(1) 分配と成長の両立

  • 民進党は、ふつうの人から豊かになる経済政策を実行します。格差が拡大して、富とチャンスが偏り、人びとの能力の発揮や個人消費が阻まれています。必要なのは、「分配と成長の両立」です。公正な再分配を実現し、日本の潜在能力を引き出すために、「人への投資」「働き方革命」「成長戦略」を実行します。

1)人への投資

  • 人への投資こそが、日本経済を成長させるエネルギーです。保育園・幼稚園、義務教育の負担軽減、大学進学等のための給付型奨学金の創設に取り組みます。職業技術教育を充実させ、公的な職業訓練メニューを多様化するなど、学びと仕事をつなげます。起業を応援するため、IT/デザイン・人材育成・研究開発などソフト面の助成金等を充実します。

2)働き方革命

  • 残業が当たり前の働き方を変えて仕事の生産性を上げ、子育て・介護と仕事の両立を強力にバックアップします。誰もが時給1,000円以上となるよう、最低賃金を引き上げます。同時に、派遣法改悪を見直し、「同一価値労働同一賃金」を確立して、家計を温め、消費を刺激して成長につなげます。

3)成長戦略

  • 既存産業の生産性向上、新産業の創出・育成の観点から、

    • ・政策資源(予算、税制、人員等)のメリハリ=「選択と集中」

    • ・起業と廃業の促進=「新陳代謝の向上」

    • ・就業機会と働きがいの追求=「雇用の安定・確保」

    という3つの基本方針に沿って、11分野に渡る成長戦略を展開し、雇用の受け皿である産業・企業の発展、生産性向上を実現します。

① グリーン

  • 2030年代原発稼働ゼロを可能とするようあらゆる政策資源を投入し、グリーンエネルギー革命を実現して、成長率のかさ上げと持続可能な経済社会をめざします。

【最重点施策】
  • ・分散型エネルギー社会の推進・再生可能エネルギー普及加速
    • a.エネルギー自給をめざす自治体支援

    • b.国の施設の省エネ・再エネ導入徹底

    • c.エネルギー固定価格買取制度(FIT制度)の改善

  • ・世界一の省エネルギー社会の実現
    • a.事業者の省エネの見える化

    • b.建築物の断熱強化・省エネの見える化

    • c.省エネ義務量制度の導入

  • ・熱利用の強化
    • a.廃熱利用の促進、廃熱量の見える化

    • b.再生可能熱利用促進

    • c.地域熱供給網の整備促進

  • ・脱化石燃料化、水素社会の実現
    • a.運輸部門における脱化石燃料化の推進

    • b.農林水産業部門における脱化石燃料化の推進

    • c.水素社会の実現

  • ・スマートシティ・スマートグリッド
    • a.スマートメーター設置の最大限前倒し

    • b.地域で最適な蓄電

    • c.まちの低炭素化推進

    • d.断熱健康リフォームの推進

②ライフ

  • 遠隔医療や医療介護分野におけるICT利活用の推進、ⅰPS細胞等の研究への更なる支援等により、ライフ・イノベーションを推進します。

  • 日本発の革新的な医薬品・医療機器等の創出により、国際競争力を強化し、積極的に海外市場に展開して需要を獲得し、経済成長を促します。

  • 治験や臨床研究をしやすい環境を整備することでエビデンスに基づいた医療技術や治療方法を確立し、海外に対する日本発の医療技術等の提供を促進するとともに、日本で治療等を受ける外国人を増やします。

  • 健康長寿社会を実現することで、高齢者の労働参加を促進するとともに、定期健診や健康指導、ロコモ対策など予防医療の充実やジェネリック医薬品の普及等により、医療費等の負担増の抑制も図ります。

【最重点施策】
  • ・遠隔医療の推進

  • ・iPS細胞等の研究へのさらなる支援

  • ・ドラッグラグ、デバイスラグの解消

  • ・医療の海外展開

  • ・生活支援ロボットの国際標準化

③科学技術イノベーション・情報通信

  • 我が国が強みを持つ学問分野を結集したリーディング大学院の拡充を図り、成長分野などで世界を牽引するリーダーとなる博士人材を国際ネットワークの中で養成するなど、産学官の知識を結集して世界トップレベルの研究開発及び成果の還元を推進し、技術革新を促進します。

  • 民間企業と大学、国立研究所などが研究の外部連携効果を実現(オープンイノベーション)するための横断的な取り組みを誘導・推進します。ICT(情報通信技術)について、世界をリードする技術とサービスの革新をめざし、国際的な競争や連携を視野に入れた新しい競争・規制政策を確立します。

  • 産官学民の強力な連携体制により、ロボット開発、IoT(モノのインターネット)の推進、ビッグデータの利活用などを図り、国民生活のあらゆる分野で課題解決型の先進的なサービスの提供と質の高い雇用の創出を実現し、国民の暮らしを世界一豊かにしていきます。

  • 基礎研究への公的支援の充実、応用・実用化研究への民間企業による投資拡大の仕組みづくりを進めます。

【最重点施策】
  • ・遠隔医療の推進(再掲)

