衆院予算委員会で30日、2016年度第2次補正予算の基本的質疑が行われ、民進党の6番手として質問に立った福島伸享議員は、輸入米の売買同時入札(SBS)の価格偽装問題について取り上げ、補正予算審議中に調査結果を提出したうえでTPP関連の補正予算の審議を行うべきだと強く求めた。

 卸売業者が輸入業者から「調整金」を受け取ることで、実際には国が設定する公定価格より安く市場に流通させていたことが明らかになった輸入米の価格偽装問題をめぐっては、農林水産省が取引業者間で支払われる「調整金」の存在を把握したとされる2014年10月に、担当者がSBSでの輸入価格を高値に偽装する手法を詳細に記した資料を入手していたにも関わらず放置していたとの報道もある。

SBS方式
SBS方式について

 福島議員は、「マークアップ(輸入差益)を設けることで、ある程度国産米と近い価格にし、国産米に影響を与えないように輸入するもの」「国は予算決算及び会計令という政令に基づき、輸入業者から国が買い入れる予定の売り渡し予定価格を設け、これ以上高い値段では国は買うことはできない。一方、国が卸売業者に卸すときは売り渡し予定価格を設けており、それを下回るお金で国は売ることはできない。そのなかから、マークアップが高い順から入札していく」とSBS方式について解説したうえで、この問題の事実関係を確認。

 これに対し山本農林水産大臣は、「調整金のある契約が存在したことは事実」と答弁。調整金の存在について農水省が知ったのが2014年10月であったことも認め、「民間事業者間の問題とはいえ、輸入業者から卸売業者に金銭の授受が行われた。この授受を原資とした市場価格の安値誘導していることがあったならば問題だ」と述べた。

国産米の価格と米国産SBS価格との比較

国産米の価格と米国産SBS価格との比較

 農水省は従来、国産米の価格と米国産SBS価格を比較して、これらがほぼ同じ価格で推移していることを理由に「コメの輸入を増やしても国内米の需給に大きな影響はない」と説明してきた。しかし、この米国産SBS価格は公定価格であり、調整金があるのであればSBS政府売り渡し価格はもっと安値であることになる。福島議員は、「民間の問題ではない。今までの政府の農政の根幹であるコメの価格が変わることによって農政が根本的に変わらざるを得ないところが最大の問題だ」「国産米と輸入米が同じ値段だったら国産米を買う。それなのになぜ輸入米が売れているのか疑問だったが、ここで謎が解けた。調整金というものがあって、農林水産省が出している価格と実際の取引の価格が全然違ったことが分かったことでTPPの試算は全然変わる」と断じた。

 山本農水大臣は調査中であることを理由に安値誘導の可能性について言及を避けたが、福島議員は、「報道にあるように、仮に1キロ当たり60円程度の調整金があり、価格が下落したとすると、TPPにより新たにコメ輸入枠として7万8400トンが入ってくるとコメの生産額は3600億円減少するとの試算がある」と紹介。補正予算のTPP対策費約3400億円ではとても足りないとして、「調査結果の全容が明らかになったうえで試算の見直しが必要かどうかを検証し、その試算結果に基づき予算のあり方を考えるべきだ」と主張、補正予算の審議中に調査結果を提出するよう要求した。

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TPP再試算を求める福島議員

TPP再試算を求める福島議員