参院本会議で2日、「住宅宿泊事業法案」(民泊新法案)が審議入りし、民進党・新緑風会を代表して質問に立った野田国義議員は、(1)感染症等の公衆衛生の管理(2)家主不在型の民泊の実施による治安維持上の懸念(3)周辺地域での住民の生活・居住環境の保全(4)実効ある監督体制の確保(5)地域の実情への配慮――等について取り上げ、政府の見解をただした。

 同法案は、住宅やマンションの空き部屋を旅行者らに有償で貸し出す「民泊」のルールを定めるもの。民泊を営む家主に都道府県への届け出を義務付け、年間営業日数の上限を180泊と規定する。衛生管理や苦情への対応、宿泊者名簿の作成なども義務化し、違反者には都道府県が業務停止や事業廃止を命じることができるとしている。

 野田議員は冒頭、森友学園と加計学園の疑惑について「国民の疑惑は日々増すばかりで、約80パーセントの国民がまだ納得していない」と指摘、疑惑解明のために国会での昭恵夫人、前川前文部科学事務次官の証人喚問を行うよう求めた。

 その上で、民泊については、日本の日常生活の魅力を見出すことができることや、手配や宿泊料の面から利用しやすいツールであり、民泊のサービスの提供があることによって新たな訪日旅行客を呼び込む効果は十分にあるとメリットを述べる一方、旅館業違反での営業等の問題が起きていると指摘。同法案をめぐる運用面の課題の1つである周辺地域での住民の生活・居住環境の保全について、「生活騒音、ゴミの出し方や喫煙に関するルール違反、住民への威嚇的な態度など不穏な対応も多く聞かれる。共同住宅の場合は、共有スペースの備品の盗難や破損などの実質的な物損も生じている」と述べ、こうした周辺住民の声に対してどのように応えるのかを尋ねた。

 石井国土交通大臣は、「住宅宿泊事業者等に対し周辺地域での生活環境の悪影響の防止についての宿泊者への説明、周辺住民からの苦情への対応等の義務を課すとしている。観光庁でも、都道府県等関係機関と連携し、ワンストップの苦情窓口の設置を検討している」などと答えた。

 「民泊の活用をめぐっては、大都市部では、ホテルの稼働率がひっ迫状態にあり、この需要の受け皿として民泊が有効活用されるものと理解できるが、古くから地域産業の中心となっている温泉街を維持したい地域も存在するなど、地域の実情は多様だ。本法律案では、地域の実情を反映する仕組みとして、生活環境の悪化を防ぐため、都道府県の判断で、区域を定めて、民泊の年間提供日数を制限することが可能とされているが、具体的に生活環境の悪化として許容される範囲、条例による日数制限の及ぶ範囲が不明確なままだ」とも指摘。地域事情に応じた弾力的な制度設計の必要性を強調した。