衆院法務委員会で21日、共謀罪法案(組織犯罪処罰法改正案)の2日目の質疑が行われ、鈴木委員長(自民党)は19日に続き同日も、法務省刑事局長の政府参考人招致などを強行採決した。

 質問に立った階猛議員は冒頭、こうした委員会運営は憲法、衆院規則違反の行為だとして「断じて容認できない」と強く抗議。前回のような、憲政史上例を見ない暴挙が繰り返されないよう、20日の通告で質問項目に加え、「いずれの質問も細目的、技術的事項に関するものではなく、政府参考人の出頭は不要である」との書面を提出したところ、法務省からは「答弁者は法務大臣のみを登録する」旨返答があったとして、階議員の質問を「細目的、技術的」だと勝手な判断をし、参考人招致を強行した鈴木委員長の行為を厳しく非難した。

 そのうえで、金田法務大臣の「予備罪は合意を処罰するものではないので、国際組織犯罪防止(TOC)条約上、その国内担保法としての要請を満たすものにはならない」「テロ等準備罪は対象犯罪を行う合意のみで処罰するものではなく、組織的犯罪集団が関与する対象犯罪の実行を計画し、その計画を実行するための準備行為が行われたときに処罰の対象とするもの」との答弁を受け、階議員は「予備罪の手前で処罰する、合意を処罰するがそれだけでは足りないということは、今回277の新たな、刑法上類を見ない新しい犯罪類型を設けるということか」と質問。金田大臣は、「テロ等準備罪は、重大犯罪の計画行為に加えて実行準備行為が行われたときに初めて処罰するもの。計画行為だけで処罰されるものでもなく、実行準備行為だけ処罰されるものでもない。共謀罪・陰謀罪とも予備罪・準備罪とも異なるものだ」と答えた。

階猛議員が質問

 階議員は、「新しい犯罪類型ということは、判例も解釈もない。したがって、刑罰の人権保障機能、どういう行為が罰せられるかが事前に行為者に認識されていなければ、行為は制約、萎縮されてしまう。これが今回極めて重要になる。だからこそ構成要件の明確性を厳しく問うていかなければならない」と指摘。「TOC条約に加盟する必要性は認めるが、既存の犯罪類型で対応できる道を探るべきではないか。私は予備罪の共謀共同正犯であればTOC条約の条件を満たすのではないかと考える」と述べた。

 また、これまでの質疑で、実行準備行為は構成要件の要素であることが明らかになったことを受け、「実行準備行為が構成要件の要素であるということは、実行準備行為があって初めて犯罪が成立する。そうであれば、実行準備行為が行われた後でなければ捜査は開始できないという論理的な帰結になる」と指摘。この見解をただしたが、金田大臣は「捜査手法や操作の開始時期は実務的な質問であり、ただちに私から答えることは困難」「実行準備行為が行われておらず、テロ等準備罪が成立していない段階では罪を犯したとは言えない。テロ等準備罪を理由に逮捕や捜索差押えといったような強制捜査はできない」などと明確な答弁を避けた。

 階議員は「強制捜査とは聞いていない。任意捜査も含むのか」と迫ると、委員長は刑事局長を指名。階議員は「衆院規則違反だ。質問を続けられない」と抗議し、質問を打ち切った。