これまでの変遷と第4次産業革命が創る未来

 第4次産業革命では日本の技術が世界の産業構造の変革にどう関与し、どんな変化をもたらすのか。その可能性と課題について見ていく。

 過去の産業革命は、私たちの生活に多大な影響を与えてきました。各国で産業革命の定義に違いはあるものの、一般的には「蒸気機関・水力」の発明による工場の機械化(第1次産業革命)に始まり、「電気・エネルギー」の発明に支えられた大量生産の実現(第2次産業革命)、そして、「コンピューター・IT」を活用した生産の自動化(第3次産業革命)などを指します(図1)。

 そして今、世界は第4次産業革命の真っただなかにあると言われています。この第4次産業革命では、これまで実現不可能と思われていた便利で豊かな社会の実現に向け、IoT(Internet of Things※1)、ビッグデータ(※2)、ロボット、人工知能(AI Artificial Intelligence)などが注目を集めています。こうした基盤技術やデータが鍵となり、それらが組み合わせられることによって、新たなサービスが次々と誕生し始めています(図2)。第4次産業革命は、経済的な好影響はもとより、私たちの生活や暮らし、働き方をスマートに変えていく可能性を秘めているのです。

新たなテクノロジーで変わる生活

 スマートな社会や暮らしを実現していく1つ目の鍵が、IoTやビッグデータの活用です。携帯電話やコンピューターなどの一般的な通信機器に限らず、家電をはじめ、さまざまなモノがインターネットにつながることによって、離れたところにあっても自由なやりとりが可能になってきています。さらには、交通、気象、個人の購買状況などはデータ化され、人々の行動パターンがリアルタイムに解析されることによって、新産業の創出が促進されるとともに、犯罪抑止、渋滞解消、省エネルギーなどの社会的・環境的・経済的な課題の解決につながっていくことも期待されています。

 2つ目の鍵が、人工知能(AI)とロボットです。人間が機械にすべての指示を出さなくとも、AIを持った機械が自ら学習し、すでに人を超える高度な判断ができるようになりつつあります。さらには、ロボット技術が進化するにつれて、より多様で複雑な作業の自動化が進みつつあるのが現状です。これまでは大量生産・画一的なサービスが当たり前でしたが、個々のニーズに合ったサービスを提供できる環境が整いつつあることを意味しています。資源・資産の有効活用が進むとともに、従来は人が行っていた労働をロボットなどが補助、代替することが可能になります。

 具体的な事例としては、自動運転技術の発展、家電のIoT化の推進、物流におけるドローンの活用、介護・医療現場でのロボットの導入などをはじめ、シェアリングエコノミー(※3)、フィンテック(※4)などの取り組みが国内外ですでに始まっています。

 こうした動きは、経済に与える影響も絶大です。日本のみならず、全世界ベースでのIoTが付加する経済価値(売上増加効果やコスト削減効果の総和)が2013年から22年の累計で15・7兆ドルに上るという試算もあり、特に「公共サービス」で4・6兆ドル、「ものづくり革新」で3・9兆ドル、「流通・小売・物流」で2・3兆ドルと大きい(図3)ことを踏まえると、わが国においても、特にそうした分野でIoTを活用し、生産性革命を推進することが重要な課題であると考えられます。

図2

スマートな暮らし、雇用を守り、安全性を最優先に

 一方で、第4次産業革命を取り巻くさまざまな不安があることも事実です。AIやロボット等の出現により、新たな産業が創出され新しい仕事が生まれることや、人材不足の解消につながる反面、新しい技術に代替される仕事が増えていくことは容易に想像できます。職場での「人」の役割が大きく変わることも想定されるため、就業構造の転換に対応した人材育成が必要になっていきます。

 その上で、新しい技術がもたらす安全性や倫理面でのリスクについても十分に検証し、ルールのあり方を見直していくことも重要な課題です。民進党は、こうした技術革新がわが国にもたらす変革について検討し、産業構造の変化に政策的にすばやく対応すべく活動を行っています。今後も、第4次産業革命がもたらす光と影について理解を深めながら、政策的な課題の検討を進めていきます。

図3


用語解説
● (※1) IoT
さまざまな物がインターネットに接続され、相互に情報交換することが可能になることの総称。
● (※2) ビッグデータ
大容量のデジタルデータのこと。非定型でリアルタイム性が高く、データに含まれる文字、音声、写真、動画などを解析することによって、社会的な課題の解決につながるとされている。
● (※3) シェアリングエコノミー
インターネットを通じて個人の所有物、時間、能力を必要な人に提供すること。例=Airbnbなどの民泊サービス、カーシェアリングなど。
● (※4) フィンテック
ITを活用した革新的な金融サービスのこと。例=お財布ケータイ、仮想通貨など。

(民進プレス改題29号 2017年9月15日号3面より)

民進プレス電子版のお知らせ: