衆院財務金融委員会で23日、玉木雄一郎議員が質問に立ち、日銀の金融政策や経済成長の見通しなどについて政府の認識をただした。

量的金緩和政策について

 玉木議員は黒田総裁に対し、日銀の金融政策は今なお「マネタリーベース(資金供給量)を増やすことで期待インフレ率が上がる」という考えに基づいているのかと確認した。黒田総裁は、「マネタリーベースそのもので直ちに予想物価上昇率が上がるということではない」などと、従来より消極的な見方を示した。他方、岩田規久男副総裁は、「マネタリー・ベースを増やすときに、その資産として何を買うかによって影響が違う」などと弁明した。こうした答弁に玉木議員は「マネタリーベースを増やすことで期待インフレ率が上がるという相関関係は崩れており、論理的・実証的根拠が極めて乏しい」と断じた。

 さらに玉木議員は、岩田副総裁が自身の論文の中で1998年から2012年までの日銀の政策について「(物価安定の目標を達成できた)合格率は16%」「会社経営であれば、そういう経営者は責任を取って辞任するはず。(略)しかし、日銀は誰1人として責任を取ろうとしない」などと記述していることを挙げ、「私は今、同じ思いだ。金融政策を担っている人々の発言、政策は世界から信用されるものでなければならない。コミットした期間にその目標を達成できなければ職を辞するというのが責任の取り方だ」と述べ、岩田副総裁の言行不一致を厳しく批判した。

 その上で玉木議員はマイナス金利を導入したことを「金利だけがデフレ状態」と評し、消費者の心理や購買意欲、安心感にマイナスの影響を与える恐れがあると指摘し、また、黒田日銀総裁が「日本は完全雇用の状態にある」との認識を示したことについて「完全雇用状態にあるのならば、過度なインフレ政策をするべきではない」と主張した。あわせて麻生財務大臣が日本経済悪化の原因を「需要不足」と「海外要因」にあるとして金融政策だけで物価上昇させることは困難との認識を示していることを突き付け、日銀に金融政策の再考を促した。

中長期の経済見通しと軽減税率の財源について、他

 玉木議員は、安倍総理が「2020年にGDP600兆円」を目標に掲げたことを「できない」と断じ、その理由として内閣府が作成した中長期の財政試算が「600兆円ありき」で作られたかのような、実態とのかい離があることを指摘した。

 玉木議員は、経済成長には「労働投入」「資本投入」「生産性」の3つの要素があるとし、人口減少社会の日本では労働投入はマイナス要因となるため、資本投入がプラスだったとしても両者は相殺され、生産性をプラスにすることでしか成長しないと解説。その上で内閣府の試算にある成長モデルを見ると、安倍政権下では生産性(TFP)は落ち続けているにもかかわらず、試算上では突如として来年から上昇に転じて倍の伸びを示しているとし、「ありえない」と切り捨てた。

 さらに、この「ありえない」前提で税収見積もりをするという「超楽観ケース」の試算であっても2020年には6.5兆円のプライマリー・バランスの赤字が残ると指摘し、「仮に税収の上振れがあったとしても、軽減税率といった新たな施策の財源に使うべきでない」と主張した。

 このほか玉木議員は、日銀がマイナス金利導入を公表する前に一部で報道されたことについて、どのようにして情報が漏えいしたのかをしっかりと調査し、速やかに結果の公表を求めた。また、税制改正に盛り込まれた3世代同居のためのリフォーム減税について、「3世代同居」が要件とされていないために政策効果の検証ができないことを疑問視し、政府に適切な対応を求めた。

日銀の金融政策や経済成長の見通しなどをただす玉木議員

日銀の金融政策や経済成長の見通しなどをただす玉木議員