2015年度補正予算に対する代表質問が6日、衆院本会議で行われ、新たに結成された統一会派「民主・維新・無所属クラブ」から民主党の岡田克也代表と維新の党の松野頼久代表が登壇し、質問した。

 質問で岡田代表は、「補正予算は安倍政治の先送り、バラマキ姿勢を体現している。バラマキ歳出を徹底的に見直し、将来に備えて国債を思い切って減額すべきだ。(バラマキ政治の)最大の被害者は、若者だ」と指摘。また、「国が号令をかける1億総活躍ではなく、1人ひとりが尊重され大切にされる社会こそ、政治が実現しなければならない」と日本のあるべき進路を示した。

 岡田代表の質問原稿の全文は次の通り。

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 民主党代表の岡田克也です。私は、民主・維新両党で結成した統一会派、民主・維新・無所属クラブを代表し、安倍総理の海外出張に関する報告および麻生財務大臣の財政演説について質問します。

(国民に対する説明責任)

 やっと国会が開かれました。ここに至るまで、安倍総理が、国民に対して説明を行うことから逃げて、逃げて、逃げ回ってきたことを、まず指摘しなければなりません。

 我々が臨時国会の召集を正式に要求したのは、昨年10月のことです。にもかかわらず、安倍総理は臨時国会の召集を拒否しました。憲法53条には、通常国会の召集をもって臨時国会の召集に代えることができるとは、どこにも書いてありません。明らかな憲法53条違反です。国民の声を聞こうとしない安倍総理の体質そのものです。安倍総理の謝罪と説明を求めます。

 次に、国民は、8割が説明不足と指摘するなかで行われた、安全保障法制の採決強行を決して忘れてはいないと、力を込めて申し上げなければなりません。今も全国各地で抗議の声が挙がり、活動が続いています。昨日も新宿で大集会がありました。私たちは、憲法違反の法律を絶対に認めるわけにはいきません。

 安倍総理は採決強行の直後に、「国民の皆様の理解が更に得られるよう、政府としてこれからも丁寧に説明する努力を続けていきたい」と明言しました。安倍総理は、いつ、どこで、国民に対する丁寧な説明を行ったのでしょうか。国民に自ら約束したことですから、責任ある答弁を求めます。また、国民の理解を得るために、今国会でも引き続き徹底的に議論する覚悟があるのか、安倍総理の答弁を求めます。

 次に、安倍政治の先送り、バラマキ姿勢を見事に体現した補正予算案について質問します。

(補正予算案のフレーム)

 今回の補正予算案は、1.9兆円の税収上振れ分を、アベノミクスの果実だから自由に使ってよいとばかりに、まさしくバラまくものです。しかし、今は円安、株高もあって税収が増えていますが、税収見通しは上振れすることもあれば、下振れすることもあります。楽観的な見通しに立って、財政健全化への取り組みが先送りされています。今こそバラマキ歳出を徹底的に見直し、将来に備えて国債を思い切って減額すべきだと私は考えます。安倍総理の答弁を求めます。

(年金受給者等給付金)

 最も疑問なのは、3600億円が計上された年金生活者等給付金です。何のために、1100万人の高齢者に1人当たり3万円を配るのでしょうか。安倍総理の答弁を求めます。

 民主・自民・公明の三党合意に基づき、平成29年度から実施される年金生活者支援給付金の前倒しとも説明されていますが、この制度の対象者は600万人であり、今回の1100万人は明らかに拡大しています。まさにバラマキそのものではありませんか。安倍総理の答弁を求めます。

 困っているのは高齢者だけではありません。働く世代でもアベノミクスの成果を実感している人は限られています。市町村民税非課税世帯を対象にするのであれば、働く世代と年金生活者を区別する理由はありません。安倍総理の言う「一億総活躍社会」には、働く世代やその子どもたちは含まれていないのでしょうか。なぜ年金生活者に限ったのか、安倍総理の答弁を求めます。あわせて、なぜ公明党が熱心に取り組んできた子育て世帯臨時特例給付金を廃止したのかについても、答弁を求めます。

 この1人3万円、総額3600億円は参議院選挙直前の5月、6月に配られるといいます。あまりにも露骨すぎませんか。国民の税金を使ったバラマキの選挙対策です。ここまで政治が劣化してしまったかと、私は暗澹たる思いです。政治に対する国民の信頼を失わないために、この3600億円のバラマキは断固やめるべきだと考えます。安倍総理の答弁を求めます。

(保育・介護施設整備)

