衆院予算委員会で3日に行われた2016年度第2次補正予算に関する2日目の基本的質疑で、玉木雄一郎議員は年金とGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の問題を取り上げ、政府の見解をただした。

年金積立金の運用損

 安倍政権は2014年10月、GPIFの運用計画を見直し資産構成(ポートフォリオ)を変更、株式比率を24%から50%に倍増して株式運用を拡大した。玉木議員は、運用見直しにより2015年度は約5.3兆円の運用損、今年4-6月期は約5.2兆円の運用損となり、15カ月で10兆円以上の運用損を出し、株式運用を拡大した14年10月以降の累積でも赤字になっていると指摘。15年度の運用損については、例年と比べて遅い参院選挙後になって運用結果が公開されたことに加え、こうした結果に対して誰も責任を取る仕組みになっていないと問題視した。

 また、GPIFの理事長の報酬が昨年1月に年間2148万円から3130万へと約1千万円引き上げられ、99ある独立行政法人のなかで最高水準になっていることをめぐり、運用損を出していながらの報酬引き上げについて主務大臣の塩崎厚生労働大臣が「妥当な報酬水準だ」と発言していることについて、「国民の納得が得られると考えられるか」と安倍総理の見解をただした。これに対して安倍総理は「理事長の報酬は、国際標準的に見なければ有能な人材は集まらない時代だ」などと答弁、全く問題ないとの認識を示した。

年金を減らす新ルール

 年金制度をめぐっては、政府が先の通常国会で提出し、継続審議となっている年金制度改革関連法案では、賃金や物価の改定率よりも緩やかに年金の給付水準を調整する「マクロ経済スライド」を見直し、物価が上がっても賃金が下がった場合、今年金を受け取っている人の受給額を引き下げることを可能としている(現行ルールではゼロ改定)。

増え続ける高齢者の生活保護

 民主・自民・公明の3党による社会保障と税の一体改革を引き合いに、「デフレ下のケースとして、現役の人たちに過度なしわ寄せ、将来もらう年金があまりにも少なくならないようにするための仕組み」だと強弁する塩崎厚生労働大臣に対し、玉木議員は「デフレ下の調整をどうするかは大事だが、物価が上がっても賃金が下がる時に、今現在年金をもらっている高齢者もその年金を引き下げるのは、年金が持つ最低保障機能を弱めてしまうのでどうなのかという慎重な議論を長年にわたって積み上げてきた。今回、躊躇なく物価が上がっても年金をカットするという法案を出しているのは問題だ」と批判した。

 全生活保護受給世帯のなかで65歳以上の高齢者世帯の割合が50%を超え、そのうちの9割は1人世帯であることにも触れ、「年金財政の均衡を図っていくことは大事だが、年金の持つ最低保障機能の強化を合わせて考えなければ結局生活保護ということになれば年金制度の信頼性さえ揺るがしかねない。年金カット法案をやるなら消費税10%引き上げの際に予定されていた低所得者に対する年金の加算を予定通り来年4月からやるべきだと提案した。この提案に対して安倍総理は、「恒久的なものについては恒久的な財源を得て行いたい」とこれを否定した。

 玉木議員は「われわれもスライドを強化していくことも考えたが、低所得者対策とセットだからやろうとした。低所得者対策を欠いたまま単に機械的に年金を下げていけば生活が成り立たない高齢者が増え、結果として国家財政を圧迫していくことになるのではないか。2013、2014、2015年度の公共事業の未消化額が毎年2兆円ある。そのうちの3分の1を査定すれば毎年5、6千億円財源を捻出し対応することは可能ではないか。これは政治の意思だ。アベノミクスは国民の期待を高めたが、株価を無理やり上げるために年金積立金を株式市場に突っ込み失敗し、マイナス金利で年金や生命保険が国債で資産運用することを極めて困難にした。賃金が上がるどころか下がり、困った揚げ句年金カット法案を出してくる。アベノミクスは年金と年金生活者の敵だと言わざるを得ない」と断じた。

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玉木議員