衆院法務委員会で19日、政府提出の「共謀罪」法案と自民・公明・維新3党提出の修正案、民進・自由両党提出の「組織的犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律の一部を改正する法律案」の審議が行われた。

 山尾志桜里議員は、自民党の一口メモに「テロ組織が水道水に毒物を混入することを計画し、実際に毒物を準備した場合であってもこの時点で処罰することはできない」とあることから、この事案について見解をただすと、金田法務大臣は当初「準備しただけでは処罰はできない」と答弁したものを「殺人予備罪が成立しない場合もある」と修正。山尾議員は、「事案によるにもかかわらず、断定的に処罰が不可能なような書きぶりをして共謀罪の必要性を語るのは国民の皆さんに大きな誤解を与える。訂正をしていただく必要がある。こういう印象操作は厳に謹んでいただきたい」と厳しく非難した。

「テロ対策は立法事実でない」と山尾議員

 その上で、この事案が今回の「共謀罪」法案の立法事実に当たるかどうかを問うと、金田大臣は「立法事実はあくまでも条約であると考える」と答弁。安倍総理をはじめ政府はこれまで共謀罪法案の必要性として、テロ対策を中心とした国内事案の問題と条約批准の必要性を主張、国内事案のテロ対策の必要性として3つの事例を示し、これを立法事実だとしてきている。山尾議員が「テロ対策は立法事実ではなくなったということか」と迫ったが、金田大臣は「法案審議の目的は、本条約の締結にある。本条約を締結すればテロを含む組織犯罪の未然防止及びこれと戦うための国際協力が可能となる」などと条約批准の必要性を延々答えるのみだった。

 山尾議員は「立法事実からテロ対策が消えた」「自民党の皆さんがよすがにしている事案は法務大臣でさえ立法事実だと言えない。この事案を自民党のなかで共有して外に発信し、国民を誤導しながらまさか議論を終局させるなんてことはあり得ない」と断じた。

 加えて、金田大臣はこれまで共謀や計画を証拠化するに当たってメールやラインでの通信内容も証拠として限定されないと答弁していることを踏まえ、山尾議員は「なぜこうした証拠収集をしても国民の人権侵害にならないと考えるのか」と質問。金田大臣は、「裁判所の令状が必要であり、裁判官によって適正な手続きが担保されている」なと答えたが、山尾議員は、裁判所の令状がなくてもメールやラインの内容が開示される場合が刑事訴訟法上認められているとして、「任意捜査では裁判所による審査はない。嫌疑があると考えた捜査機関の判断が正しかったかどうかはどのように担保されるのか」と尋ねた。金田大臣は「一般に捜査は適正に行われている」「捜査機関内部による監査の仕組みも充実している」などと強弁。山尾議員は「自己チェックは審査にならない。これでは国民の皆さんを納得させることはできない」と指弾した。