第3分科会では「日本の農業の分岐点――TPP以後の通商交渉と農業改革の行方」と題し、3人の講師をお招きした。

 東京大学名誉教授で東京農業大学農学部教授の谷口信和先生は「アベノミクス農政の問題点と地域農業を考える」と題し講演。「アベノミクス農政は規制改革会議が機能しておらず、規制緩和と競争強化の一点突破主義の農政になっている所にあり、その証拠に日本農業新聞が行った意識調査アンケート結果を見ると、官邸主導の傾向が強まっている政策決定のあり方についての問いには75.4%が評価できないとしている。これらの調査結果を見ると国民はいい政策を打ち出せるかと言うことも重要だが、その政策をいかに実現できるかと言う実行力が求められている」と説明した。他にも民主党農政へのリベンジ的性格、新自由主義路線の強化、個別経営体に対する視点が先行し、地域農業の視点が希薄であることなどを指摘した。

 早稲田大学政治経済学術院名誉教授で日本農業経営大学校校長の堀口健治先生は「あるべき通商政策と国内経済、国民に利益をもたらすことが必要」と題して講演。「政治に引きずられたTPPからアジア重視、互恵戦略に回帰すべきだ。そもそも日本は東アジア共同体を念頭に議論をしていた時に、日米関係重視のTPPが突如担ぎ込まれた。これは貿易政策が政治的意図で強引に変えられ、その影響は大きいと無理な説明がなされた」「トランプ大統領が就任後その状況は変化し、もう一度、日中韓の相互依存、妥協できる自由化の程度を探るべきであり、その方がお互いのGDPの増加にはるかに効果がある。デフレに泣いた代表産業である農業は価格交渉力の強化とコスト削減で生産農業所得の割合を引き上げるとともに、収益性を高め、輸出を含めた国産農産物の販売先を広げ持続的な農業経営の展開・食料自給率押し上げが期待される」と語った。

佐々木隆博衆院議員

佐々木隆博衆院議員

 モデレーターを務めた元農林水産副大臣の佐々木隆博衆院議員は「日本の外需依存度は非常に低く、貿易立国とは言うが実のところ外需依存度は14~15%であり、そのほとんどが国内循環であり、日本はTPPのメリットがないにもかかわらずここまでやってきた」「1999年に食料・農業・農村基本法が制定された。それまでの農業基本法のテーマは選択的拡大と構造改革であり、その柱では結果的に農村は豊かにならなかった。新しい基本法では地域と一体となって、また、食の安全性と一緒になって農業と言うものを発展させなければいけないと言うヨーロッパ型の新しい基本法を目指したが、第2次安倍内閣の時に昔の基本法の流れに戻っており、農業が豊かになれば農村が豊かになると言う昔の考えに戻っている。これが今の農政の最大の間違いだ」[今の政府は地域政策と農業政策は車の両輪と説明するが、民主党政権時に作った個別所得補償は所得の中に全て組み込む一体型だった。地域政策と農業政策を切り離し車の両輪であると言うが、片方の車輪が大きく、片方の車輪が小さい状況の中で、そのような車が前へ進むのかというところに問題があるのではないか」と述べた。

 参加者を交えた質疑応答では、「農業に専門的知識のある地方議員が少なくなっている」「農業専門の農業当事者の全国ネットワークを構築すべきだ」などの意見も出された。