都市と地方の現状と民進党の取り組み


それぞれの地域が 抱える固有の課題を掘り下げる

 全国の都市と地方がどのような地域固有の課題を抱え、その解決に向けた方策としてはどんな手立てがあるか。ブロック常任幹事に地域の実情と課題について考えを寄せてもらった。

逢坂誠二(おおさか・せいじ)ブロック常任幹事・衆院議員

逢坂誠二(おおさか・せいじ)

ブロック常任幹事・衆院議員

【北海道】再生の鍵は地域資源の有効活用と特色ある教育

 北海道は全国を上回るスピードで、人口減少や高齢化が進み、医療・福祉・教育・商業など暮らしに必須な機能の低下、集落消滅の危機など、深刻な状況となっています。またアベノミクスも空振りとなり、地域経済の疲弊、自治体財政の悪化、雇用機会の減少など、地域経済にも明るい材料が見当たりません。特に基幹産業である第一次産業は、担い手不足に加え、水産資源の縮小など、極めて厳しい状況です。泊や大間原発の動向も大きな不安材料であり、さらにJR北海道は多くの路線を独自で維持できないことが判明するなど、地域交通の確保も大きな課題です。
 北海道の再生の鍵は、地域資源の有効活用です。豊富な第一次産品の六次産業化による地場流通。太陽光、風力、水力、地熱など豊富な自然資源を利用した再生可能エネルギーの先進地となること。北海道の特色を生かした地産地消を基本とする内発的で具体的活動が必須。人口減少を逆手に取った少人数 による特色ある教育も  北海道再生の鍵です。

階猛(しな・たけし)ブロック常任幹事・衆院議員

階猛(しな・たけし)

ブロック常任幹事・衆院議員

【東北】付加価値生産性の向上と海外需要の取り込み等が鍵

 東北ブロックは、若者の首都圏などへの流出もあり、全国で最も早いスピードで人口減少が進んでいる地域です。
 このため、今後、需要の縮小と労働力不足が経済活動の停滞を招き、行政サービスの維持が困難となる恐れがあります。
 東日本大震災と原発事故についても、復興事業の遅れに加え、風評被害により農水産品の販路拡大やインバウンド観光が伸び悩んでいる状況です。
 さらには、広大な面積と交通網の脆弱(ぜいじゃく)性により、地域間の連携が不十分であるという課題もあります。
 これらの解決に当たっては、・付加価値生産性の向上で雇用の創出と所得水準の向上を実現すること・ILC(国際リニアコライダー)誘致など国際的プロジェクトに取り組むことで地域の存在感を高め、海外需要を取り込むこと・交通、情報インフラの整備により地域内交流を加速すること|等が必要です。
 これからも「東北の復興なくして日本の再生なし」を合言葉に、東北ブロック議員団一丸となって、課題解決に全力で取り組んでまいります。

長妻昭(ながつま・あきら)ブロック常任幹事・衆院議員

長妻昭(ながつま・あきら)

ブロック常任幹事・衆院議員

【関東】日本型社会保障モデルを確立する

 関東地域は、わが国の政治・経済・文化の多くの部分を担ってきました。グローバル化が進み、国際的な都市間競争・地域間競争が高まる中で、これまで以上に魅力的な地域にしていかなければなりません。教育の無償化による人材の底上げや女性の活躍促進など「人への投資」に取り組み、世界に向けた情報発信を担う人材の育成を進めていきます。
 一方、巨大な人口を抱える関東地域の少子高齢化は喫緊の課題です。特に東京、南関東ブロックの神奈川・千葉、北関東ブロックの埼玉では、今後、急速に高齢化率が上がっていきます。困難な問題ですが、日本型の社会保障モデルを確立するチャンスでもあります。保育・介護従事者への支援や働き方改革を通じた「支えあいを支え
る」取り組みを進めます。北関東ブロックの栃木・群馬・茨城、
南関東ブロックの山梨では、人口減少が続いています。農業の6次産業化やエネルギーの地産地消を進め、各地域の特色を生かした「しごと」をつくる取り組みを進めます。

大塚耕平(おおつか・こうへい)ブロック常任幹事・参院議員

大塚耕平(おおつか・こうへい)

ブロック常任幹事・参院議員

【東海】日本経済の牽引力の維持・向上が課題

 愛知・三重・岐阜・静岡4県の東海ブロック。日本経済を牽引する観点からは、裾野の広い自動車・航空宇宙等の牽引分野の競争力強化が鍵。創造力のある中堅・中小企業及び技術者等の人材育成が課題です。インフラでは、リニア及び第2東名の建設等、産業と生活を支えるビッグプロジェクトの完遂が必達。もちろん、各県固有の課題もあります。岐阜は農業の6次産業化や高山等の観光振興。愛知・三重・静岡の農林漁業の規模も小さくなく、第1次産業振興策に腐心しています。海に面する愛知・三重・静岡は南海トラフ三連動地震対策も重要な課題。さらに、各産業分野を支える勤労者、生活者が働きやすい、暮らしやすい環境を維持向上させることが、日本経済を支える東海ブロック共通の課題です。岐阜県山間部や三重県南部などの中山間地を中心に高齢化・過疎問題も深刻化しています。地域医療や介護サービス等の充実も課題です。各県各級議員団は、それぞれの議会や地域で、課題に向き合い、全力を尽くしています。

風間直樹(かざま・なおき)ブロック常任幹事・参院議員

風間直樹(かざま・なおき)

ブロック常任幹事・参院議員

【北信越】農業に持続的に従事できる環境整備を

 「猫の目農政」と揶揄(やゆ)され、2~4年ごとに内容を変化させてきた自民党政権による生産調整が来年廃止に。規模の拡大や他作物への転換など稲作農家は苦渋の選択を迫られています。農業競争力の強化だけを目指す方針は地域にさまざまなゆがみを生んでいます。
 米消費の減少に加え、他国との交渉に伴い輸入数量が拡大すれば、稲作は崩壊するのではないかとの危機感。さらに、生き残りをかけた価格・ブランド競争の激化、担い手不足など、現場の不安は頂点に達しています。
 「TPPについて正確な情報を伝えてほしい」「農業を理解してくれる国会議員はいったい何人いるの?」など、各地のJA、生産者を回る中、そうした声を耳にします。生産現場と真摯(しんし)に向き合う姿勢と、対話の積み重ねが求められます。
 農業者戸別所得補償制度を再び求める声も根強い中、これを法制化し、持続的に農業に従事できる環境を整備したいと考えます。

岸本周平(きしもと・しゅうへい)ブロック常任幹事・衆院議員

岸本周平(きしもと・しゅうへい)

ブロック常任幹事・衆院議員

【近畿】新自由主義と決別し、地方に寄り添う

 大阪中心の近畿経済圏は大阪経済の地盤沈下の影響を受け、程度の差はあれ、経済の停滞に苦しんでいます。吉本興業まで本社を東京に移しました(苦笑)。所得の格差も広がり、有権者の皆さんには半ばあきらめにも似た感情が芽生えています。そこに、大阪維新という新しい政治勢力が現れ、改革政党の期待感を身にまとい大きく飛躍したわけです。一方、民進党への期待感はゼロというより、もはやマイナス。「お前ら、まだおんのか? 早よ、去ね!」というのが、街頭でのいつわらざる声です。選挙には期待感が重要です。党の名前や党の顔を変えても効果はありませんでした。状況は考えていた以上に深刻です。アベノミクスに代表される新自由主義と決別し、人口減に直面し疲弊する地方に寄り添う政党として、解党的出直しを図るしかありません。問題は、党内にこのような危機感が共有されていないことです。選挙基盤の弱い近畿ブロックだからこそ、党改革の声を上げていきます。

