衆院予算委員会で24日、安倍内閣の基本姿勢(国家戦略特区等)に関する集中審議が行われ、民進党の1番手として大串博志議員が質問に立ち(1)国家戦略特区による加計学園の獣医学部新設問題の経緯(2)南スーダンPKO日報破棄問題――等に関して、安倍総理や、参考人の和泉総理補佐官、前川・前文部科学事務次官らにただした。

 大串議員は加計学園問題に関して10日に行われた衆院文部科学委員会と内閣委員会の連合審査会で、前川参考人が「行政がゆがめられた」「背後には官邸の存在があった」と指摘し、和泉総理補佐官から「総理は自分の口からは言えないから自分が言う」として加計学園の獣医学部新設について文部科学省の対応を早く進めるようにという話があったと説明したことについて事実関係を確認した。

 前川参考人は、昨年9月から10月にかけて和泉補佐官のもとを数回訪れたとして、その日時や対応状況等を次のように説明した。

  1. 最初に和泉総理補佐官から呼び出しを受けたのは昨年9月9日で15時頃に官邸総理補佐官執務室を訪問。国家戦略特区の獣医学部新設について文部科学省の手続きを早く進めるよう話があり、今治の加計学園のことと承知した。和泉補佐官から「このことは総理が自分の口からは言えないので、自分が代わって言う」という話があり、その日のうちに担当課の高等教育専門教育課に事実関係を伝えたが、文部科学大臣の意思決定に影響を与えることは好ましくないと思い、大臣には報告していない。
  2. 9月26日に文部科学省の高等教育専門教育課の担当者が内閣府に呼び出され、「平成30(2018)年4月開学を大前提として最短スケジュールをつくれ、これは官邸の最高レベルが言っていることである」との申し渡しを受け、9月29日14時頃、自身から和泉補佐官にアポイントをとって訪問。内閣府からの申し渡しに関して前川参考人が説明を受けたのは28日で、文部大臣は「なぜ平成30年4月でなければならないのか、党の手続きにかけなくていいのか」と懸念していたと承知していたので、そうした点を踏まえたうえで、29日の訪問時に和泉補佐官には、「獣医学部の件はなかなか難しい。引き続き検討する」等を伝えた。
  3. 10月17日に呼び出しを受けて、16時前後に官邸4階の和泉補佐官執務室を訪問。和泉補佐官からは国家戦略特区での獣医学部新設の件を早く進めてほしいとの話があったが、引き続き検討中であると答えた。

 10月17日のやりとりに関して前川参考人は、「この時点でも文部科学省ははっきりとした方針は立てていなかった。この時点でも表向きには加計学園とは決まっていたわけではないが、暗黙の共通理解として加計学園のことであるということは文部科学省も内閣府も承知していた」と述べたうえで、今治市からの具体的な提案が9月21日の今治市分科会でも示されていたが、(1)本当に国際水準といえるのか(2)国家戦略特区が求めているような国際競争力の強化や国際拠点の形成に資するのか(3)「石破4条件」を満たしているのか(5)従来の獣医師行政にはない構想が具体化していると言えるのか(4)ライフサイエンスなど新しい分野での具体的な需要があると言えるのか(5)既存の大学・学部では対応が困難と言えるのか――といった点について、文部科学省としては確信が持てない状態であり、強力なライバルである京都産業大学が具体的な構想をもっていることも承知していたので、なかなか結論を出せないという状況で、「引き続き検討中であるという以上の答えはできなかった」と説明した。

 前川参考人は8月26日の15時頃に文部科学省の事務次官室で木曽内閣官房参与の訪問を受けたことにも言及し、「『今治の獣医学部新設の件を文部科学省として早く進めてほしい』という話があり、内閣官房参与ではあるが、加計学園の理事であるので(理事として)加計学園の獣医学部を早く作ってほしいという趣旨だと受け止めた」「国家戦略特区諮問会議が決めたのだからそれに従うという形をとれば文部科学省の責任問題にはならないという、進め方についても示唆があった。(この話からは)木曽理事は事前に内閣官房ないしは内閣府との間で進め方についてのご相談をしてきていると思った」と述べた。

 前川参考人の一連の説明を受け大串議員は「事実関係に相違がないか」と和泉総理補佐官に質問した。和泉総理補佐官は「どんな具体的なやり取りをしたかは正直言って(記録が)残っていないが、参考人として出席するにあたり当時のことを思い返してみた」と述べたうえで、「総理が自分の口で言えないから代わって私が言うといった表現は、仮にそういうことを表現していれば記憶があるが、まったく記憶がない。従って言っていない」「記録に残っていないので私の記憶に従って答えるしかないが、言わなかったと思う」などと答えた。

 大串議員は前川参考人と和泉補佐官の両者の言い分に食い違いがあることを踏まえて、発言に嘘があれば偽証罪に問われる証人喚問に応じるかを和泉補佐官にただした。和泉補佐官は「国会が開催を決めれば決定に従う」と発言。大串議員は、今回の閉会中審査での集中審議が安倍総理が了承したことにより自民党国対の判断をくつがえす形で開会に至ったことを踏まえ、証人喚問の実施に同意するよう安倍総理に求めたが、安倍総理は「国会の運営であるから国会が決めるべき」などと同意することを避けた。

安倍総理と加計理事長との接触記録

安倍総理と加計理事長との接触記録


PDF「安倍総理と加計理事長との接触記録」安倍総理と加計理事長との接触記録


 大串議員はまた、安倍総理と加計理事長との接触記録(上表およびPDFダウンロード参照)を示し、2016年に7回、加計学園の加計孝太郎理事長と食事やゴルフをし、加計学園問題が大きく動いたと見られる同年8~9月の接触は6回に及んでいることから、これらの機会に獣医学部新設を申請していることが話題に上ったか安倍総理に確認した。安倍総理は「一度もなかった」と述べ、同学園の獣医学部新設の申請については「申請が正式に認められた(1月20日の)国家戦略特区諮問会議で知った」と言い放った。

PDF「衆院予算委大串博志議員配布資料」衆院予算委大串博志議員配布資料