  • ・自動運転の推進

  • ・ICTによる地域の絆の再生

  • ・ICTの防災・減災対策への活用

  • ・IoT・ビッグデータ・人工知能時代への対応

  • ・教育現場のICT化の推進

④中小企業

  • 経営努力に腐心し、地域雇用を担っている中小企業を財政面、金融面から支援します。

  • 自らマーケティング、製品開発、海外を含む販路開拓、他業種との連携などが可能となるよう、支援体制の強化とワンストップ化を行い、系列化、下請け化からの脱却を図ります。

  • 資金・経営手法・経営人材などの面から総合的に創業者を支援し、開業率の向上をめざすとともに、第三者保証の禁止などを通じ、第二創業へチャレンジしやすい環境整備を行います。

  • 官民金融機関による中小企業・零細事業者への支援機能について、事業の収益性に基づいて融資を行うプロジェクト・ファイナンスを含め、強化します。

【最重点施策】
  • ・正規労働者を増やした企業の社会保険料事業主負担1/2相当額の軽減

  • ・中小企業の海外展開支援

  • ・事業承継やM&Aに関する施策の充実

  • ・第二創業の推進

  • ・中小企業金融円滑化の促進

⑤農林漁業

  • 農業者所得補償制度の復活による所得安定、農地の一層の集約を通じた生産性向上などにより、「農業の基盤強化」を図ります。

  • 6次産業化や輸出促進、農産品及び加工品の高付加価値化による「農業の成長産業化」をめざします。

  • これらの取組みを通じ、新規就農者の確保と定着、農村の活力向上を図り、農業を地方再生の柱として打ち立てていきます。

【最重点施策】
  • ・戸別所得補償制度の復活、法制化

  • ・若者・女性に対する就農支援

  • ・適切な森林管理をする者に対する直接支払

  • ・国内農林水産物の輸出増に向けた戦略的支援

⑥金融

  • アジアの金融センターとしての地位を確立すべく、我が国金融・資本市場の機能向上を図ります。

  • 成長資金が必要な主体に対して、円滑、効率的かつ効果的に供給されるよう、政策金融機能と産業金融の役割を整理します。

  • 民間金融機関の取引先支援機能を強化します。

【最重点施策】
  • ・総合取引所の実現

  • ・金融サービスの環境変化への対応

  • ・地域金融円滑化の促進(一部再掲)

  • ・法定開示監査制度の一元化

⑦観光

  • 交流人口の増加により国内観光需要を喚起することで、地方経済の活性化や地方の雇用機会の創出を促進します。

  • 為替動向に影響されない安定的な交流人口の確保を企図し、観光資源の質的向上を図ります。

  • 観光需要を地域経済のエネルギーにするため、観光をマネジメントする人材を育成するとともに、有給休暇を取りやすくします。

  • 観光における日本の強みは、文化・芸術、食文化であることも踏まえ、観光庁の所管の在り方も含め検討を行いつつ、総合的な施策を展開します。

【最重点施策】
  • ・空港・港湾使用料の低減

  • ・文化・芸術の海外発信

  • ・外国人向け広域観光モデルコースの整備

  • ・世界遺産候補の発掘

  • ・観光ビザ取得の緩和

  • ・民泊推進に向けた空き家の活用

  • ・税関、出入国管理、検疫の増員

⑧アジア太平洋経済

  • 経済的な連携を進めるとともに、我が国企業等の海外ビジネスの展開を拡大し、その果実を国内に還流させます。

  • 世界経済の20世紀型二極体制(欧米)から21世紀型三極体制(米欧亜)への変化も踏まえ、近隣諸国との関係改善(隣交)を進め、経済的利益の増進を図ります。

  • FTAAPに向けた日中韓、RCEPのみならず、EUやGCCとの自由貿易等についても早期の妥結を目指す中で、自由貿易体制の発展にリーダーシップを発揮しつつ、日本としての利益の最大化を図ります。

【最重点施策】
  • ・文化・芸術の海外展開支援

  • ・JAPANブランド発信

  • ・知的所有権の保護

⑨生活・雇用

  • 同一労働同一賃金やワークライフバランス等を推進し、雇用の質の向上を図ります。

  • 中小企業に適切な支援を行いつつ、最低賃金を引き上げること等により、健全な企業の育成を図ります。

  • 人材を必要とする成長産業へ適切に労働移動を促すため、再教育・再訓練の促進などにより「雇用の安定・確保」(就業機会と働きがいの追求)を促進します。

  • 女性の社会進出を促進する観点も含め、結婚・出産前後の女性が働きやすい環境を整備することでM字カーブを改善するとともに、結婚などに対する多様な選択肢を受容する社会・制度を整えます。

