党役員会見に関する基本的な方針について

大塚耕平代表記者会見

2018年1月25日(木)12時06分~12時34分
編集・発行/民進党役員室

★会見の模様を以下のURLで配信しています。
https://www.youtube.com/watch?v=SXSnaRKwaMQ


■冒頭発言 ■質疑

■冒頭発言

○代表質問で憲法・「働き方改革」を中心に質疑

【代表】
 定例会見を兼ねてということで、代表質問の感想も含めて申し上げます。
 代表質問は憲法と「働き方改革」中心に聞かせていただきました。「働き方改革」はそれなりにお答えいただいたような気がしますが、憲法については、実際に憲法改正するとなればさまざまな実務的な問題もあるということできょう質問させていただいたのですが、真摯に受け答えする姿勢が全く見られず、大変残念でありました。
 そういう姿勢であるからこそ、安倍さんの憲法改正論議にはどうしてもみんな疑念がつきまとうということだと思いますので、きょう最後、山川健次郎さんの件に絡めて「什の掟」を引用しましたが、本音でご自分の考えなりこれからやろうとしていることなどをはっきり国会でおっしゃっていただくこと、うそを言わないということがかえって信頼を高めることになると思いますので、総理にはそういう姿勢でさまざまな問題に臨んでいただきたいと思います。
 なお冒頭、民進党を民主党と言い間違えて大変恐縮でございましたが、民主党愛のなせるわざだということでご理解をいただければと思います。


■質疑

○民進党の経済政策について

【「フランス10」・及川記者】
 民主党政権の経済ブレーンだった経済学者の小野善康さんが朝日新聞大阪本社版1月12日付の朝刊で、生産性革命や人づくり革命というのは結局供給サイドの政策で、今必要なのは総需要不足の解消ではないかと書いていた。民進党はこの総需要不足の解消のためにどのような経済政策を掲げるのか伺いたい。

【代表】
 小野先生は、我々の政権時代から今のようなご主張が持論でいらっしゃって、やはり民主党政権と今の安倍政権の違いをそういう意味では非常によく捉えていらっしゃるコメントだと思います。
 つまり、「生産性革命」とセットで「人づくり革命」と言って、きょうも代表質問で申し上げましたが、いかにも我々の「人への投資」とかぶっているような政策をやっているように安倍さんは見せているのだけれども、総需要対策としての観点が全然ないのですね。
 だから、時々申し上げていますが、NHKの「日曜討論」でも何回か申し上げた気がするのですが、アベノミクスというのは「経済がよくなれば生活がよくなる」、こういうコンテクストなのです。ところが我々は「生活がよくなれば経済がよくなる」と、真逆なのです。
 安倍さんの「経済がよくなれば生活がよくなる」という、いわゆるトリクルダウンは現に起きていないわけです。特に平均的な国民の皆さんのもとには。したがって、私達の「人への投資」というのは、例えばきょうも質問しましたが、保育士の皆さんの処遇改善、結局そのことは保育士の皆さんの消費行動、つまり需要につながっていくわけですので、やはりそういうところで安倍さんの経済政策は私達とは根本的な違いがある。
 きょうの質問、ご興味があればもう一回読んでいただきたいのですが、たまたま土改事業のことを取り上げましたが、土地改良事業は補正予算と今年度の当初予算を合計すると、民主党政権前の水準を超えてしまったわけです。こういうことをやっていたら、本当の需要対策の予算は出てこないわけです。
 したがって、小野さんがおっしゃるように、安倍さんのおっしゃる「生産性革命」はまさしく供給サイドの政策で、あわせて「人づくり革命」もセットで供給サイドの政策の一環のように見えてしまうところが最大の問題なのです。
 だから私達はやはり需要サイドの政策、しかも、これは単純に給付を拡散するということだけではなく、もちろん保育士さんや介護士さんのように他の産業よりも平均所得が低い部分は大胆に是正しつつ、しかし、その他の職業分野の方々も所得が恒常的に上がっていくような、やはり分配政策と同時にその人達のスキルアップやさまざまなキャリアアップにつながるような施策を行っていくということです。
 久しぶりに小野さんの名前を聞きましたので、ちょっと私もうれしくなりましたが、小野さんのそのコメントももう一回読ませていただいて、しっかり対応したいと思います。

○憲法論議について(1)

【日本テレビ・清田記者】
 代表質問での憲法の項目について伺いたい。憲法改正の賛否について、大塚代表のご見解がなかった。例えばきのう希望の党の玉木代表は、「立法事実のない9条改憲案には反対」と。今回、憲法改正の賛否についてご見解がなかった理由と、憲法9条改正への賛否を伺いたい。

