参院TPP特別委員会で15日、TPPとわが国の経済・国民生活等に関する集中審議が開かれた。民進党・新緑風会の1番手として質問に立った田名部匡代議員は、(1)TPPによる影響額の試算(2)TPP総合対策(3)体質強化対策(4)農林水産物輸出への取り組み――等について取り上げ、政府の見解をただした。

 田名部議員は冒頭、自民党の佐藤正久議員が同委員会で南スーダンに関する質問したことに言及、「ここはTPPに関して議論をする場だ。最低限のルールを守り合っていい議論をすべきだと思う。佐藤議員には猛省を促したい」と苦言を呈した。

 そのうえで田名部議員は、今回のTPPに対して農林水産業に携わる人々が不安に思う大きな理由の1つに、政府が出した影響額の試算の甘さがあると指摘。TPPの農林水産物への影響について、47都道府県のうち38道府県が地域別の試算を行い、コメの価格をめぐっては9県が影響を受けるとの結果を出している。これについて斎藤農水副大臣は「青森県をはじめ一部の県では特定の銘柄のコメの価格とSBS米とを比較し、当該県産のコメの価格が下がるという仮定をし、影響を試算している。政府としては、SBS米の輸入が増えることにより価格に影響が出るとは考えていない」と強弁。これに対して田名部議員は「加工や流通と2次、3次で他県との経済取引があれば他県からの影響など幅広い影響を受ける。(政府は)体質強化をするから大丈夫だというが、試算をもっと丁寧に出し、それぞれの地域別にやらなければならない的確な対策、財源の確保を国として責任をもってやってほしい。全体から見たらわずかな影響額かもしれないが、その地域にとっては死活問題だ。だから入口の影響額の試算は大事だ」と訴え、試算の出し直しを求めた。山本農水大臣は「この試算で十分」とこれを拒否した。

 田名部議員は、政府が掲げる「TPP対策」「体質強化策」は特別なものではなく、日本の現状を踏まえればすでにやっていなければいけなかったものや、これまでもやってきたがなかなか成果が出なかったものも含まれていると指摘。政府がこうした対策を講じることで「所得も減らない」「食料自給率も減らない」「生産量も減らない」と主張するのは不誠実だと断じた。

 「TPPに関係なく今の日本の1次産業の現状は厳しい状況にあり、立て直さなければいけない状況になっているのではないか」と提起。経営能力のある担い手育成事業として、特に民主党政権時代に立ち上げた、青年就農給付金制度について現状を尋ねた。

 これに対し山本農水大臣は「2015年の49歳以下の新規就農者は2万3千人を超えた。過去7年を振り返っても最大の伸び率、就農者になっている。新しい施策の成果が徐々に上がってきているのではないか」と答弁。だが田名部議員は、新規就農者へのアンケートでは1位「所得が少ない」が60%、2位「技術が未熟」が48%、投資資金不足、運転資金不足、労働力不足と続いているとして、「就農して生計が成り立っているのは3割しかいない。担い手を継続的に育てていくためには就農後の対策が必要だ」と説いた。

 戸別所得補償制度の廃止について「課題もあるのではないか」と正当化する山本農水大臣に対し田名部議員は、「農家が継続的に経営を続けていける、そこに後継者が育っていく。そういう制度をつくることが大事であり、どの政権がつくったということはどうでもいいことだ。所得補償制度は非常に高い評価を受け、なんとか維持してほしいという声がある。問題があるのであればそこを見直していけばいいだけの話。それを廃止して生活を壊すことになったら地方、生活は守れない。生産コストをしっかりした下支えする制度が必要だ」と主張。直接支払い制度を維持し日本の農業を守っていってほしいと求めた。

田名部議員