29日に開かれた参院予算委員会の総括質疑で、民進党・新緑風会の1番手として質問に立った大塚耕平代表は(1)北朝鮮への対応(2)森友・加計学園問題(3)国民生活は本当に豊かになっているか(4)税制改正――等について、安倍総理らと議論を交わした。

 大塚代表は冒頭、同日午前3時18分ごろ北朝鮮が弾道ミサイルを日本海に向けて発射し、日本の排他的経済水域に落下した事態を受け、民進党として厳重に抗議する談話を発表した旨を報告。弾道ミサイルの詳細に関して小野寺防衛大臣にただした。小野寺大臣は「詳細は分析中」としたうえで、最高高度は4千キロをはるかに超えていて、かなりの能力があり、多段式の弾道ミサイルであったことも踏まえ分析している」旨を語った。大塚代表はまた、中国共産党の習近平総書記の特使として宋濤・党対外連絡部長が訪朝した効果やロシアのプーチン大統領の対応等について安倍総理や河野外務大臣に認識をただした。そのうえで、「中国やロシアの協力がなければ(北朝鮮への)きちんとした対応ができない。プーチン大統領は9月には北朝鮮への制裁は効果がなくて無意味だと片方では言っている。米国が北朝鮮をテロ支援国家に再指定したのは中国を含む関係団体13に何らかの貿易規制をかけるため」だと大塚代表は述べ、「残念ながら国際社会は自国の利益を犠牲にして他国の利益を守る国はないというのが現状、同盟国でも国家として当たり前の姿かもしれない。いわんや中国・ロシアがそういう姿勢でいるかを深く分析しないと対北朝鮮対応について誤る可能性がある」と、政府の分析に基づく対応の必要性を指摘した。

 加計学園問題については、獣医学部創設に当たり拠出される補助金は今治市と愛媛県で計96億円であることを野田総務大臣の答弁で確認したうえで「そのほかに土地の無償譲渡の37億円もある」と指摘。また、96億円の積算根拠について野田大臣は「校舎建設費等の2分の1を補助するもの」と答弁した。そうなると校舎建設費は2倍の192億円になるが、補助金の申請書類によれば(1)施設は基準内と基準外とがあるが基準外も補助している(2)獣医学部開設後の2018年度の費用も入っている――等の点を疑問視し、税の支出として妥当かどうか調査の徹底を求めた。

 森友学園問題に関しては、会計検査院から参院に提出された報告書に、「地下埋設物の撤去・処分費用の算定に当たり、十分な根拠が確認できない」旨が書かれていることを踏まえ、安倍総理に「再検証の約束をしてほしい」と求め、「会計検査委員の指摘を受け、財務省としても重く受け止めると答弁している。重く受け止めるということは、指摘も踏まえしっかりと検討していくべきだと考えている」旨を答弁した。

安倍総理らと議論する大塚代表

安倍総理らと議論する大塚代表

 大塚代表は最新鋭ステルス戦闘機F35Aの調達に関する会計検査院報告書で、「F35Aの調達にかかるFMS(有償軍事援助)調達について、価格の上昇要因を定量的に把握できていない、一部の防衛装備品等について提供が行われていない、国内企業の下請け製造参画への実施計画の整合性がとれていない、部品の製造計画が締結されていない」点等を問題視し改善を求めていることを取り上げ、「相当ずさんな取引状況になっている」と指摘した。

 小野寺防衛大臣はFMSに関して「米国が米国の国内法に基づき同盟諸国および友好諸国等に対して装備品等を有償で提供する制度で、日本をはじめとする購入国は米国政府の定めを受諾して初めて必要な装備品等の提供を受けられるようになっている。米国政府は自国の国益により契約を解除する権利を留保、所有権は原則として最初の出荷地点、米国内で購入国に移転することになっている。機密性の高い装備品、及びそれに関連する技術支援、米軍による自衛隊の訓練支援等が大半を占めている」と説明。安倍総理は「確かに売り手側が非常に有利ではないかという見方もできるが、わが国の安全を守るためには必要との観点からのFMS契約となっている。さまざまな点でご指摘もあったが、ハイレベルでの働き方を含め改善を進めている」とした。大塚代表は「わが国の安全保障環境が厳しくなっている。防衛力を強化しなければならないということはわかる。しかし、そのことと、このFMSで安倍総理になってから巨額の調達をしていることについて合理的に因果関係があるかどうかが問題だ」と指摘した。

 経済政策では、平均的な国民が安倍政権下で所得増加を実感しているかただしたのに対し、茂木経済産業大臣は総雇用者所得を取り上げ、「第2次安倍政権発足時の2012年の名目総雇用者所得は99.2、実質総雇用者所得は99.7だったが直近の16年は名目が104.2、実質が101.3と増加した。また1人当たりの実質賃金は16年に前年比でプラスに転じて、おおむね横ばいで推移している」と答弁。安倍総理は「2017年度の内閣府の調査で、現時点の生活に満足と回答した割合は73.9%で過去最高。ただ(所得増加の)実感がないという人が多いことも承知している」などと語った。

 大塚代表は「雇用者数が増加すれば総雇用者所得も増えるに決まっている」と指摘し、1人当たりの現金給与総額は安倍政権発足後増加したかを確認。茂木大臣は「1人当たりの実質賃金は2012年から15年まで低下したが、景気回復が継続して雇用環境の改善が続くなかでパートの比率の上昇も緩やかになり、16年に前年比でプラスに転じた」と答弁したが、大塚代表は「安倍政権が誕生した2012年の11月の現金給与総額は27万5246円、直近の今年9月は26万7248円で、7998円減っている」と指摘。「株価が上がって、円高が修正されたことは評価するが、国民の皆さんの現金給与総額は減っている」のが実態だと述べた。茂木大臣は「雇用者の数が増えている、そこのなかで当然パートの方も増えている。こういう母数の割り算であると全体的に(現金給与総額が)下がる傾向もあると思うが、ご指摘の点も含めて今後検討する」などとした。

 大塚代表は「パートが増えているから現金給与総額が上がらないということであれば、正社員が増えるようにしていくべきだし、現金給与総額の中身を正規社員とパートに分けて数字を見ることができるように統計を整備する必要がある」と問題提起。茂木大臣もこれを認め、検討する意向を示した。大塚代表はまた、「生活実感が良くなっていない点や、雇用者所得に関する話をすると、パートや高齢者が増えたことを理由に、統計はこうだが実態は違うという答弁だったが、データとしてそれを検証できる仕組みを作らないと経済政策を間違う」と述べ、データの整備を要請。安倍総理は「確かにさまざまな分析を注意深く行っていかなければならないと思う」と応じた。