高井崇志(たかい・たかし)ブロック常任幹事・衆院議員

高井崇志(たかい・たかし)

ブロック常任幹事・衆院議員

【中国】地域の問題を地域資源で解決する

 中国ブロックは日本海と瀬戸内海の2つの海に囲まれ、豊富な森林資源を有する地域です。この特色を活かし、鳥取・島根では、国内最大級営農型メガソーラーや、大規模風力発電が稼働しています。
 私の地元岡山県にある真庭バイオマス発電所では、木屑や生ごみまで再利用出来るほか、地域に雇用も生まれ、森林所有者にも収入が入る、まさに「いいことばかり」。エネルギーの地産地消として注目を集め、視察者は2万人を超えるほどの先駆的モデルです。私は、このモデルこそ、地域が抱える問題解決に寄与すると考えています。
 そこで、今、民進党エネルギー環境調査会省エネ・再エネチームでは、「分散型エネルギー社会実現のための省エネ・再エネ拡大9法案」を取りまとめています。これは、省エネを促進しつつ、地域の資源を使い、エネルギーを生産し、地域でお金が回り、地域が豊かになる社会を作ることを目指す法案です。
 地域の問題を地域の資源で解決する。これらの取り組みを、国がしっかりと下支えする法案作りに力を尽くします。

横山博幸(よこやま・ひろゆき)ブロック常任幹事・衆院議員 

横山博幸(よこやま・ひろゆき)

ブロック常任幹事・衆院議員 

【四国】新しい人の流れを地域内に根付かせる

 四国地方は風光明媚な地域であり、幕末には四賢侯のうち伊達宗城、山内容堂の2人を輩出し、わが国近代化の礎の一端を担った地域でもあります。
 その四国は、現在さまざまな課題を抱えています。太平洋沖には南海トラフが走っており、今後30年以内の地震の発生確率が70%程度にまで上昇、震度7の揺れと巨大津波の脅威は刻々と増しています。そのため防災拠点施設や避難路・避難所の整備など防災・減災対策を加速化することが急務です。
 また、少子高齢化、人口減少が深刻な四国地方を活性化させるためには、わが国を代表する巡礼「四国八十八箇所霊場と遍路道」を世界遺産候補として暫定一覧表へ追加記載することや消費者庁、造船業をはじめとする研究機関・研修機関など政府関係機関の四国各県への移転、「四国新幹線」等インフラの整備などにより新しい人の流れを四国地域内に根付かせることが必要です。

野田国義(のだ・くによし)ブロック常任幹事・参院議員 

野田国義(のだ・くによし)

ブロック常任幹事・参院議員 

【九州】牽引分野の前進へ産学官のさらなる連携強化を

 2016年熊本地震の発災後、熊本・大分両県内の自治体をサポートし、生活再建と地域経済の復興に向け、九州ブロック議員一同、全力で取り組んでいます。
 経済規模で見る九州は、輸出額や域内総生産額等で「わが国の1割経済」と称される一方で、九州7県と沖縄県での国会議員の割合は、党全体の8%に留まり、国会議員の不在県も存在するなど、国・地方ともに空白区の解消が課題です。
 また、クルーズ船寄港増にも見られるように、「アジアへのゲートウェイ」として、留学生の比率も全国的に高く、国の施策も、戦略分野を環境・エネルギーや観光、農業、半導体・自動車といった牽引分野に見出しており、産学官の連携強化のため、イノベーションの創出や対日投資や人材拠点づくりなど、規制緩和や制度改革において政治への期待が大きいと考えます。
 政府・与党の強引な普天間移設問題、オスプレイ配備計画、諫早湾干拓事業問題、玄海原発の再稼働、九州新幹線長崎ルート計画などは、引き続き政府から国民への丁寧な説明と対話を求めていきます。

(民進プレス改題26号 2017年6月16日号より)

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