【代表】
 これはいつも私申し上げていますので、繰り返し申し上げますが、民進党は旧民主党時代から憲法論議には積極的に応じていく「論憲」「創憲」という立場ですから、憲法は必要があれば改正も前向きに捉えるという立場です。
 憲法9条については、これは前回の特別国会での質問の時に本会議場で申し上げたとおり、我々は自衛隊は憲法に書いてあろうとなかろうと合憲の立場ですから、書くことによって何が変わるのかを安倍さんにお伺いしたところ、何も変わらないとおっしゃったので、それではやはり立法事実がありませんから。立法事実のない憲法9条の改正には反対です。

○若者の政党支持傾向について

【「フランス10」・酒井記者】
 ゲイレポーター、酒井佑人です。「若者が希望を持てる社会を」と野党は主張しているが、自民党への若者支持率は43.4%と非常に高く、野党への若者支持率とは大きな差があるように思えるが、この差をどうお考えか。若者の支持率が足りない理由は何だと思われるか。

【代表】
 三つあって、一つはやはり広報対策。そういうストラテジーの面で差が出ていると思います。SNS対策とか自民党さんは随分やっていますからね。そういう面で少し我々、野党全体かもしれませんが、出遅れているので、ここは補強しなければいけないと思います。
 二つ目は、若者の年齢層にもよるけれども、今の若い皆さんにとっては物心ついた時には民主党政権だったりしたわけです。そして世代によっては、その後、自民党さんが復活して、自民党さんが古い政党だという意識があまりないのかもしれない。だから、気がついた時には民主党政権で、むしろ民主党政権は下野したと。その後出てきたのが自民党だという、こういう世代間ギャップもあると思います。
 3番目は、エーリッヒ・フロムというヨーロッパの社会学者がいますが、『自由からの逃走』という本を書いています。今若干、社会の、特に若者にそういうフロムの言っていたような社会傾向が少し潜在的にあるのかもしれないなというふうに思います。
 これはつまり、自民党さんあるいは安倍政権は我々から見るとかなり強権的な政権に見えるのですが、やはり今の若い皆さんの所得水準などは必ずしもかつてのバブル世代のようにどんどん伸びるわけではない、いろいろ束縛も多い中で、何かその強権的な政治が自分達の希望を一気に実現してくれるのではないかという潜在的期待感。こういうことをフロムの『自由からの逃走』というのは書いているわけです。もちろんフロムが書いた時代背景や対象とは全く一緒になりませんが、そういう社会心理学的な要因もあるかなと。
 その三つぐらいだと思います。

○代表質問について(1)

【NHK・稲田記者】
 代表質問に関して、冒頭、なかなか本音が見られなかったというようなことをおっしゃっていたが、どういうところで安倍さんの本音ではないと思われたのか、少し具体例をお聞かせいただきたい。

【代表】
 やはり個別発議の定義と逐条投票についてもう少し何か現在の総理としての、法律はもう施行されているわけですから、その法解釈として政府の考え方を述べるべきだと思うので私は聞いたわけです。
 国会で基本的に対応するべきものだというトーンでお茶を濁しましたが、それは例えば広告規制などをどうするかとか、これは確かに国会で先に議論したほうがいいかもしれないのですが、国民投票法はもう既に施行されているわけなので、これについての政府としての見解は述べるべきであった。しかし、述べなかった。というところに、「何を考えているのかな」という我々なりの疑問が湧くわけです。
 やはり、あまり正直ではないと思います。

○名護市長選挙・沖縄県知事選挙について

【NHK・稲田記者】
 今週末、名護市長選挙があるが、民進党として名護市長選挙にどのような姿勢で臨むのかということを伺いたいのが一点。
 それから秋に沖縄の県知事選もあり、知事選になると党本部も絡んでくると思うが、そこに向けてはどういうふうに臨んでいこうとお考えか。

【代表】
 先日の瑞慶覧さんの勝利を受けて一段と、この名護、どちらが勝つかということが、秋の知事選挙にも影響するということで、注目が高まっていると思います。
 そういう中で、名護、2月4日投開票に向けてどう対応するかというのは、今、幹事長と調整中です。
 その名護の選挙結果を受けて、知事選挙についても議論をすべきファクトがそこでだんだん固まってきますので、現時点において、知事選挙についてこの段階でコメントすることは特にございません。

○憲法論議について(2)

