衆院予算委員会で16日に行われた熊本地震災害対策関連の2016年度補正予算の審議で、民進党の5番手として後藤祐一議員が質問に立ち、(1)タックスヘイブン(2)政治家の相続――等の問題を取り上げた。

 後藤議員はパナマ文書に端を発したタックスヘイブンに関して、スターバックス社のイギリス法人が10年間で1度しか税金を払っていないこと、アップル社がアイルランドの子会社に利益を集中させる手法で8兆円近い資産を蓄えていたことなどが判明し米・英議会で議論されていること――等を取り上げた。そのうえで日本国内でもさまざまな租税特別措置を使うことで、税引き前純利益が1480億円だった金融機関グループが2013年に法人税支払額がたった300万円(実質的税負担率が0.002%)だった事例や税引き前純利益が789億円だった通信系企業が法人税支払額500万円(実質的税負担率0.006%)と書籍で紹介されていることに言及した。「大幅な利益を上げているのに納税額が極めて低いのはずるいと思わないか」とただされた安倍総理は「税に対する信頼性を欠く。多くの方々は透明化されている中にあってきちんと税金を払っている」などと答弁した。この答弁をふまえ透明性担保の観点から後藤議員は「民進党は透明性確保の方法として租税特別措置を透明化する法案を何年も提出している」と述べ、この法整備が確立すれば該当する会社がどういう租税特別措置に基づき何年間にわたりいくらの税金を下げたかという実態がわかるようになると説明し、法案成立の必要性を提起し、賛同するよう求めたが、麻生財務大臣は「この制度に至った経過等もあるので一概には言えない」との答弁にとどまった。

後藤祐一議員

 「透明性を増すべきではないか」という点では政治家の相続税の問題もそれに当たると指摘。ある資産が潤沢な人が選挙に出る意思をもって政治団体を設立した場合、政治資金として当該政治団体に集まった寄付は、政治団体の設立者が亡くなり子弟等が引き継いだ場合、相続税が回避できる制度になっていることを後藤議員は問題視した。

 そのうえで、安倍総理が父・安倍晋太郎元外務大臣秘書官となった1982年から安倍

故安倍晋太郎・元外務大臣から指定団体への寄付

故安倍晋太郎・元外務大臣から指定団体への寄付


晋太郎氏が死亡した91年までの10年間に安倍晋太郎氏の3つの指定団体(当時は企業から政治家本人に寄付をし、政治家本人が指定団体に寄付することが合法的に認められていた)に6億4000万円を安倍晋太郎氏が寄付していると説明(上表「故安倍晋太郎・元外務大臣から指定団体への寄付」参照)。また、後藤議員は安倍晋太郎氏が存命した最後の年の90年の政治団体の繰越金総額は5億2千万円程度あったが安倍総理がそれを引き継いで91年末に届け出た額は3億3千万円程度であること(下表「故安倍晋太郎氏系政治団体の繰越金残高の推移」参照)に注目。同時に、安倍総理が相続税を払ったと思われる91年~93年には東京都でも総理の選挙区である山口県でも1000万円以上を払う高額納税者リストには安倍晋三名がないことを指摘するとともに、一般人であれば5億2千万円の現金資産を相続すれば当時の計算式では1億円弱の相続税の支払が必要になることを取り上げ、「これはまさに政治家だけに許された、特に世襲の政治家だけに許された租税回避策だ」と指摘。「政治団体の世襲は認めるべきでない」と語った。

故安倍晋太郎氏系政治団体の繰越金残高の推移


 後藤議員は一連の租税回避策への是正を厳しく行うことで獲得した税金があれば、民進党はじめ野党4党で提出している「被災者生活再建支援法改正案」に盛り込んでいる全半壊した被災者支援額の300万円から500万円に引き上げも可能になるとして、政府としての積極的な租税回避策是正への取り組みを求めた。

PDF「20160516衆院予算委員会後藤祐一議員配布資料」20160516衆院予算委員会後藤祐一議員配布資料