参院予算委員会で働き方改革・内外の諸情勢をテーマとする集中審議が5日行われ、民進党・無所属クラブの1番手として質問に立った足立信也議員は(1)GDPの算出基準変更(2)アベノミクス(3)森友学園財務省決裁文書の書き換え疑惑(4)働き方改革関連法案――等の問題を取り上げた。

マネタリーベースを増やしてもマネーストックは期待したほど増えなかった

 足立議員は「日本国民の大多数が景気がいいという実感がないなか、危機的財政状況は待ったなしだ」との認識を示した。マネタリーベース(日本銀行が世の中に直接的に供給するお金。流通現金=「日本銀行券発行高」+「貨幣流通高」と日本銀行当座預金の合計値)を年間80兆円ペースで増加させ、アベノミクスが始まる前の100兆円強から360兆円近く、5倍近くに増やしたが、実際に世の中に出回るお金・マネーストックは伸びず、キャッシュの内部留保や海外への投資に流れ、超低金利であるため個人収入は増えずに貯蓄率は減り、銀行の貸し出しも減り、中小企業は資金が回らず持たない、そして景気は悪いという流れになっていると指摘したうえで、アベノミクスの第一の矢の狙いはマネーストックを増大することだったはずだったのではないかとただした。麻生大臣は「デフレマインドの払拭に主眼を置いてきた。マネタリーベースの伸びに比べればマネタリーストックの増加ベースが緩やか、かなり低いのは事実。金利を安くしても金を借りる人がいない、資金需要がない、資金が余った状況にある」旨を答弁した。足立議員は「日本は需要が弱く、しかも永続的なものとなっている。需要が伸びないことへの対策としては少子化対策と貧困対策など、暮らし全体の底上げが何よりも大事だ」と問題提起した。

 森友学園財務省決裁文書の書き換え疑惑に関しては「怒りをもって受け止めている」旨を語り、2日の段階で決裁文書の書き換えの疑惑が浮上し、国会質疑でも取り上げられたのに対し、当該文書の存否や原本の閲覧――等に関して、6日の衆院財務金融委員会に財務省が回答するとしている点について、本日5日の参院予算委員会には提示しないということであり、「参議院を軽視した話」と指摘し、「参院予算員会が行われている本日昼までに回答を示すのが筋」だとして、財務省の対応を批判した。そのうえで足立議員はこれが事実だとすれば虚偽公文書作成罪に当たる重大問題だとの認識を示し、財務省トップとしてこの問題にどう臨むかについての責任ある答弁を麻生財務大臣に求めた。しかし麻生大臣は、「仮定の質問なので」「捜査の途中で資料も大阪地検にある」などと述べ、明言を避けた。

 働き方改革関連法案に関しては、裁量労働制で働く労働者で労災認定を受けた人はどれくらいいるか、一般の雇用形態で働く人との労災認定の頻度の違いを足立議員が質問したのに対し、加藤厚生労働大臣は示せるデータがない旨を答弁した。足立議員は適用範囲の拡大を議論しようとしながら、そうしたデータさえも持ち合わせていないことに疑念を表明し「それでよく立法作業を行える」と批判。まさに「企業が一番働きやすい国にしていく」ことのみに重点をおいた安倍政権の姿勢のあらわれだとして、調査を強く求めた。加藤大臣は、「調査の仕組み等を考えていかねばならない」などと応じた。

 足立議員はまた、2018年度予算に厚労省が副業・兼業の普及促進のための予算を計上している点を踏まえ、高度プロフェッショナル制度で働く人も該当するかを確認。「長時間労働を招かないよう留意しつつ原則副業・兼業を認める方向」だとの加藤大臣の答弁を受けて足立議員は、兼業・副業することで労働者の保護法制の観点が及ばない状況に陥りかねないとの見方を示し、問題が起きてからの後追いではなく労働者の保護の観点から事前の検討が不可欠だと指摘した。

PDF「参院予算委 足立信也議員 パネルデータ」参院予算委 足立信也議員 パネルデータ

PDF「参院予算委員会 足立信也議員 配布資料」参院予算委員会 足立信也議員 配布資料