参院本会議で14日、「日・米物品役務相互提供協定」(日米ACSA)、「日・豪物品役務相互提供協定」(日豪ACSA)、「日・英物品役務相互提供協定」(日英ACSA)――の3協定承認案の採決が行われ、与党などの賛成多数で承認された。

 ACSA協定は特定の国の軍と自衛隊の間で物品及び役務の提供の枠組みを事前に一括して定めるもの。採決に先立ち大野元裕議員が反対の立場から討論を行った。

 大野議員は冒頭、「ACSA協定が新しいものとなろうが、国会承認が得られずに既存の協定に戻ろうが、その運用のほとんどは防衛大臣の下、自衛隊によって行われることになると理解する。しかし、稲田防衛大臣は国会での答弁を二転三転、記憶違いに虚偽答弁と続けているため、南スーダンからの施設部隊撤収、米国によるシリア空爆や、北朝鮮の暴挙に引き続く朝鮮半島情勢の緊張等が見られる中、外交・安全保障上国会が果たすべき役割がこれまでになく大きいにもかかわらず、大臣の答弁一言一言が正しいのか、虚偽なのかと吟味しながらの審議となった。ACSAを運用する自衛隊に対するシビリアン・コントロールを確固たるものとして発揮できずにいることに加え、日報隠ぺい疑惑では、過ちがあれば大臣の名前で処分を行う立場にあるにもかかわらず、自らは虚偽の答弁をしても責任すら取らないでおり、自衛隊の大臣に対する信頼は地に落ちているといわざるを得ない」と指摘。「安全保障上極めて重要な時期にあるからこそ、喫緊の課題の審議を充実させ、万が一の事態に国会が大臣の発言を信頼して議論できるような環境を整備するためにも、政府に対しては稲田大臣を直ちに更迭するよう求める」と訴えた。

 ACSA協定について大野議員は、「民主党政権時代にも日米ACSAは活用され、また日豪ACSAの締結に向けて具体的な準備を進め、その基本的な柱建てを議論してきた。この意味で民進党は、米国や豪州等、一定の国との間でACSA協定の締結を推進していくこと自体には賛成」だと前置きした。しかし、「今回の日米ACSAにはわが党が反対してきた安保法制における存立危機事態及び重要影響事態が明記されている」と問題視した。「これまで民進党は正式な党の合意の中で、集団的自衛権の行使が違憲であると断言したことは一度もない。しかし、その一方で制約のない集団的自衛権の行使を憲法上認めることはできないとの考えの下、憲法の便宜的・恣意的解釈には一貫して反対してきた。一昨年の安保法制は、主として自衛隊を遠くに派遣し、米軍の下請けにするものであり、わが国の安全を直接支えるものではない。わが国の直接の安全保障に対し貢献しない安保法制で、遠くで他国軍の下請けにするための事態を新たに日米ACSAに書き込んで、改正を行うこの協定案には賛成できない」と表明した。


PDF「参院本会議 大野元裕議員ACSA反対討論最終稿」参院本会議 大野元裕議員ACSA反対討論最終稿