参院本会議で17日、「原子力損害賠償・廃炉等支援機構法の一部を改正する法律案」(原賠機構法改正案)が審議入りし、民進党・新緑風会から礒﨑哲史議員が質問に立った。

 同法案は、事故炉の廃炉の確実な実施を確保するため、廃炉を行う原子力事業者に対して、廃炉に必要な資金を原子力損害賠償・廃炉等支援機構に積み立てることを義務づける等の措置を講ずるもの。

 礒﨑議員は、(1)東京電力福島第1原子力発電所廃炉等に必要な資金(2)東京電力改革(3)託送料金の合理化(4)最終処分場の選定方法や検討状況(5)国の責任――等について世耕弘成内閣府特命担当大臣(原子力損害賠償・廃炉等支援機構)の見解をただした。

 礒﨑議員は冒頭、「東日本大震災から6年、熊本地震から1年が経過するなか、復旧・復興が思うように進まないという被災地の皆さんの思いとともに、今後とも復興に向けた諸活動に取り組んでいく」と決意を表明。

 その上で、本法案では福島第1原発事故の「廃炉・汚染水」にかかる費用について2兆円から8兆円に増加したことから、東電として年平均3千億円、賠償費用も合わせると年平均5千億円程度の負担となると指摘。「電力事業が地域独占や総括原価方式などで守られていた2010年度までの10年間の東電の経常利益は年平均2700億円強に過ぎない。毎年3千億円、あるいは5千億円を拠出していくことが可能なのか」と尋ねた。

 世耕大臣は、「原発事故以降、廃炉や賠償等に必要な資金を捻出するために約3兆円の合理化を行った結果、過去3年間の収益水準は約4千億円になっている。今後発電や小売部門での合理化や事業範囲の拡大に加え、送配電事業での大胆なコスト削減などを行うことで現行の水準を約5千億円にまで引き上げることは十分に可能だ」と強弁。今回の廃炉・汚染水費用8兆円の試算のうち6兆円の増額分については、「廃炉に関する専門知見を有する原子力損害賠償廃炉等支援機構に依頼し算出したもの。上振れることは想定しておらず、資金が増えた時の追加的な対応が必要だとは考えていない」と答えた。

礒﨑哲史議員

 東電改革提言では柏崎刈羽原発再稼働によって年間1千億円の利益を生み出すと想定していることについては、今年2月に重大事故時の対策拠点の1つにする予定だった免震重要棟が、想定される地震の半分にも耐えられない可能性があることが明らかになったことから、代替案の可能性も含めどのような対策を講じていくのかと質問。除染費用での東電の負担4兆円について株式売却益を充てることを想定していることにも、東電の株価が上がると見る妥当性を問うた。

 世耕大臣は、「提言では、第1段階として東電の単独コスト改革によって廃炉・賠償のための年間5千億円の収益水準を確保し、その上で刈羽原発の再稼働は改革の次の段階として必要なステップと位置づけている」「東電の株式売却益4兆円を確保することは容易ではないが腰を据えて長い時間をかけて実現していくもの」などと開き直った。

 礒﨑議員は、福島第1原発の廃炉の最終責任は国家にあるにもかかわらず、国の責任範囲が不明瞭なままだとして、明確で現実的な国の責任の範囲を示すべきだと主張。「民進党は、原発事故にきちんと正面から向き合い、一日も早い円滑な葉色を目指していく」と述べ、質問を締めくくった。