衆院予算委員会で16日に行われた2016年度補正予算の質疑で、玉木雄一郎議員が東京オリンピック招致をめぐる買収疑惑についてただした。この問題について「フランスの検察当局が捜査を行っている旨を12日に公式に発表し、英ガーディアン紙をはじめ海外各紙メディアも報道している。まさに日本の名誉に係わる極めて深刻な問題だ」と国際問題化している現状に警鐘を鳴らした。

 まず、玉木議員は疑惑の構造を整理した。「2015年まで国際陸連会長であり、国際オリンピック委員会(IOC)で投票権も持つIOC委員であったラミン・ディアク氏の息子であるパパマッサタ・ディアク氏の親友とされるイアン・タン・トン・ハン氏が経営するシンガポールにある(コンサルタント会社の)ブラック・タイディング社の口座に日本の招致委員会から多額のお金が送金され、それが招致に係わるIOC委員の買収と成功報酬として使われたのではないかという疑惑である」と解説した。

20160516東京五輪招致「買収」疑惑

東京五輪招致「買収」疑惑

 この疑惑への対応について先週、衆院本会議場で民進党の福島伸享議員が安倍総理にただしたところ、「本件に関して早急に東京都及び日本オリンピック委員会(JOC)に確認し、調査するなど事実関係の把握に努める」と明言したことを取り上げ、「その後調査結果がどうなったのか」とただした。これに対して安倍総理は「ご指摘の件については、(オリンピック)招致委員会理事長であった竹田JOC会長が声明を発表し、正式な業務契約に基づく対価として支払いを行ったとの見解を示した。当時の招致活動の具体的な内容については、招致委員会の主体となっていたJOCと東京都が説明責任を果たすべきものであり、政府はスポーツ庁を中心に事実関係の把握に努めていく」と述べ、この問題に対する責任回避に終始した。

 玉木議員は、この疑惑の一番のポイントについて「東京に開催地が決まった2013年9月をはさんで、前後に2回の合計2億円を超えるお金がブラック・タイディング社に送金されている。つまり開催決定の約2カ月前に約1億円振り込まれ、開催決定の翌月に残りの1.3億円が振り込まれている。この決定に係わる極めて近接した時期に多額の資金が移動していることについてフランス当局は捜査を始める1つの理由と掲げて声明を発表した。この送金について、フランス当局や外国メディアが報道しているような疑惑は一切ないと自信を持って言えるのか」と追及した。馳文科大臣が答弁に立ち、IOC委員に関する情報収集強化と対策を練るために必要なコンサルだったが、「(サービスを提供する)ブラック・タイディング社がラミン・ディアク氏と関係していたことを当時の招致委員会は知らなかったと報告を受けている」と述べ、日本側関係者のずさんな業者選定の実態を明らかにした。

仏検察「刑事捜査着手の根拠」

仏検察「刑事捜査着手の根拠」

 招致委員長を務めた竹田恒和JOC会長に対して、7月から9月までの約2カ月のコンサルタント活動に対して2億円を超える対価を支払うと決定したことに関連して「ブラック・タイディング社は具体的にどういう情報収集を行い、業務活動報告し、成果を上げたのか。文書として2億円を超える対価として何らかの報告書があるのか、ないのか」「今般の買収疑惑を受けてブラック・タイディング社又はタン氏に接触し、渡したお金が不正なことに使われていないかを確認したのか」と追及した。これに対し竹田会長は関係書類、契約書の存在を強調したが、「守秘義務事項により契約相手側の確認などの検討を経ずに開示をできるものではない」と述べ、詳しい内容の説明を避けた。

20160516「2億円の送金先はアパートの一室」

「2億円の送金先はアパートの一室」

 情報提供に消極的な答弁を繰り返すJOCの姿勢を受けて玉木議員は、安倍総理に対して「(伊勢志摩)サミット前までにこの件に関する集中審議、並びに招致委員会の水野専務理事、樋口事務局長の参考人招致を求めたい。サミット前までにわが国が独自にしっかり調査をして潔白だということを明らかにすべきだ。本件に係る契約書、活動報告書、ブラック・タイディング社の実績を証明する文書、財務諸表を党首討論を行う18日の正午までに公表するよう促して欲しい」「コンサルタント契約の対価として払ったといっても、その使途が本当に適正だったかについては、日本の名誉を守るためにも、徹底的に日本独自で調査すべきだ」と強く求めた。安倍総理は、「フランス当局が捜査をしているわけだから、馳大臣からJOC側、旧招致委員会側に対してしっかりと協力するよう申し上げている」と述べるにとどめ、真相究明に自らリーダシップを示すつもりがないことを示した。

20160516クリーンだから調査は不要

「クリーンだから調査は不要」