衆院予算委員会で19日、政治改革・税と社会保障等をテーマに集中審議が行われ、民主党の2番手として階猛議員が質問に立ち、(1)大臣の資質を疑う行動・言動が続く復興大臣・環境大臣らの安倍総理の任命責任(2)指定廃棄物の最終処分(3)基準値を下回る放射性廃棄物の最終処分(4)マイナス金利が被災地を含む地方経済に与える影響(5)用地整備の進捗状況と仮設住宅の退去時期――等に関して安倍総理らの認識をただした。

東日本大震災と阪神・淡路大震災の復興状況等に係る比較表(概ね5年時点)

 階議員は3月11日で東日本大震災発災からまる5年を迎えるに当たり、東日本大震災がどれだけ大きな被害をもたらしたか、あらためて検証する必要があるとして東日本大震災と阪神・淡路大震災の復興状況等に係る比較表(上記)を提示した。こうした被害の大きさにもかかわらず、被災地以外では震災の記憶が薄れ、今なお続く被災地の窮状に思いが及ばなくなり、震災の記憶が薄らいでいることに危機感を抱くと語った。そうしたなかで、国が追加被ばく線量の長期目標としている年間1ミリシーベルトを「何の科学的根拠もない」と発言した丸川大臣、女性宅に不法侵入して下着を盗んだ疑惑がかけられている高木復興大臣、2014年の環境大臣当時に中間貯蔵施設をめぐり「最後は金目でしょ」と発言した石原経済再生大臣など、国民全体が被災地の復興に関心をもってもらえるよう活動する責務を負っているはずがマイナスの影響を与えるような言動が関係大臣から次々起こっていることを非難し、安倍総理の任命権者としての責任を指摘した。

階議員の指摘に丸川大臣は言い訳の答弁

階議員の指摘に丸川大臣は言い訳の答弁

 階議員は1キロ当たり8000ベクレルを超えた放射性廃棄物は指定廃棄物として国が処理することになっており、国がつくる最終処分場で処理するはずだが、宮城県では候補地となった3つの自治体で候補地を返上する動きが出ていることを取り上げた。「なぜ大臣がわれわれの声を聞きに来ないのか」ということで関係自治体と真摯(しんし)に向き合う姿勢が大臣に見えないことが状況悪化の要因でもあるとして、丸川大臣に現地を訪れたかを確認。大臣は県と市町村の意見交換を踏まえて対応していくとの答弁に留まり、階議員は候補地選定にあたっては「今すぐ行かなくてはいけない」と重ねて指摘した。また、井上環境副大臣が 17日に宮城県を訪れ、県内の廃棄物の放射性濃度を際測定した結果、1キロ当たり8000ベクレル超を上回るものが3分の1以下に減ったと知事に報告した件に関連し、8000ベクレル超を下回ったものも今後も引き続き国が責任を持って処理するかを確認。丸川大臣から「国が責任をもって取り組む」との答弁を得た。一方で発災当初に8000ベクレル以下とされた放射性廃棄物処理の処理は市町村の責任のもとで廃棄することとなっていたが、量が多すぎることもあって処理が進んでおらず野積みされているのが実態だと指摘。これらについても国が最終処分場で処理すべきだとして丸川大臣に問題提起し、「そこから(被災地の)信頼回復につとめるよう に強く求める」と丸川大臣にくぎを刺した。

増え続ける日銀の長期国債保有残高

 階議員は「マイナス金利が被災地を含む地方経済に悪影響を及ぼすのではないかと危惧(きぐ)している」と語り、マイナス金利によって(1)中小企業などの借入意欲を高めるどころかマインドを低下させていること(2)金融機関にとって利ざやが縮小していること(3)これまで安定運用先と思っていた国債が危なくて買えない貸し出し難となっていること――などによって地方銀行の経営が厳しくなっているのが実態だと指摘。黒田日銀総裁は、マイナス金利により貸出基準となる金利や住宅ローンの金利等が低下し始めており、政策効果は表れているなどと説明した。階議員は「地域金融機関の現場は今回のマイナス金利を大変不安に思っている。その不安を増幅するようなオペレーションを日銀は行っている」と述べ、「増え続ける日銀の長期国債保有残高」の下図を示し、長期国債のトータル発行残高と、それに占める日銀の保有残高に関して説明し、震災のあった2011年末当時は全体の国債発行に占める日銀の保有残高は9%だったが、昨年末には32.91%となり、このペースで日銀が保有残高を増やしていくと2020年末には68.75%、全体で1千兆円近くの長期国債のうち682兆円を日銀が保有することになることに着目した。こうした日銀の行動を見通しているため投資家は金利や利回りが低くても最後の買い手である日銀がいるからということで安心して国債をどんどん買っているが、これによって相場が乱高下するリスクや、そもそも最終利回りが低いために収益には全く寄与しない長期国債は地域金融機関に負荷をかけるだけのマイナス要因であるのが実態だと指摘。「長期国債の大量買い入れととマイナス金利をセットでやるのはおかしい。異常なやり方」だとして、見直しを黒田総裁に迫った。

PDF「20150219階猛議員配付資料」20150219階猛議員配付資料