衆院議員 長島昭久(ながしま・あきひさ)

 私は臨時国会閉会後の12月19日、鷲尾英一郎、青柳陽一郎両衆院議員、大野元裕参院議員と米国のワシントンを訪れ、ドナルド・トランプ次期大統領の政権移行チーム中枢と意見交換を行ってまいりました。

 今回のワシントン訪問で私たちが得た印象を一言でいえば、トランプ政権の誕生は、ポスト冷戦時代の終わりを意味するということです。彼の「アメリカ・ファースト」外交は、例えば人権や民主主義という普遍的な価値と、経済的な実利や地域紛争の収束など当面の目的とを、平然と両てんびんにかけて来るでしょう。私たちは今、世界の先進国に渦巻くグローバリズムに対する懐疑と怨嗟(えんさ)の声とともに、力(パワー)を前面に押し出す中国やロシアの台頭、そして「国益のためなら何でもあり」のトランプ政権を前にして、より複雑な戦略的「連立方程式」を解く覚悟を持たねばなりません。

■トランプ政権での「アメリカ・ファースト」主義

 トランプ政権の外交政策の特徴は、以下の3つに集約できます。

 第1に、新政権によって指向される「新たな国際秩序」は、大国間の力の均衡や調整を通じてダイナミックに形づくられていくことになるでしょう。トランプ氏は選挙中からIS打倒を強調して来ましたが、それは中東を安定化することにより限られた資源をアジア太平洋正面に集中させようとしているからです。そのためには、ロシアともシリアの独裁者アサドとも大胆に手を組む選択肢を排除しません。それに対し、日本が既存の国際法やルールの順守を声高に叫ぶだけでは太刀打ちできません。

 第2の特徴は、オバマ政権が主導した多国間の自由貿易協定や気候変動への取り組みを根底から覆す可能性です。TPPからの離脱はもとより、石油王のレックス・ティラーソン氏を国務長官に起用するのをはじめ、環境・エネルギー関連の主要閣僚に地球温暖化規制反対の急先鋒を指名したことから、エネルギー安全保障での「アメリカ・ファースト」は明らかです。

 第3に、同盟国や友好国との関係でも惰性や妥協を許さないでしょう。それは、西の要であるNATOも、東の要である日米同盟も例外ではありません。日本に対しては、米軍駐留経費負担やわが国の防衛努力についての厳しい姿勢とともに、アジア太平洋地域の平和と安定をめぐり、日本が果たすべき安全保障上の役割拡大についてもかなり具体的な要望を突き付けてくるでしょう。

■「活米」でリアリズムに立脚した外交・安保政策の確立

 いよいよ日本が真の意味で「自立」する時を迎えたと言えます。それは、「自分の国は自分で守る」などという精神論にとどまる話ではありません。日米同盟についても、米国からの注文に応える下請けのような姿勢ではもはやすまされず、むしろ、自国の長期的な国益と地域の平和と安定、国際秩序の在り方を主体的に考え抜き、わが国独自の地政戦略に基づいて、米国を「活用」(筆者は、これを「従米」でも「反米」でもなく「活米」と呼ぶ)するしたたかさを持たねばなりません。

 まさしく、安倍政権に代わるリアリズムに立脚した外交・安全保障政策の確立が求められるゆえんです。


(民進プレス改題20号 2017年1月20日号より)

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