党加計学園疑惑調査チーム(共同座長=桜井充参院議員、今井雅人衆院議員)は20日午後、国会内で会合を開催。国家戦略特区での獣医学部の新設をめぐり、正式に加計学園が学部開設の事業者に決まる約2カ月前に、山本地方創生担当大臣が日本獣医師会幹部らに対し、同学園の具体名や自治体の負担額に言及し獣医学部の新設方針を伝えていたとする一部報道を受け、これら事実関係をただした。

2016年11月17日山本幸三内閣府特命担当大臣との意見交換の概要

2016年11月17日山本幸三内閣府特命担当大臣との意見交換の概要


 調査チームでは、報道にある、昨年11月17日に山本大臣が獣医師会を訪れた際の意見交換に関する獣医師会の議事記録を入手。記録によると、山本大臣は「誠に申し訳ないが、獣医学部を新設することになった。財政的に大丈夫か、待ったをかけていたが、今治市が土地で36億円のほか積立金から50億円、愛媛県が25億円を負担し、残りは加計学園の負担となった。四国は感染症に係る水際対策ができていなかったので新設することになった」と発言している。

 内閣府の担当者は、山本大臣の17日の獣医師会訪問は、獣医学部新設を決め、翌18日から国民から広く意見を募るパブリックコメントを実施することを伝えるのが主な目的だったと説明。議事録にある大臣の発言については、「獣医師会側の受け止めをまとめたもので、だいぶ(獣医師会側の)思いが入ったもの」「大臣は当時、『京都もありうる』とはっきり発言したことは記憶している。『加計学園』についても、特に言わないように気を付けていたということであり、正確ではない」などと釈明した。

 一方で、その発言を裏付ける内閣府側のメモや議事録は残っていないと述べたため、官僚出身の議員などを中心に出席議員は、意見交換の内容を事務方と共有することないまま秘書官がメモを破棄することはあり得ないと指摘。山本大臣が行った今朝のぶら下がりで記者団の質問に対し、自身の秘書官がとったメモ書きのようなものの存在を明かしていることにも触れ、21日午前に開催予定の同チームの会合にそのメモ書きを提出するよう求めた。

 山本大臣が候補地を今治市に決める以前のこの段階で同市の負担額等に言及したことについて内閣府は、同市の財政状況に対し懸念を示していた、(11月17日の意見交換にも出席していた)元衆院議員の北村直人政治連盟委員長の要請に対する回答だと説明。出席議員らは、愛媛県と今治市がどういう根拠でこうした額を算出したのか、あわせて11月17日時点で県議会や市議会にこうした案を提出していたのか、および現段階で通っているのかをあらためて確認するよう求めた。

 会議では、山本大臣が「四国は感染症に係る水際対策ができていなかった」と述べていることも問題視。そうした実態が実際に過去にあったのかを確認すると、農林水産省は「法律に基づきやるべきことはやっている」と発言、山本大臣の発言の信ぴょう性が問われることとなった。

 関連して出席議員は、過去に口蹄疫が発生した宮崎県の大学には獣医学部があることにも触れ、「大学の有無は水際対策には関係ない」「水際対策は、国境は国がやり、県内の防疫対策は県がやるもの。大学は義務を負っていない」などと指摘。「大学ができたといっても口蹄疫や鳥インフルエンザは発生する」と述べるとともに、過去の感染症に対し大学がどの程度貢献したかを報告するよう求めた。

 山本大臣が「私のリーダーシップで決めた」とする、昨年12月22日の内閣府、文部科学省、農水省の3大臣が1校に限り獣医学部新設を認めるという合意文書についても、その作成経緯が不明だと指摘。文科省、農水省はそれぞれ「12月6日に事務的な打診があり、7日に山本大臣と松野文科大臣の間で相談があり、その後事務的な協議の末に12月22日に3大臣の合意文書について内閣府の事務方から案が来て、文科省内で大臣の了解を取り、同日内閣府に回答した」「12月7日に事務的に打診があり、22日に内閣府から案が示され大臣に確認していただき、異議がないないということで対応させていただいた」などと回答した。

 こうした一連の質疑を通じて、今回の獣医学部新設が「加計学園ありき」で進められていた疑いはさらに濃厚になった。

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