衆院本会議で16日、政府提出の「児童福祉法及び児童虐待の防止等に関する法律の一部を改正する法律案」の趣旨説明・質疑が行われ、民進党の阿部知子議員が質問に立った。

 同法案の趣旨は、(1)虐待を受けている児童等の保護者に対する指導への司法関与(2)家庭裁判所による一時保護の審査の導入(3)接近禁止命令を行うことができる場合の拡大――等を定めるもの。

 阿部議員は、(1)裁判所の質の担保(2)いわゆる面前DV(3)児童相談所の体制強化――等について質問した。

 冒頭、千葉県松戸市で登校途中に暴行・殺害遺棄されたベトナム国籍のレェ・ティ・ニャット・リンさんについて触れ、「こうした悲劇を一日も早く終わらせるために、法務省から提出された性犯罪に係る刑法の一部を改正する法律案の早期成立を強く求めている」と述べ、一刻も早い刑法改正案の成立を求めた。

 また、性暴力被害者支援のための、緊急の医療的ケアも含めたワンストップ支援センター設置を強力に推進するための法案を昨年の暮れに5野党で共同提案しており、この法案の審議も強く求めた。

 改正案では、親の同意が得られず2カ月以上経過した児童の一時保護を行う場合に、各県に置かれた児童福祉審議会の意見を聴く仕組みから、家庭裁判所の承認という司法関与に変更することについて、家庭裁判所が児童虐待に関する専門性を十分に持っていることが不可欠となるが、専門的な知見を有する調査官がどの程度いるのか、専門性を養成するために研修を行っているのかを質問。

 金田法務大臣は、「心理学・社会学等の行動科学の専門的知見を有する家庭裁判所調査官を1596人配置している。任官するための研修や任官した後の研修で行動科学の最新の知識や、面接・心理テスト等の専門的技法を身につけるための研修を行っており、その中で児童虐待についても取り上げている」と説明した。

阿部議員

 配偶者間の暴力を子どもに見せる、いわゆる面前DVについても質問。児童への心理的虐待に当たり、一時保護の対象となること。また面会交流を認めない事由にあたりうるという、今までの厚生労働省の立場に間違いがないかを聞いた。

 塩崎厚生労働大臣は、「子どもの安全を迅速に確保し、適切な保護を図る必要がある場合などには、一時保護の対象となる」。面前DVがあった場合に、面会交流を実施するかどうかについては、「子どもの発達状況などさまざまな状況を踏まえ、子どもの最善の利益の観点から適切に判断されることが重要」と述べた。

 最後に、「児童虐待は個別の家庭の問題ではなく、社会全体の課題。社会全体で子どもを育てる、保護者の負担と孤立を軽減し、親と子どもが余裕をもって向き合い暮らしていける社会を実現していくために、これからも民進党は努力していく」と述べ質問を終えた。