞各紙で散見することに言及し、「『改善すべき隠ぺい体質があるなら、私の下で改善していく』と稲田大臣が国会で答弁しても、ご自身の言葉は踊っても、部下の皆さんはもはや踊らない。大臣が一刻も早く身を引かれることが防衛省・自衛隊改革の最初の一歩だ」と指摘し、質問を終えた。

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