 安倍総理が唱える一億総活躍社会の具体策として、認可保育所等の整備を10万人分、介護施設等の整備を12万人分、前倒し・上乗せすることが決定されました。これら追加的施設整備のための予算の大部分が補正予算案に計上されています。

 問題は人手が足りるかどうかです。保育10万人で必要とされる人員は2万人、介護12万人で5万人と想定されていますが、果たして確保できるのでしょうか。

 保育も介護も現場は人手不足に苦しんでいます。最大の原因は給料が安いことです。保育・介護の仕事は好きだけれども、低賃金で結婚もできないとの悲鳴があがっています。しかし、今回の補正予算案と来年度予算案には、根本的な対策は講じられていません。保育・介護の現場で働く230万人の処遇改善をきちんと実現する覚悟があるのか、安倍総理の明確な答弁を求めます。

 保育・介護の施設整備のための予算は、それぞれ安心こども基金に501億円、各都道府県の地域医療介護総合確保基金に921億円を積み増すことになっています。極めて大きい金額です。特に、今回の介護施設の12万人分の整備は2020年代初頭が目標で、5年以上先です。5年先に、どのような介護施設が各都道府県にどの程度必要かということについて、現時点で把握できているとは到底考えられません。具体的なニーズの把握もないままのバラマキ、そして無駄遣いに終わることを強く懸念します。5年以上先の施設整備予算を、なぜ補正予算として計上し、一挙に各都道府県に配分する必要があるのか、財務大臣の答弁を求めます。

(TPP)

 今回の補正予算案には、TPP協定交渉の大筋合意を受けた関連予算3403億円も計上されています。しかし、協定交渉の具体的な内容について、臨時国会も開催されず、政府はほとんど説明していません。TPP協定の是非が国会で議論されないまま、国会承認を前提とした補正予算が先行することに強い違和感を覚えます。このような前例はあるのでしょうか。また、少なくとも、TPP協定案を今国会で十分な時間を充てて徹底審議することを約束すべきです。それぞれ安倍総理の答弁を求めます。

 私も全国の農業者の方々と会い、直接お話を伺ってきました。果たして農業が続けられるのか、不安を訴える声は数多くあります。そもそも、2012年の衆議院選挙で、自民党議員の多くはTPP絶対反対と叫び、自民党自身、「ウソつかない。TPP反対。ブレない」「TPPへの交渉参加に反対!」のポスターを全国に貼りました。全国の農業者は、その公約違反と不誠実さに怒っているのです。自民党がブレまくったことに対し、自民党総裁として国民に謝罪すべきです。安倍総理の答弁を求めます。

(消費税、軽減税率)

 次に、消費税の軽減税率について質問します。

 安倍総理は、軽減税率の範囲を外食を除く飲食料品全体に拡大し、そのために1兆円の財源が必要となりました。この問題をめぐって、自民党と公明党、そして総理官邸は迷走を重ねました。本日は基本的な点だけ指摘しますので、明確な答弁を求めます。

 第一に、1兆円の財源確保のために、自己負担の総合合算制度の導入を見送ることとされています。医療、介護、保育、障がい者支援など様々な社会保障制度には、所得に応じてそれぞれ自己負担の上限が設けられています。総合合算制度は、これらの自己負担の総額に上限を設けるもので、所得の少ない人の負担軽減のためになくてはならないものです。高所得者ほど恩恵を受ける軽減税率のために、なぜ三党で合意したこの意義ある制度を断念することにしたのでしょうか。安倍総理の答弁を求めます。

 第二に、消費税を10%に引き上げたときに、1%相当分2.8兆円を社会保障の充実に充てるということが前提となっていました。総合合算制度の導入は、その重要な柱でした。これをやめて軽減税率の財源とすることは、1%相当分は社会保障の充実に充てるという国民に対する重要な約束を破棄するものです。安倍総理の明確な答弁を求めます。

 第三に、1兆円の財源手当てが不明確です。どの社会保障予算を削減するのか、それとも赤字国債でまかなうのか、そのことが明らかでないなかで、1兆円の軽減税率の妥当性を判断することはできないはずです。先送りそのものであり、かつ国民に対し不正直です。年金、医療、介護のどこをどう削るのですか。まさか子ども・子育て予算の削減ではないでしょうね。安倍総理には、1兆円の財源を直ちに明らかにする責任があります。答弁を求めます。

(日印原子力協力協定)

