15日午前5時45分に再開された参院本会議で、自民・公明両党が共謀罪法案(組織犯罪処罰法改正案)について法務委員会での採決を省略して本会議で採決するという暴挙に出た。採決に先立って小川敏夫議員が質問に立ち、蓮舫代表が反対討論を行い強く抗議した。

 蓮舫代表は、「自民党・公明党が究極の強行採決、中間報告に踏み切ったことに強く抗議する。70年もの参院の歴史、議長のもとで進められてきた参院の独自性を発揮するための改革の歩みを踏みにじるものだ」と強く抗議。「法務委員会の審議ではなく、それを省き、本会議での審議なのか。法務委員会は要らない、公明党の秋野委員長には期待できない、丁寧な審議よりただ採決だけあればいい、まるで下請け機関のように、官邸に言われるがままに議会運営を進める与党のこの暴挙は、立法府に身を置く議員として強く恥じるべきだ」と語った。

 「2年前の9月19日は、この参院議場で自民、公明、与党の皆さんは安保法案強行採決で憲法を踏みにじった。今日は究極の強行採決で共謀罪法案を通そうとし、参院の存在そのものを踏みにじろうとしている。断じて許せない。安倍政権は、何をそんなに急いでいるのか。安倍内閣はお友達優先内閣との疑惑が深まっている。そのお友達優先の典型例、加計学園をこれ以上触れられたくないということなのか。だから究極の強行採決である中間報告に踏み切ったのか」と指摘し、自民、公明両党議員が行うべきは安倍総理、官邸への忖度(そんたく)である強行採決ではなく、良識の府として横暴な政権に率直に意見することだと訴えた。

 蓮舫代表は「共謀罪に対する国民の最大の不安は、権力が恣意的に捜査を行うのではないか、権力に国民個々人の内心の自由が侵されるのではないかという点にあるが、その共謀罪そのものを横暴な、まさに数の力で異例な本会議採決で成立させようとする凶暴な安倍内閣にこの共謀罪の執行を委ねたら、一体どんな運営をされるのかという不安は際限なく膨らんでいく。安倍凶暴内閣に共謀罪を与えず。これが国民を代表する本院の最低限の矜恃(きょうじ)であり、守るべき最後の一線だ」「テロとは名ばかりの『1億総監視社会』へと真っ直ぐに突き進む道を歩むのではなく、立ち止まり、正しい道を指し示すことこそ、良識の府・参議院に身を置く議員求められる姿だ」と強調し、討論を締めくくった。

PDF「参院本会議蓮舫代表共謀罪法案反対討論(予定稿)」参院本会議蓮舫代表共謀罪法案反対討論(予定稿)

小川敏夫議員

小川敏夫議員

 小川敏夫議員は、「刑罰を適用する場合には何が刑罰に適用されるのかということをはっきり示さなくてはならない」という憲法の罪刑法定主義に照らすと、共謀罪法案は何が刑罰なのかがはっきりせず、権力の恣意的な刑罰行使を許してしまう危険性があると指摘。また、安倍総理が「一般人は対象ではない」とする発言はうそであり、法案審議を通じて一般人も対象になることが明らかになったと説明した。そのうえで、組織的犯罪集団とテロ集団との関係等についてただした。

 共謀罪法案の採決に先立ち、15日午前2時30分に再開された参院本会議では、共謀罪法案(組織犯罪処罰法改正案)に関連して(1)法務委員会審議を打ち切り、委員会採決を行わず中間報告を求める動議(2)議院の会議において直ちに審議することの動議が審議され、藤末健三議員、田名部匡代議員がそれぞれ反対討論を行った。

藤末健三議員

藤末健三議員

藤末健三議員 委員会採決を行わず中間報告を求める動議に対する反対討論

 藤末議員は、与野党で積み上げてきた中間報告に関する1963(昭和38)年の第43回国会時の下記の「申し合わせ」に立ち返って討論を展開した。

 「参議院の各会派は、議院の正常な運営を図るため、少数意見の尊重と議員の審議権確保に留意するとともに、議院の品位と秩序の保持に互いに協力することとし、次のとおり申し合わせる。
 一つ、議案の中間報告は、審査につき委員会中心主義を採用している今国会法の趣旨にかんがみ、みだりに行わないものとすること。
 二つ、中間報告に関連し、本会議の運営が混乱した実情にかんがみ、このような中間報告は行わないように努力する」

 上記申し合わせに照らせば「中間報告によって委員会での審議・採決を飛ばし、この本会議場で議決することは、良識の府・再考の府である参議院を軽んじる暴挙に他ならない。数こそがすべてという政府与党の姿勢は、良識の府・再考の府としての参議院を否定するものであり、議会制民主主義を否定するものだ」と述べ、自民党、公明党の横暴な議会運営を痛烈に批判した。

田名部匡代議員

田名部匡代議員

田名部匡代議員 議院の会議において直ちに審議することの動議に対する反対討論

 田名部議員は、自民党、公明党が共謀罪法案の中間報告を強行した問題について国会法に照らして疑義があると指摘した。国会法56条の3では「各議院は、委員会の審査中の案件について特に必要があるときは、中間報告を求めることができる。中間報告があつた案件について、議院が特に緊急を要すると認めたときは、委員会の審査に期限を附け又は議院の会議において審議することができる」と規定されていると紹介。法務委員長が行った中間報告で急を要する理由が全く説明されていなかったことから、国会法上の根拠を欠いていると指摘し、「中間報告そのものが違法だ」と断じた。