衆院本会議で23日、政府提出の共謀罪法案(組織犯罪処罰法改正案)および自民・公明・維新の3党提出の同法修正案の採決が行われ、与党などの賛成多数で法案は修正可決された。採決に先立ち民進党の逢坂誠二議員が反対討論を行い、(1)法務委員会の運営(2)法務大臣の資質(3)国連からの指摘――について反対理由を列挙した。

■法務委員会の運営

 「今国会の法務委員会の運びは極めて異常だった。共謀罪法案の審議の直前、自民党内の仲間割れだったのか。与党筆頭理事が、突然、机を叩いて席を立ち、辞任を口にするという、驚くべき事態が発生した」と逢坂議員は述べ、それ以降、委員長職権の乱発が続いたことに言及した。委員会開催を職権で決めるのは日常茶飯事で、法案審議の全期間で政府参考人を登録することも職権で決定したと指摘し、「こんな強権的な委員会運営を体験したことはない。その上、質疑30時間で強行採決されたことも異常」と述べ、このような荒れた状況下で、充実した審議が行われたとは言えないと断じた。

■大臣の資質

 答弁のできない大臣として一躍有名人になってしまった共謀罪法案をめぐる金田大臣の対応については、大臣の背後から法務省のマスク姿の官僚が常に答弁資料を差し出す姿は二人羽織、さらには三人羽織と揶揄(やゆ)される、実にお粗末な答弁が繰り返されたと指摘。また、政府が、法案の閣議決定前から共謀罪法案を「テロ等準備罪」と呼び、「従前の共謀罪法案はとは全く別物」「一般の方々は対象にならない」などとイメージ戦略を開始したことも逢坂議員は問題視した。「金田法務大臣は、成案を得てから答弁するというセリフを繰り返したが、質問の意図を的確に理解しないまま、官僚が作成する答弁資料の棒読みを繰り返し、答弁が迷走、共謀罪に対する疑念を一層高めてしまった」との見方も示した。

■国連からの指摘

 「ここに来てこの法案を採決できないさらに大きなことが発生した」として、世界の人権状況を調査する国連の特別報告者が、この共謀罪法案に関し「プライバシーに関する権利と表現の自由への過度の制限につながる可能性がある」という懸念を示す書簡を18日付で安倍総理宛てに送付した件について強く問題視し取り上げた。

 この書簡の中で、「法案の『組織的犯罪集団』や『計画』それに『準備行為』の定義が曖昧なうえ、処罰の対象となる277の犯罪の中にはテロや組織犯罪とは関係のないものも広く含まれ、法が恣意的に適用される危険がある」「法案の成立を急いでいるため、十分に公の議論がされておらず、人権に有害な影響を及ぼす」との指摘がある点を、「これらは、法務委員会で指摘された懸念事項とも合致する、極めて重要な指摘」だとした。謀罪の立法事実に関し、19日の法務委員会で金田大臣が、国連のTOC条約の締結だけが唯一の立法事実と認めざるを得ない状況だったにもかかわらず、その国連から逆に、こうして疑問が突きつけられた状況からすれば「この立法作業は中断し、再検討すべき」ことの表れだとの見方を示した。

 逢坂議員は「つまり共謀罪法案は、国際法秩序に適合していないと指摘されたも同然であると同時に、国連特別報告者としては、日本政府の法案立案能力が十分ではないとの認識を示した。法治国家日本として、極めて不名誉な指摘を受けてしまったもの」との認識を語った。あわせて、この書簡に関し菅官房長官が昨日22日の会見で、「不適切なものであり、強く抗議を行っている」と述べ、「特別報告者という立場は、独立した個人の資格で、人権状況の調査報告を行う立場であり、国連の立場を反映するものではない」と強調したことを問題視。「国連特別報告者からの、こうした極めて重要な書簡を的外れな批判で葬り去るのではなく、ここで法案審議を中断し、指摘された事項について真摯(しんし)な姿勢で検討し、法案提出を再考することこそが、今、政府に求められている」と指摘した。

PDF「衆院本会議 逢坂誠二議員共謀罪法案反対討論(最終予定稿)」衆院本会議逢坂誠二議員共謀罪法案反対討論(最終予定稿)

法案反対の青票を投じる議員ら

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