【朝日新聞・斉藤記者】
 総理の憲法の姿勢に疑念があるという趣旨のことが冒頭あったが、きょうの総理の答弁では「国の理想の形」というような言い回しがあったと思う。民進党のほうでは、憲法は権力を制約すべきだ論が強いと思うが、こういう総理の姿勢で、「あるべき姿」と言っていることについて何か危うさなどは感じるか。

【代表】
 そこはいいご質問で、「憲法は国の理想の姿を語るものだ」という一般論に反対する人は誰もいないと思うのですが、ただ、憲法は本当にそういうものなのかということについては、もう少し、一国の総理としてはそれこそ「国会で議論していただいてから答弁させていただきたい」と言うべきくだりだと思います。
 なぜならば、例えば「健康で文化的な最低限度の生活」を保障する、これが理想であっては何となく物足りないですよね。それはあくまで最低限のことを言っているわけですから。理想を語るならば、健康で文化的でどのぐらい豊かな生活を国民に保障するというふうに述べるのが理想であって。
 むしろ憲法は、国民の皆さんにとって必ず国が一定の責務を果たさなければならないということを述べている条文のほうが多いような気がします。そうすると、「憲法とは国の理想を語るものだ」と、ああいうふうに簡単におっしゃるところに危うさがあるのですね。我々は、やはり憲法というのは、憲法99条にも規定されているように、総理や国会議員を含む政治を担う全ての者達に遵守義務を課すものでありますので、やはり総理がおっしゃっている「理想を語る」という表現にはちょっと違和感を覚えます。
 やはりどちらかというと権力に対して、権力行使に対する一定の抑制を働かせるための、国民の皆さんから課された大きな枠組みであるという受けとめ方も非常に親和性がある。  理想を語っていないとは思いません。例えば平和主義とか国際協調とか、ああいうところはもちろん理想です。
 だから両方が混じっているのが憲法と言えるかもしれないのだけれども、どうも安倍さんのロジックは、理想を語るものだから、だから「憲法のあるべき姿」があるという、こういう文脈なのですね。その辺の論理構成がやはり非常に脆弱で、危うさを感じます

○代表質問について(2)

【朝日新聞・斉藤記者】
 前回の代表質問の時は、民主的勢力の結集みたいな呼びかけがあったと思うが、ちょっと今回は開会前にいろいろあったので自重したような感じか。

【代表】
 そんなことはないです。全然自重していないですよ。
 「ならぬことはならぬものです」というのは、これは別に安倍さんだけではなくて全ての人に「什の掟」は当てはまるので、そういう意味では「保守とリベラルの概念は対立概念ではない」とか、それから「正しいとか正義というのは一概には定義できない」とか、「民主主義を軽視するか重視するかというのが非常に大事なポイントである」とか、「ならぬことはならぬものだ」ということとか、いろいろな意味でその思いは全然変わっていないです。
 きょうは通常国会で、法律の論点も多いし、あくまで憲法と「働き方改革」を中心に聞かせていただいたということです。

○友党との連携について

【時事通信・小松記者】
 野党再編についてだが、増子幹事長が、希望の党との合流の際には分党という選択肢も当然出てくると、将来の話としておっしゃっているが。

【代表】
 いつ。

【時事通信・小松記者】
 昨日、BS11の番組収録で。
 代表はかねてから分党は否定されていたと思うが、改めてそのスタンスを確認させていただきたい。

【代表】
 増子さんがどういう文脈でおっしゃったのかちょっとわからないので、それについてはコメントを避けますが、私はとにかく3党連携、3党統一会派、最終的にやはり旧民進党・旧民主党勢力が一つの党になれるか、協力関係になるかというのは、これはいろいろなバリエーションがありますが、結集するということが大事だと思っていますので、そこに至るプロセス論としていろいろなことがあるかもしれないなというのは、それは理解できます。去年のああいうゴタゴタがありましたので。
 私のスタンスは、とにかく最終ゴールは3党の勢力結集だということです。

【読売新聞・鈴木記者】
 関連で。枝野代表・玉木代表の代表質問を聞かれていたかという点と、それを聞いて連携ができるのかという点を伺いたい。

【代表】
 どこかの新聞も書いておられましたが、「働き方改革」は希望と立憲が一緒と書いておられて、きょうの私の内容もほぼ一緒ですから、まさしく大半の国会の焦点では連携できると思います、「働き方改革」を中心に。

○憲法論議について(3)

