国家戦略特区による学校法人「加計学園」の獣医学部新設などをめぐり衆参両院で10日、前川喜平前文部科学事務次官を参考人として招致して閉会中審査が行われた。

 衆院の文部科学委員会・内閣委員会の連合審査会で民進党の1番手として福島伸享議員が質問に立ち、(1)森友学園の小学校設置用地の売却に関する経緯(2)加計学園の獣医学部新設に関する経緯(3)国家戦略特区制度と規制改革――について取り上げた。

森友学園問題

 森友学園に大阪府豊中市の国有地を格安で売却した問題をめぐっては、地元の豊中市議らによって森友学園の小学校新設工事の昨年1年間の産業廃棄物管理票(マニフェスト)が情報開示されたことに言及。「新築系混合廃棄物194.2トン。しかも埋設された生活ごみではなく新築に伴って出る廃棄物だ。2万トンもの廃棄物を9メートルまで地下を掘り下げて搬出しなければいけないから8億円かかると言っていたが、2万トンどころか100分の1以下だ。8億円に相当するごみの搬出は行われていないことが明らかになった」と指摘した。

人事異動

 同日の審議では、これまでこの問題について説明をしてきた財務省の佐川前理財局長の出席を求めたにもかかわらず、政府・与党が応じなかったことも福島議員は問題視。2016年4月1日、近畿財務局の管財部統括国有財産管理官から施工業者や関係する弁護士に宛てられたメールから、近畿財務局が当該土地の廃棄物を算定するのに必要な資料を求め、それに対して事業者側から出された資料によってごみの撤去に関する算定の経緯が見て取れるとして、「8億円の値下げのやり取りは4月1日以降に始まっている。『保存期間を1年未満とする行政文書の保存期間の起算日は、行政文書を作成し取得した日の属する年度の翌年度の4月1日とする』と明確に書いてある。今年の3月31日までは去年の4月1日以降に作成された文書は残していなければいけないのに、『捨ててしまったから値下げの根拠の資料はない』と答弁した佐川理財局長は、明確に公文書管理法およびそれに基づく規定に違反の疑いがある、処分すべき人物ではないか」と指摘した。

 佐川前理財局長が7月5日付けで国税庁長官に就任するなど、7月の人事で森友学園や加計学園問題の関係者が相次ぎ辞職、異動となっていることに、「あり得ない。国民に対して疑惑の解明を逃れようとする人事ではないか」と批判。当時の武内近畿財務局長が8億円の値下げに関わったことを示すメールの存在にも触れ、「当事者が答弁しないと分からない問題があまりにも多すぎる。安倍総理や昭恵夫人、佐川前理財局長、武内元近畿財務局長ら関係者出席のもとでの集中審議を求めたい」と述べた。

加計学園問題

 加計学園の獣医学部新設をめぐっては、文部科学省の追加調査で多くの文書の存在が明らかになるなか、「存在しない」とされている16年10月7日の「萩生田副長官ご発言概要」について確認。前川参考人は「私が事務次官在職中に担当課からの説明を受けた際に受け取り、目にした文書に間違いない」と明言する一方、萩生田官房副長官、文部科学省の常盤高等教育局長はともに文書にある発言内容について「記憶にない」と答弁した。

加計学園問題「背景に官邸の動きあった」と前川・前文科事務次官

「背景に官邸の動きあった」と前川・前事務次官

 福島議員は、官邸、総理がどのように関わっていたと認識しているかを前川参考人に質問。前川参考人は、「文科省としては既存あるいは新しい分野を含めて獣医師の需給の見通しを立てる上では農林水産省や必要に応じて厚生労働省の参画が必要であり、萩生田官房副長官に関係省庁の参画をお願いしたい、そのための調整をしていただきたいというスタンスだった。10月21日の日付入りの文書もあるが、結局萩生田副長官が実質的な農水省の参画は得られないまま30(2018)年4月開学に向けて手続きを進めるようにということになっている」「内閣府がこの仕事を進めるに当たり、その背景に官邸の動きがあったと思っている。そのなかでも直接指示を受けた和泉総理補佐官がさまざまな動きをされているのは明らかだと思っている」と述べた。

萩生田副長官のご発言概要

 福島議員は、10月21日付の「萩生田副長官のご発言概要」とする文書をもとに、獣医学部新設が認められる前に文科省と加計学園が設置認可の相談をするよう指示、官邸側が獣医学部新設に関し加計学園側に具体的なアドバイスを行っていることが明らかだと指摘。総理のご意向として2018年4月開学が大前提とされていることもあわせて、「試験を受ける前に答えを受験者に教えているようなものだ。だから不公正だといわれる」「国家戦略特区が岩盤規制の突破ではなく、新たな参入規制をつくっている。来年の4月までに建設を行い、教授を招くとなればフライングしている人しかできない。1時間の試験に3時間分の問題を出しているようなもの。しかもその試験の中身は萩生田官房長官や和泉総理補佐官が模範解答を教えている」と非難した。

国家戦略特区と構造改革特区の比較

 福島議員は官僚時代に構造改革特区制度を作った立場から、「岩盤規制を突破するなら構造改革特区で十分だ。国家戦略特区は政府が政令で指定したところでしかできないもので参入障壁そのものだ。岩盤規制を新たにつくる仕組みが国家戦略特区という制度だ」と断じた。

 報道各社の世論調査でもこの問題について安倍総理の説明責任を求める声が7割を超えていると述べ、「われわれは憲法の規定に基づき臨時国会の開会を求めている。開会は政府に裁量がなく義務がある」と速やかに臨時国会、予算委員会で集中審議を開き、総理自ら説明するよう強く求めた。

PDF「福島伸享議員配布資料」福島伸享議員配布資料