  • 働くことを希望する高齢者が、豊かな経験と能力を発揮できる環境を整備するなど、すべての人に居場所と出番がある社会をつくります。

  • 技術・人材・知識に裏打ちされた成熟国家を実現する雇用の在り方を追求します。

【最重点施策】
  • ・女性登用企業への支援等

  • ・地域企業就職者への支援

  • ・結婚などに関する多様な選択肢

  • ・出産、子育て支援の強化

  • ・転職のための再教育の機会確保

  • ・高齢者が働きやすい環境の整備

  • ・子どもの貧困対策法に基づく施策の充実

⑩人材育成

  • 家計の状況にかかわらず学べる環境を整備します。

  • グローバルに通用する高度人材の育成・確保を図るとともに、地域社会・経済を支える人材を育成するため、実践的な職業教育・職業訓練を強化します。

  • 教育・研究開発・文化スポーツ分野への投資を大幅に拡充します。

【最重点施策】
  • ・外国語教育等の充実

  • ・高等教育における職業教育の充実など

  • ・所得制限のない高校無償化

  • ・地方大学改革

  • ・労働力確保のための方策の検討

  • ・良質な学びの機会の提供

  • ・科学技術を担う人材の育成

  • ・文化・スポーツの指導人材育成等

⑪国土・地域活力

  • 人口減少社会の中での集約型のまちづくり、大都市等の再生等に重点的に取り組み、持続可能で活力ある国土・地域の形成を図ります。

  • 地域内での購買活動推進、エネルギーの域内循環支援などにより地域循環型社会を構築し、地域経済活性化を図ります。

  • 地方自治体への権限・財源移譲を推進し、地域が自主性・独自性を発揮して切磋琢磨できる環境を整え、日本全体の底上げを図ります。

  • 総合特区制度をさらに活用し、包括的・先駆的な地域のチャレンジを総合的に国が支援して地域起点の規制改革を促進し、成功事例を全国に展開します。また、新しい公共やPPP(官民連携)などを積極的に推進することなどにより、地域の自主性・独自性がより発揮できる環境を整えます。

【最重点施策】
  • ・首都機能移転・分都構想の本格的な検討

  • ・地方支分部局の地方移管、自発的道州制

  • ・マンション建替え総会決議の要件緩和

  • ・中古住宅関連産業等の活性化

  • ・空き地・空き家対策

  • ・社会基盤の老朽化対策

(2) アベノミクス失敗への対応

1)消費税引き上げを延期し、暮らしを立て直します。

  • 社会保障の充実・安定化を図り、将来世代に借金を押しつけないため、10%への消費税引き上げを含めた「社会保障と税の一体改革」を推進することの重要性・必要性は変わりありません。

  • しかし、アベノミクスは失敗し、本来やるべき消費税引き上げを実行できる状況にはありません。ふつうの人の暮らしを立て直すため、以下の4点を前提として、引き上げを2019年4月まで2年延期します。

    • ①年金・医療・介護の充実と子育て支援は、消費税引き上げを待たずに予定通り来年4月から実施します。

    • ② 金のムダづかいをなくすなどの行政改革と身を切る改革を徹底します。

    • ③2020年度基礎的財政収支の黒字化目標は守り、次世代にツケをまわしません。

    • ④高所得者優遇の軽減税率は中止し、消費増税分を中低所得者に払い戻す給付付き税額控除を実施します。

2)マイナス金利は撤回させます。

  • 無理やり物価を引き上げようとしても、賃金上昇が追い付かなければ暮らしは苦しくなる一方です。特に、マイナス金利は、預金者にデメリットが大きいだけでなく、金融機能低下を招きかねない政策です。日本銀行に対し、デフレ脱却・為替の安定に努めつつも、マイナス金利は撤回させ、金融政策は現状を踏まえ、より柔軟に行うよう促します。また、緩和の前提であった「持続可能な財政構造を確立するための取り組みを着実に推進する」という政府・日本銀行の共同声明の内容は実質的に反故にされ、事実上の財政ファイナンスにより財政危機、金融危機のマグマは溜まり続ける一方です。

(3)雇用増と家計の所得増

  • ①「厚く、豊かな中間層の再生」、②「地域経済の再生」を柱として、雇用増と家計・働く者の所得増に軸足を置いた対応を実施し、消費低迷を打破します。

①厚く、豊かな中間層の再生

  • 従来の子育て支援策を抜本的に拡充するとともに、未婚化・晩婚化の進展が少子化に及ぼす影響を踏まえ、若い世代に対する結婚・出産支援策を強化し、「希望する人が安心して結婚、出産できる社会」をつくります。

  • 非正規雇用の待遇改善を進め、さらに産業政策により正規雇用を増大することで、賃金や可処分所得を増やし、「若者が将来に希望を抱ける社会」をつくります。

  • 社会保障制度の充実・安定化を図ることで将来不安を軽減し、「現役世代も高齢者も安心して消費できる社会」をつくります。

②地域経済の再生

  • 東京一極集中が地方の疲弊を招いています。一方で、都市居住者の多くは長い通勤時間にストレスを感じ、生産性の低下を招いています。これらの問題を解消するため、「職住近接」(職場と住居が近接)、「商住近接」(商業施設等が住居と近接)、「医住近接」(医療機関等と住居が近接)の「3つの近接」を基本とするコンパクト・シティの形成を図ります。

  • 東京からの本社機能の移転、工場などの誘致に加えて、農林水産業、中小企業・創業支援、観光、スポーツ等の施策により、地域に眠る資源を積極的に活かすことで地域産業の活性化を図り、安定した雇用を地域で創出します。