【読売新聞・鈴木記者】
 民進党は論憲という立場だが、党内議論を今後どのように進めていくか伺いたい。

【代表】
 これは現時点では第二部会の担当になっています。憲法審査会、そこに入っていますので。白眞勲さんが第二部会長なので、白さんは憲法審査会にも入っていますから、今のところそこに担当してもらっていますが、調査会をつくるべきかどうかは少し執行部の中で検討した上で対応を決めたいと思います。

【フリーランス・上出記者】
 憲法論議で、枝野代表もはっきりと、これは権力を縛るものだと。それはほとんど同じというふうに考えてよろしいか。

【代表】
 はい。ほぼ一緒ですし、先ほど、平和主義とか国際協調など理想の部分もあるというふうに申し上げましたが、国際協調や平和主義も捉え方によっては理想を語っているとも言えるし、政府が守らなければならない義務とも言えますので、まさしく枝野さんが言っておられることと何ら変わりはありません。

○駐沖縄米軍のアクシデント等について

【フリーランス・上出記者】
 これは具体的な問題だが、今、沖縄で結構大変なことが起きていて、命に関わることを平然とアメリカがそれを無視して、日本もそれに対してちゃんとした手当てをとれない。抜本的な地位協定見直しはできないと思うが、最低限やらなければならないこととしてどのようなことを、この国会、あるいは国会以外でもいいが、代表は考えておられか。

【代表】
 沖縄に関しては、本当にこれだけ何度もアクシデントが起きると、やはり米軍及び米政府内で構造的・組織的な緩みが出ている、ないしは予算が足りないという情報も来ていますので、今アメリカの本土で予算執行停止になっている関係もあると思うのですが、そうであるならばやはり米軍は通常どおりのオペレーションをしてはいけないですね。
 一体なぜこれだけ繰り返し同じようなことが起きているのかということについて、まず国会ないしは国会外で政府に対して情報提供を求めるとともに、場合によっては米軍・米政府・米大使館に直接申し入れることもやるべきだと思います。
 私も、鳩山さんが党首だった頃に、グレグソンさんが四軍調整官だった時に沖縄の米軍基地をほとんど回りましたが、場合によってはそういうことも必要になってくるかもしれないなと思っています。

○共産党との関係・「保守」の概念について

【「フランス10」・及川記者】
 今週日曜日に保守思想家の西部邁さんが自死されたが、西部さんは晩年、グローバリズム反対や日本の中小企業や農業保護、あるいはマーケットにおける利潤最大化のみを追求する資本主義への批判など、日本共産党の政策を高く評価し、共産党は今の日本の政治では一番保守に近いのではないかとおっしゃっていた。大塚代表は共産党とは政策が異なると何回も主張されているが、保守の思想家の側から日本共産党こそ保守ではないかという意見が上がっていたことについて、どのように思われるか伺いたい。

【代表】
 共産党と選挙協力は難しいという最大の理由は、何度も申し上げているように私たちは自衛隊合憲の立場ですから、そこがまず大きな壁ですよね。
 その他の政策で全て異なるなどということは一度も申し上げたことがなく、むしろ社会保障とか経済政策では結構接点があると思いますよ。あわせて、小池さんを含め、大門さんとか山下さんとか、仲のいい人はいっぱいいますので、人間的にはつき合いは深いです。
 ただ、やはりそのベースになる基本政策、特に自衛隊の扱いなど、こういうところに差があると、それはなかなか政権を一緒に目指すというようなことは難しいので、選挙協力は当然難しくなるけれども、お互いに向き合うのは今の自民党さんの強権政治だということであれば、それは自主的にご協力いただくとか、いろいろな方法もあるだろうなと思います。
 2点目、いいご質問ですが、それこそ特別国会の代表質問をもう一回読んでいただくと、保守とリベラルの定義はあそこで申し述べていますので。本来、古典的な保守はこれまでの慣習、伝統、社会の構造を守るというところにあるわけですから、つまり共産党さんがおっしゃっているそれこそグローバリズムで国民の皆さんが疲弊しているとか、さまざまなご主張は、今も言ったような観点から言うとまさしく保守的であるとも言えるのです。だから、保守とリベラルというのは対立概念ではないということです。
 宣伝ではないですが、ちょうど本(大塚耕平『賢い愚か者の未来』早稲田大学出版)ができたので、この中にそういう話がいっぱい書いてあります。まさしく保守とリベラルの話も書いていますし、やはり我が国の政治、あるいは日本が国際社会の中でどういうことが課題なのかということを、私自身が政治家として、まだ少しアカデミズムにも足を突っ込んでいますので、そういう観点からいろいろ書いていますので、一回読んでください。