衆院本会議で11日、「中小企業の経営の改善発達を促進するための中小企業信用保険法等の一部を改正する法律案」が審議入りした。同法案の趣旨は、「信用補完制度を通じて、中小企業の経営改善・生産性向上(経営の改善発達)を促進するため、新たなセーフティネットとして危機関連保証の創設や小規模事業者等への支援拡充を行うとともに、信用保証協会と金融機関の連携による中小企業の経営の改善発達の支援の強化等の所要の措置を講じる」というもの。

 民進党・無所属クラブから鈴木義弘議員が質問に立ち、経済の現状認識や「事業性評価」のさらなる方策、付加価値に力点を置いた融資制度、金融機関と融資先企業の信頼関係、信用保証制度の問題、公的再生支援のあり方等について取り上げ、政府の見解をただした。

「中小企業、地方経済に明るさが灯っているとは言いがたい印象」と鈴木議員

 鈴木議員は冒頭、「アベノミクスが5年目を迎えている中、一部では好景気に沸いている企業もあれば、地元を回ると中小企業、地方経済に明るさが灯っているとは言いがたい印象を感じる」と述べた。その上で、過去にも指摘されながら今回改正に至らなかった信用保証制度の問題として、(1)金融機関と借り手企業のモラルハザード(2)信用保証制度の政策効果と副作用(3)信用保証制度のコスト面の課題(4)信用保証協会が政策公庫に支払う保険料の制度設計(5)保証債務残高の規模と緊急支援措置(6)保証対象企業の明確化(7)信用保証協会の組織運営――の7点を列挙。信用保証制度のコストをめぐっては、「過去14年間で8兆円を超える支出規模が適正かどうか。信用保険に対する財政措置の多くが補正予算で手当てされ、国民の目に届きにくく、その是非について広い議論が行われることを妨げている。政府支出以外にも、保証協会向けに地方自治体が負担しているコストが別途存在し、社会全体として信用保証制度に関係してどれくらいの財政コストがかかっているのか非常に見えにくい」と提起した。

 また、「保証債務残高は高止まりの状態が続いており、その規模の是非についても再検討が必要だ。一時的な緊急対策と恒常的な支援制度は明確に区別することが重要であり、信用保証への過度の依存による負の影響を考慮にいれれば、保証制度による大規模な緊急支援措置は長く続けるべきものなのか」と指摘した。

 世耕経済産業大臣は、「自治体の負担分も含めて信用保証制度全体のコストが見えにくいという指摘について、国民にとってより分かりやすいものとなるよう努めていく」「緊急支援措置は多くの中小企業の倒産を回避できる一方で、その実施が長期間となれば金融機関の支援姿勢が崩れ、中小企業の経営改善が進まないことにもなりかねないため一時的なものとすることが適切。今回の改正により、危機時にはより支援を強化する一方、危機が去れば速やかに緊急措置を終了し、規律ある対応とすることで信用保証への過度な依存による副作用を回避していく」などと答えた。

 鈴木議員は、今回の法改正で信用保証協会の出資対象を事業再生ファンド以外に拡大することに、「問題の解決は、誰が責任をもって行い、国民の税金を無駄なく使うことを誰が担保するのかだ」と迫ったが、世耕大臣は「政府として適切に監督を行っていく」と答えるにとどまった。