東日本大震災以降、日本の省エネルギー政策は急速に進んでいる。
民進党が進めるエネルギー政策の検討状況と併せて報告する。

2011年の東日本大震災以降のエネルギー事情

 日本の最終エネルギー消費は、10年から15年までに1925PJ(ペタジュール)、およそ13%減少しました。12年に策定された「革新的エネルギー・環境戦略」の2030年目標(2563PJ)の75%を5年間で達成したことになります(図1)。同様に発電電力量については、10年から15年までに1279億kWh(キロワット時)減少しました。革新的エネルギー・環境戦略の30年目標(1100億kWh)を既に達成しており(図2)、東日本大震災以降、急速に省エネルギーが進んでいます。

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省エネルギー

 この間の製造業のエネルギー消費原単位の推移を見ると、11年から14年まで6・5%(年1・6%)の改善にとどまっています。オイルショック時に年3・5%の改善が行われていることと比べると、改善が緩やかです(図3)。15年を超える設備が全体の44%を占めるなど、生産設備の老朽化も進んでいます。従って、この間の省エネはいわば「ガマン」の省エネが中心であったと評価できます。もちろん、こまめに照明を消すことも、夏の室内温度を高めに設定するのも省エネではありますが、今後は、省エネ機器を導入し、情報通信技術(ICT)を活用するなどにより快適性を損なわない省エネを進める必要があります。そのためには、大企業の省エネ競争を促進し、中小企業の省エネ機器導入の支援を拡大する必要があります(後述)。

 省エネが経済成長を阻害するとの指摘がありますが、ドイツは既にエネルギー消費と経済成長のデカップリングを実現しています。例えば、06年から13年までに建物の省エネに111億ユーロの助成金を支出し、これにより民間投資が1650億ユーロ増加し、30~34万人の雇用を創出しています。また、税収も200億ユーロ以上増加し、政府としても助成金の額を上回る回収ができたことになります。省エネは経済成長を阻害するどころか成長のエンジンとなっています。

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再生可能エネルギー

 民主党政権で固定価格買い取り制度が導入され、再生可能エネルギーの導入が大幅に拡大しています。再生可能エネルギーの定義はさまざまですが、太陽光発電、風力発電、水力発電、地熱発電、バイオマス発電※が買い取り対象とされています。10年から15年にかけて再生可能エネルギーによる発電は295億kWh(30%)も増加しています(図4)。ただし、革新的エネルギー・環境戦略での30年の導入目標は3千億kWhであり、導入をさらに進めなければなりません。一方で、買い取り対象となっていない太陽熱、地中熱、河川熱などの再生可能熱利用はほとんど進んでいません。ドイツではバイオマスは発電と熱供給の両方を行う場合に限り、固定価格買い取り制度の対象としています。また、オランダでは地中熱に関する法整備を行い、利用が拡大しています。日本でも再生可能熱利用をさらに進めなければなりません。

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電気料金

 一方、電気料金は大幅に値上がりしました。一般電気事業者の電気料金は10年から15年までに家庭用は19%、事業者用は29%上昇しました(図5)。15年までの上昇の主な原因は、円安と燃料価格の上昇でした。現在、燃料価格は落ち着いていますが、当面は化石燃料中心の電源構成を続けることとなるため、液化天然ガス(LNG)などの化石燃料をいかに安価で安定的に調達するかが大きな課題です。

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民進党の検討状況

 このような状況を踏まえ、民進党では、本年3月7日に「民進党のエネルギー政策(当面の論点メモ)」を取りまとめました。エネルギーミックスについては従来の考え方を踏襲し、優先順位を①徹底した省エネ②再エネの最大限導入③①および②を決定した上で火力・原発比率を考える―とし、省エネ目標の上積みを行うこととしました。また、グリーン成長を成長戦略・景気対策の柱とすることとしました。原発については、さまざまな課題を検討した上で、原発ゼロ目標を実現するための基本的施策を示す「原発ゼロ基本法案(仮称)」を国会に提出することとしました。

 現在、エネルギー環境調査会で、①再処理・最終処分②化石燃料・電力料金③省エネ・再エネ④立地地域・自治体振興・関連産業支援―等を中心に議論を進めています。

※植物や家畜の排泄物などの動植物由来の有機物をエネルギー源として利用する発電。

(民進プレス改題28号 2017年8月18日号3面より)

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