民進党は29日午前、岡田克也代表名で内閣総理大臣・自由民主党安倍晋三総裁に対する以下の「参議院選挙の重要争点に関する公開質問状」を自民党本部にお届けしました。



内閣総理大臣
自由民主党総裁
安倍晋三殿

民進党代表 岡田克也


 日々のご精励に敬意を表します。

 さて、一昨日私から党首討論の開催を申し入れましたが、安倍総裁及び御党にその意義と重要性をご理解いただけず、「選挙をフルで戦っている」との理由で、お断りのご連絡をいただきました。安倍総裁には、是非逃げずに討論を受けていただきたかったのですが、極めて残念です。

 しかし、申し入れの際にも述べましたように、この参議院選挙の重要争点について、未だ議論が深まっているとは言えません。そこで、選挙応援でご多忙な安倍総裁にご回答いただけるよう、書面にて質問させていただきます。18歳、19歳の若者たちを含む国民・有権者の皆様に投票の判断材料を提供するため、安倍総裁及び御党の誠意あるご対応を強く求めます。

 なお、投票日までの時間が限られていることに鑑み、明30日中に書面にてご回答願います。また、本質問状及びご回答は、報道機関への公表、民進党ホームページ等への掲載等広く公表させていただきますので、あらかじめご承知置きください。



1 経済

  1. 安倍総裁は、昨日の経済財政諮問会議で、経済対策の取りまとめを指示したと承知しています。私も一定の経済対策は必要だと考えていますが、それは公共事業や一時金のバラマキなど従来型のものではなく、子ども・子育てや教育、雇用など人への投資、年金や介護など社会保障の充実、そして、貧困や所得の格差是正といった「分配と成長の両立」を実現するための経済対策であるべきです。安倍総裁が考えている経済対策の柱はどういったものでしょうか。また、安倍総裁は「赤字国債は無責任」と再三発言していますが、経済対策の財源をどうするのか、その規模も含め、概略をご説明ください。
  2. 英国のEU離脱問題に伴う株価の大幅下落に伴い、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が運用する140兆円の年金積立金への不安が高まっています。すでに2015年度は5兆円の損失が見込まれていますが、これが更に拡大するとの指摘がなされています。最悪の場合には、「想定の利益が出なければ、当然、支払いに影響する」との安倍総理答弁のとおり、将来の年金給付額の引き下げにもつながりかねません。政府は、参議院選挙後の7月29日に予定されている運用実績の公表を、例年通り7月上旬に前倒しするとともに、英国の国民投票後の損失見込みについても速やかに公表すべきです。また、安倍政権になって24%から50%に倍増した株式の運用比率を引き下げるべきです。安倍総裁のご見解を伺います。

2 社会保障

  1. 安倍総裁は、消費税の引き上げ再延期に伴い、来年4月に予定されていた社会保障の充実のすべてを実施することはできない旨述べています。しかし、自らの経済失政を理由に国民との約束を2回も延期し、4年もお待たせするというのはあまりに理不尽であり、私は約束どおり、来年4月から実施すべきと考えます。また、安倍総裁が社会保障の充実の何を実施して何を実施しないのか、未だに明確にしていないことも問題です。例えば、低年金者への年額最大6万円の上乗せ給付金や低所得高齢者の介護保険料の軽減は実施するのかしないのか、また、実施するならその財源をどう確保するのか、明確にご説明ください。
  2. 安倍総裁は、「赤字国債に頼らない」と繰り返していますが、消費税引き上げ分の使い道は、社会保障の充実が2割、残りの8割は将来世代への負担ツケ回しの軽減、つまり赤字国債等借金の減額に充てることになっています。しかし、8%から10%への引き上げを2年半先送りすることで、約10兆円(年約4兆円)の借金減額ができなくなります。「赤字国債に頼らない」ということであれば、この10兆円の財源をどうするのか、明確にご説明ください。

3 憲法

  1. 安倍総裁は、今年の年頭総理会見で、憲法改正について「参議院選挙でしっかりと訴えていく」、「そうした訴えを通じて国民的な議論を深めていきたい」と明言していました。国会でも、何度か踏み込んだ答弁がありました。しかし、いざ参議院選挙になると、党首討論会では議論すら避け、街頭演説でも全く触れていません。安倍総裁の対応は、国民・有権者に対してあまりに不正直です。参議院選挙で訴えるというのは、嘘だったのでしょうか。明確かつ誠意あるご説明を求めます。
  2. 安倍総裁は、6月24日のテレビ党首討論会において、「9条(改正)は現状では厳しい」と発言しました。しかし、1月にはNHK番組で「改憲を考えている責任感の強い人たちと、3分の2を構成していきたい」と述べ、3月の国会では「在任中に(憲法改正を)成し遂げたい」と答弁しています。一方で先日のテレビでの討論会で、総理は「9条は現状では厳しい」と発言されました。これは、9条改正に向けて現在の認識を述べたものなのか、それとも任期中の9条改正を断念したとの趣旨なのか、明確にご説明ください。
  3. 私は、日本国憲法の平和主義とは、侵略戦争を禁じているだけではなく、「専守防衛」「海外で武力行使をしない」という積極的な意味があると考えています。しかし安倍総裁は、日本国憲法の平和主義とは単に侵略戦争をしないことだと述べています。安倍総裁の考え方に沿って憲法9条を改正し、国際標準の集団的自衛権を認めれば、例えば、国際社会が「侵略戦争」とみなしていない9.11後のアフガニスタン戦争やイラク戦争に自衛隊が参加し、米軍とともに武力行使することも可能になるというのが当然の帰結ですが、安倍総裁のご見解を伺います。

4 政治とカネ

  1. 甘利前経済財政担当大臣と舛添東京都知事の政治資金をめぐる問題は、国民の政治不信を一層増すこととなりましたが、二人とも未だに説明責任を果たしていません。言うまでもなく、閣僚や知事を辞任しても、国民・都民に対する説明責任は免れません。甘利大臣は安倍内閣の重要閣僚であり、舛添知事は与党が主導して誕生させた知事でした。安倍総裁は、二人が説明を尽くすよう、今後どのように指導力を発揮しようとしているのでしょうか。安倍総裁のご見解を伺います。

以上

PDF「安倍総裁宛公開質問状(2016年6月29日)」安倍総裁宛公開質問状(2016年6月29日)