民進党は27日午後、「加計学園疑惑調査チーム」の会合を開いた。加計学園を選んだ国家戦略特区制度による獣医学部新設めぐっては、23日の前川・前文部科学事務次官の記者会見でも萩生田官房副長官、和泉総理補佐官の関与が指摘されたため、会合では両氏の出席をあらためて要請。しかし両氏はこれに応じなかったことから、桜井充、今井雅人両共同座長らは会合後に官邸に萩生田官房副長官への公開質問状(PDFダウンロード参照)を持参した。

 国家戦略特区制度による獣医学部新設に関し、安倍総理は24日、神戸市内での講演で「速やかに全国展開を目指したい。2校でも3校でも、意欲があるところにはどんどん新設を認める」と発言。「日本獣医師会の要望を踏まえて1校に限定したが、中途半端な妥協が国民的な疑念を招いた」などと強弁した。

 冒頭のあいさつで桜井充共同座長は、「国家戦略特区は成功したら広げていくものであり、制度をまったく理解していないのではないか。ご自身が『1校に限る』としたばかりであり、そのこととの整合性はどうなったのか。総理は加計学園について『何の影響力もない。何の関与もできない』と言っているが、獣医学部を2校、3校に増やせるということは総理の影響力はあるということであり、加計学園に影響力があったと立証しているようなものだ」と指摘。「ルールのないような総理は独裁者だ。民主主義の根幹を理解していないのではないか」と断じた。 

安倍総理 新たなご意向で「すみやかに全国展開」

 会合の中で、この安倍総理の新たな発言に対する内閣府、文部科学省、農林水産省の見解などを各府省の担当者に尋ねた。文部科学省は「さらに獣医学部を新設する際には内閣府を中心に需給の動向を見ながら特区の枠組みのなかで検討すべきものだと考える」と答弁。農林水産省は、獣医師の需給について「動物については家畜、ペットともに減少傾向にある。獣医師数自体が全体的に不足している状況ではないと考える」「地域によっては産業獣医師の確保が難しいことがあると認識している」などと述べ、特殊な事情で地域によっては不足しているものの全体では不足していないとの認識を示した。

 一方、内閣府は「規制改革を推進する立場としては、一貫して1校に限ることではなくできるだけ広く門戸を開いていくべきであるというスタンスだ」などと主張、安倍総理のご意向を忖度(そんたく)するあまり国家戦略特区制度の趣旨とも矛盾する苦しい説明に終始した。

 出席議員らは「国家戦略特区の原則に反しているではないか」と指摘。安倍総理の発言の意図と、どういうやり方で増やしていくのかを確認するよう求めるとともに、「フェーズが変わったのだから国会審議を開く必要がある」と強く訴えた。

 会合後、桜井、今井両座長、升田世喜男衆院議員、礒﨑哲史参院議員は公開質問状を持って官邸を訪問。萩生田官房副長官との面会を求めたが、事前に連絡していたにもかかわらず門前払いという不当な扱いを受け、やむなく官邸の警備責任者に託すこととした。

 萩生田官房長官への公開質問状では、(1)2016年10月7日と21日の加計学園に関する打ち合せで文部科学省とどのような話をしたのか。また、「広域的に」「限り」などの条件を加えるよう指示した事実はないか(2)今回の疑惑について記者会見など公の場で国民に説明しない理由(3)加計学園理事長の加計孝太郎氏との今日までの関係――の3点について説明を求めている。

 今井座長は「私たちは今まで公表されている資料から萩生田官房副長官がこの問題に関わっていた可能性は非常に高いと思っており、ご本人から話を聞きたいとアポを取ってもお会いしていただけない。公の場で記者会見を開き説明することもなく、国会も開いてもらえない。これでは疑惑は晴れず、質問状を出し見解を出してもらうようお願いした。多くの国民もこのままで終わらせてはいけないと思っており、ぜひ説明をお願いしたい」と述べた。

 桜井座長は、「われわれの追及チームでは、役所の人たちからしか話が聞けず限界がある。総理は状況が変わったら説明責任を果たすと言っており、総理が発言されたように獣医学部を全国展開していくのであれば問題は新しい局面にある。きちんと国会を開いてほしい」と重ねて要請。加えて、「今治市の職員は内閣府への訪問の予定だったが総理官邸に行き、1時間半も滞在している。つまり、官邸のなかでそのような段取りをした人がいるということだ。われわれは入れてもらえず今治市の職員は入れてもらえている。これだけでも加計学園ありきであることが実証されたのではないか」と述べた。

PDF「加計学園の獣医学部新設に関する公開質問状」加計学園の獣医学部新設に関する公開質問状