 安倍総理は12月にインドを訪問し、日印原子力協力協定について合意に達したと発表しました。しかし、協定の内容は全く明らかになっていません。正直に説明すべきです。

 日印原子力協力協定の最大の課題は、インドが核実験を行ったときに日本が協力を停止することを明確にすることです。一昨日の海外出張報告で、安倍総理もこの点に言及していますが、核実験を行った際の協力停止は、協定に明記されているのでしょうか。また、核実験が行われたとき、すでに稼働中または建設中の原子力発電所も協力停止の対象となるのでしょうか。ここまで踏み込まないと、インドに核実験を断念させることについて、実効性は確保できません。日本の非核政策にとって、極めて重要な一線です。それぞれ安倍総理の明確な答弁を求めます。

(地球温暖化)

 地球温暖化は、人類が直面している極めて深刻な問題であり、次の世代のためにどうしても乗り越えなければならないというのが、我々の共通認識です。しかし、安倍総理は内閣の最重要課題として取り組むと言いながら、どこまで本気なのか、大いに疑問です。

 日本政府は、温室効果ガスの削減目標を2030年に2013年比26%削減としていますが、1990年比でいえば18%削減に過ぎません。このペースでは、2050年に8割削減という国際約束は、到底実現できません。なぜ40年かけて18%しか削減できないものが、その後の20年で80%削減に至るのでしょうか。無責任な解決先送りそのものではありませんか。8割削減への具体的な道筋を示す責任が、安倍総理にはあります。答弁を求めます。

 民主党政権時に、固定価格買取制度と地球温暖化対策税をスタートさせました。いずれも市場メカニズムを活用しながら、温室効果ガスを削減するものです。制度に問題がないわけではありません。しかし、これらをより良く有効活用せずして、2050年8割削減はあり得ません。安倍総理にその意思はあるのでしょうか。答弁を求めます。

(慰安婦問題)

 昨年末、慰安婦問題について合意に至ったことを、私は率直に評価します。ただ、日韓両外相共同記者発表には、「安倍内閣総理大臣は、日本国の内閣総理大臣として改めて、慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われた全ての方々に対し、心からおわびと反省の気持ちを表明する」とありますが、安倍総理は一度もご自身では語っていません。是非、安倍総理自らの言葉として、この場で日韓両国民に対し、はっきりと述べることを求めます。

(選挙制度改革)

 衆議院に設置された選挙制度改革に関する有識者調査会が、答申原案を取りまとめました。定数の削減が不十分であることは極めて残念ですが、民主党の提案と大枠では一致するものであり、評価します。

 答申原案には、様々な異論もあるでしょう。しかし、これ以上、この問題を先送りすることは絶対に許されません。我々は今、昨年11月に最高裁が違憲状態と判断した議席配分のもとで、国会審議を行っていることを忘れてはなりません。

 少なくとも、一票の格差是正については、調査会答申受け入れで自民党内をまとめる責任が、自民党総裁である安倍総理にはあります。私も党内をまとめます。先送りすることなく、安倍総理の断固たる決意をこの場で示してください。明確な答弁を求めます。

(おわりに)

 安倍総理は、これからも経済最優先だと明言しています。経済成長のための一億総活躍社会なのでしょうか。GDP600兆円達成のための担い手不足解消の手段として、「希望出生率1.8」「介護離職ゼロ」を掲げているようにしか、私には見えません。

 経済成長は一人ひとりの幸福実現のための手段であって、目的ではありません。仕事と子育てを両立させることも、充実した介護も、一人ひとりの幸せのために必要だからこそ、政治は責任を果たさなければならないのです。国が号令をかける一億総活躍ではなく、一人ひとりが尊重され大切にされる社会こそ、政治が実現しなければならないと私は確信しています。一人を見捨てる政治が、一億人を幸せにできるはずがないのです。

 国民の皆さん、日本は乗り越えなければならない多くの課題に直面しています。いずれも日本の将来や私たちの生活に直結する問題です。しかし、安倍総理は、これらの重要課題について、国民に正直に説明することなく、本当の解決を先送りし、ただただバラマキの政治を行ってきたとしか見えません。その最大の被害者は、若者です。今般の補正予算案はその典型です。

 150日間の通常国会がスタートしました。今年は「18歳選挙権元年」となります。日本の将来、そして国民一人ひとりにとって本当に大切な国会です。私そして民主党は、統一会派を組む維新の党とともに、徹底的に論議し、対峙し、安倍政治の暴走を止めることを国民の皆様にお約束します。そして、若者にとって、一人ひとりの国民にとって、希望の見える国会とすることを誓って、私の代表質問とします。

PDF「20160106衆院本会議補正予算代表質問(民維ク岡田克也)」20160106衆院本会議補正予算代表質問(民維ク岡田克也)