国家戦略特区による学校法人「加計学園」の獣医学部新設などをめぐり、前川喜平前文部科学事務次官を参考人として招致して衆院文部科学委員会と内閣委員会の連合審査会が10日開かれた。3番手として質問に立った大串博志議員は、(1)加計学園問題等をめぐる経緯(2)安部総理をはじめ安倍内閣閣僚等の関与――等について質問した。

 大串議員は冒頭、森友学園問題も加計学園問題も「疑惑追及のみならず政策の問題として正さなければならない。すなわち総理に関係が近かったら学校をつくる許可が特別に下りて、そこに私学助成金という大きな補助金が行くことになる。私たちの税金の使い道が官邸との人間関係の近さによってゆがめられたのではないかという疑念があってはいけない。それを確認していく必要が国会議員にはあり、かつ政府は説明責任を果たすべきだ」と指摘した。また、連合審査会に和泉首相補佐官や木曽内閣官房参与(当時)らの出席を求めたにも関わらず、与党側が拒否したことを批判。重要な鍵を握る人物の出席を拒むことは「国民への説明責任を果たす」と安倍総理が繰り返しながら、実態は言葉と相反するものだと指摘した。

 前川参考人が加計学園問題に関して「行政がゆがめられた」と述べ、背景には官邸の存在があったと発言していることについて、どういう点からそう感じたのか確認を求めると、前川参考人は(1)国家戦略特区の目的である国際競争力の強化・国際拠点の形成にかなうか(2)石破4条件を満たしているのか――等についての検討が行われていないのが問題だと語るとともに、非常に不透明な政治的なプロセスのなかで「広域的に存在しない地域に限る」「30(2018)年4月開設」といった条件が付され、また京都産業大学が提案していたにもかかわらず、加計学園との間で比較検討が行われた形跡がない点からも不公平・不透明である部分が多いと指摘した。事務次官当時の昨年9月から10月にかけ、和泉総理補佐官から官邸4階の執務室等に呼び出しを受け、9月には新設についての文部科学省の対応を早く進めるようにとの要請があったと説明し、「その際に『総理は自分の口からは言えないから自分が言う』という話もあった。さらに10月にも呼び出しがあって早く進めるようにとの督促もあった。文部科学省としては10月の半ばの時点でも文部科学省では態度を決めかねていた事情もあり、まだ検討中であると答弁した記憶もある」と語った。また、「8月の時点だが木曽内閣官房参与からも働きかけがあり、木曽さんの場合は内閣官房からというよりも加計学園理事としての要望であったのではないかと思う」と説明し、「行政がゆがめられた」背景に官邸のこうした働きかけなどの動きがあったと明言した。

報道されている文科省への働きかけルート

 そうした発言を受けて大串議員は「報道されている文科省への働きかけのルート」に関して確認を求めた。委員会で使用したパネルの「報道されている文科省への働きかけのルート」という文言を与党側が拒否したことから、この部分を隠して提げた。「こんな情報隠しまでなぜしなければいけないのか」と懸念を示したうえで大串議員は、(1)加計学園理事で加計学園系列の千葉科学大学学長でもある木曽内閣官房参与(2)安倍総理直属の和泉総理補佐官(3)藤原内閣府審議官(4)萩生田官房副長官――の4ルートの働きかけの実態を正していくことが重要だとした。

 前川前次官が特に和泉総理補佐官がキーマンであるとの認識を持つ理由をただすと、前川前次官は「直接的な理由は私自身が和泉補佐官から強い要請を再三にわたり受けたということ。その後新たに見つかった10月21日付の文書を見ても和泉総理補佐官がさまざまな行動をとっていることがうかがい知れる。官邸の中にあって特区制度を熟知している方であり、和泉補佐官がさまざまな計画の策定といったことに関わっていたのではないかと思う」と述べた。

 大串議員は事実解明のために和泉首相補佐官や木曽内閣官房参与らの証人喚問を求めたが、菅官房長官は「国会のことであるので国会にお決め下さること」などと逃げの答弁を繰り返した。大串議員は「私たちが求める証人喚問と安倍総理の国会出席をきちんとやれば、この問題は早い時間に解決できる」と述べ、政府・与党の真剣な取り組みを求めた。

PDF「衆文科・内閣連合審査 大串博志議員配付資料」衆文科・内閣連合審査大串博志議員配付資料

前川前事務次官に質問する大串議員

前川前事務次官に質問する大串議員