衆院予算委員会で4日、2016年度本予算の基本的質疑の民主党4番手として質問に立った緒方林太郎議員は、環太平洋連携協定(TPP)妥結後の国内経済への影響についてGDPが14兆円拡大するなどと試算した政府の経済効果分析等に関して石原経済再生担当大臣らにただした。

TPP妥結後の政府の経済効果分析

 緒方議員はTPP妥結後の経済効果としてGDP14兆円拡大をうたった政府の経済効果分析について、時間軸が示されていないのは何とも不可思議だとして、「14兆円のGDPの押し上げ効果が生じるのはいつか」を石原大臣に質問した。しかし大臣は「経済分析モデルとして定点で行っていて時間軸はない。政治モデルだと理解してほしい」などと答弁。緒方議員は「どれくらいの時期になれば14兆円が実現するのか」として再答弁を求めたが「データを積み上げていけば時間軸は出てくるが、今回の試算は政治、つまりどういう形になるかを試算したもので時期を明示できていない」などと支離滅裂な発言を行った。緒方議員は「10年経っても15年経っても100年経っても、まだ効果が出ていないと言い訳ができるモデルだ」と指摘。GDP14兆円の押し上げ効果がいつまで経っても表れなかった場合でも何ら検証できないうえ、押し上げ効果があるとしながらその効果がいつ表れるかを国民に示していない不誠実な試算であると批判した。

 緒方議員はまた、試算に示された押し上げ効果に自動車の輸出は含まれるかをただし、石原大臣は「入っていると考える」と答弁した。これに対して緒方議員は、自動車の関税が下がるのは15年先からで、ライトトラックについては30年後に現在の関税25%が0%になることを踏まえて「自動車を作ってもこの14兆円の効果が出るのは少なくとも30年以上先になるということか」と確認を求めたが、石原大臣は「日本の自動車業界にとってかなりプラスであるものを勝ち取った交渉だ」などと述べるとともに的外れな答弁を繰り返すだけだった。

 質疑のなかで石原大臣は「私は自動車メーカーの経営者ではないのでどの車をどこでどう作るかには言及していない。そういうことを経営者が望むかということについては経営者に聞いてもらえば結果はすぐ出てくる」などと、大臣の資質を疑うような投げやりな答弁があった。また、緒方議員が「関税が下がれば新たなビジネスモデルが広がってくる。現在ある関税を取り除いて日本のマーケットを広げていこうという気持ちはあるか」と確認を求めたのに対し、石原大臣は「私は内閣府の担当大臣なので経営についての質問は経済産業大臣にお願いしたい」などと開き直る場面があり、緒方議員は「不謹慎」だと非難した。

TPP妥結後の牛肉の関税

 続いて緒方議員は、現在38.5%の関税がかかっているが最終的には9%まで関税が下がる牛肉に関しても取り上げ、関税が下がっても国内生産量は全く変わらないとの試算を政府が示している点も問題視して、全く変わらないとする根拠をただした。森山農水大臣は関税が最終的に9%まで下がるまでには16年を要するため、国産牛肉の強化対策を講じるうえで十分な時間があり生産量を維持できるし、アジア市場での伸びが予想される旨を答弁した。緒方議員は大幅な関税の引き下げを無効化できるほどの対策とは何かをただしたが、森山大臣は「牛肉の世界を考えてみると和牛は競争力があるので別世界のもの」と述べるとともに、飼料のコスト削減、作業の省力化、自動で餌を与えて規模拡大を進めるなどと、対策とはいえない対策を列挙。「いろんな対策を総合的に進めることが大事」と答弁するだけで、試算の根拠は何ら示されなかった。

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